田中宇のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「タリバン」というタイトルから何かいつもの様な得体の知れない恐怖や危険を感じてしまうが、内容はアフガニスタンとそれを取り巻く米ソおよびパキスタン間の情勢に関するものだ。ご存知の通り米ソ冷戦時代にはソ連からの干渉を受けたアフガニスタンと、それを防共目的で支援したアメリカ。アメリカはベトナム戦争後の国民感情があるため、容易にアフガニスタンへの派兵ができず、パキスタンを通じてアフガンゲリラを武器の供与などで支援する構図となった。その後は言うまでも無くアフガニスタンに混乱を招き、アメリカ支援を受けた組織の中からビンラディンがいよいよ西欧の脅威となって台頭していく流れだ。この自分自身の敵を育てるアメリカのやり方が、イスラム世界の住人から見れば非常に滑稽に見えるし、現にそう考えるのが正しい。なぜこの様な複雑な背景になるかといえば、アメリカやソ連だけで無くパキスタンなどの大国・周辺国の利害関係が複雑に絡み合う地理的な要素であると考えられる。ソ連(ロシア)からすれば旧ソ連邦諸国であるアジアを通過してアラビア海・インド洋への出口となるし、それを防ぎたいのがアメリカ。さらにパキスタンはインドの脅威に常に晒されつつ、北からの圧力には耐えられないから、北方面での混乱は却って都合が良い。パキスタンに至っては、混乱したアフガニスタンからの難民(実質的にはただの労働移民)による労働力や武器・麻薬の密売は国家経済を支える重要な要素となっている。よって経済的にも地政学的にも重要な位置にあるアフガニスタンが、文明の十字路として平定されない理由はそこにある。
時を逸せずスーダンから亡命してくるビンラディンをタリバン側が受け容れ、同氏の強力なカリスマ性が組織内に浸透していくには時間を要さない。ビンラディンの厳格なイスラム主義は古い体制の農村部にも受け容れ易い考え方だし、本来的にはイスラム世界は平和で人々が支え合う社会であるから、混乱したアフガニスタンが支持するのは必然の流れだ。
2001年9月11日の同時多発テロは無辜の市民を聖戦に巻き込んだ非難の対象としては明らかだが、要因を作ったのはアメリカそのものであり、その攻撃対象を作ったのもアメリカ自身であると考えれば、何かもっと大きなアメリカの描くグローバリズムのシナリオがあるのではないかと感じる。
アメリカの繁栄を非難するわけでもないし、彼らが世界に与える平和的な要素や人道支援的立場も評価されて当然だとは思うが、世界の動きを掌の上で思い通りに動かす力も彼らは持っている。
イスラエルとの関係を見ていても明らかだが、手綱を緩めたりムチで強く尻を叩いたりと、目的地へ向かうための腕の使い方、それ自体に世界が翻弄されているという言い方がしっくりくる。
その煽りを受けたアフガニスタンは、その地理的重要度の高い位置にあると言う理由で、混乱して平穏なき日常が延々に続く羽目になっている。
ただ一方で弱い側の立場にある人々が徐々にその生活や経済に依存していく一面もあり、中々双方がその状況を打開し辛い状況になり、問題は更に複雑化する。
そして積年の恨みを果たせとばかりにイスラム教の様々な勢力がこの地を聖戦の足がかりとして強大化していく。宗教・経済・社会問題が二重三重にも複雑な多層構造で成り立つこの地域に真の平和が訪れるのはいつになるだろう。 -
Posted by ブクログ
ニーマンフェローシッププログラム、という世界中のジャーナリストに限定した10ヶ月間のハーバード大学留学を経験した妻と、それに同行して、あらゆる国際関係のゼミやセミナーなどを受講した国際ニュース解説者の夫。ふたりがハーバード大学での留学期間を経て、感じたことを、ふたりそれぞれの目線から章ごとに変わるがわる書かれている体験記。
夫婦二人の視点が異なることが、むしろハーバード大学での授業や生活が思い描きやすくなって、面白かったと思う。特に、読んでいて感じたのは、ハーバードの財産は、そこでの授業だけでなく、そこに集まる世界トップクラス級の人たちなのではないかと思った。その会話や出来事の片鱗から、アメリカ及び世界中の情勢、微妙な国同士の関係が垣間見えるのがリアルだった。文体も全然違うので、2人の視点で一冊の本を仕上げていくことで、章ごとのトンマナが全然違うのも面白かった。
読んでいるだけで留学して、現地に飛び込みたくなる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
人種もバックグラウンドも違う人々の集う「知の坩堝」の中で、世界はどう語られ、議論されているのか。
日本のネットジャーナリストの草分け的存在田中宇と新聞記者の大門小百合がハーバード大学で見たアメリカの「表の顔」と「裏の本音」。
アメリカは世界をどうしようとしているのか?
本書を通して見えてくる。
[ 目次 ]
ハーバードへ
アメリカの国家神話とハーバード
コースショッピング
知のディズニーランド
ハーバードの民主主義
競争する授業
拍手を受ける授業
ハイフネーションの国
コンピューター記者と報道カメラマン
ハーバードのパワーゲーム
授業で大統領側近になる
アメリカの大学と戦争
留学生と歴史の重み
ケネディ・スクールの国旗騒動
東京に戻って
テロ事件後に考える
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
・内戦の続くアフガニスタンの紛争に歯止めをかける役割をアメリカ・パキスタンに背負わされ期待を受けていたタリバンが、如何にしてイスラム原理主義を標榜するテロ集団としてアメリカに烙印を押されたのか、9・11事変に至るまでの複雑な前史を示してくれている。
・国際情勢についての勉強不足が再認識できたが、それ以上に日本のメディア視点から得られていた断片的で表面的な知識からさらに踏み込んだアフガニスタンの歴史、内情を知れた。その意味合いでは、厳然として起きている事実を脚色無しにルポルタージュしている本書はどちらの立場にも偏重しすぎることなく書かれていてとても読みよいものであった。
・グローバリゼーションの名の下、一局支配を試み紛争地域への内政干渉までおこなうアメリカの覇権主義の生み出した結果の一つとして、その終着点を9・11以後に求めてもよい結末へと導かれないと感じた。次は、パレスチナ、セルビア・モンテネグロについても同様の視点から眺めてみると共にアメリカ視点から描かれた9・11についても学ぼうと思う。
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Posted by ブクログ
2001.9.11以来、この手の本を読むようになり、アメリカの本質に触れるにつけ失望感が増す。
正義の仮面をかぶった独裁者。民主主義と謳いながら実は帝国主義。
田中氏が中東で会った若い外交官の意見は興味深い。
湾岸戦争でフセインの息の根を止めなかったのはイラクを第二の日本にしたくなかったからだという。
つまりフセインなき後のイラクの建て直しにGHQが入り、もともと教育熱心なイラク国民が立ち直って
日本のような経済大国になってもらいたくなかったから、フセインを残し経済制裁で国を弱らせ
知識人が国外に出るようしむけた、というのだ。
今回の戦争の目的はずばり石油だ。
もっともらしい理由をつけても結局は利権目的。
イスラエルを支援してパレスチナをいじめるのも、アラブが統一して力を持たないようにするためだ。
まったく、国連を無視して自分たちが世界を動かせると思ってるんだからオゴリもいいところでしょう。
アメリカの帝国化は経済的な弱体をあらわしているらしい。
アメリカが衰退していくとすると対米従属であるのはたいへん危険である。
アメリカに対する充分な分析が必要だ、としめくくっている。