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新名 美次
1943年北海道札幌市生まれ。札幌西高等学校で川上力先生に英語を学び、強い影響を受ける。北海道大学理学部進学後、同大学医学部編入、卒業。神奈川県座間米陸軍病院でインターンの後、1969年渡米。ニューヨーク医科大学で眼科専門の研修を受け、1974年ニューヨーク市内で眼科医院を開
...続きを読む業、現在に至る。白内障、緑内障、角膜移植の手術を得意とし、米国外からの患者も多い。趣味は、言語学習のほか、スキー、テニス、スキューバダイビング、旅行等。
50ヶ国語を把握してる人が各言語の比較分類をしたりしてるんだけど、言語ってその国の文化がはっきり表れるものなんだね。この国とこの国の言語は似てるとか。ロシア語出来る人は、ポーランド、チェコ、ブルガリア語は出来るとか。
私は人生の二十数年を日本で過ごし,現在はニューヨークで眼科医として開業しており,決して,外国語のスペシャリストを生業にはしていない。ただ,私は,子供の頃から外国に興味があり,英語をはじめとした外国語を話せることに憧れ,努力し続けてきたに過ぎない。
しかし,私の学生時代の学習法を社会人にお勧めすることはできない。なぜなら,非効率的で,時間がかかり過ぎる。ただ,中学・高校生の人達なら私のやってきた英語の学習法をまねれば必ず,英語が得意科目になるだろうし,頑張れば他の外国語のマスターも不可能ではないだろう。
中学時代の学習は,英語の文法と基礎の構文の徹底理解に努めた。大人の中には中学の英文法などとバカにする人がよくいるが,この中学時代に教わる基礎をけっしてバカにできない。現在,アメリカ人の秘書と仕事をするようになって,意外にも彼女たちが簡単な文法の間違いをすることに驚いている。 またアメリカ,イギリスに長年住んでいれば自然に英語が上手になるというのもうそで,基礎ができていない人,学ぶ気のない人は何十年そこに住んでいてもあまり上手にならないものです。
私は,自分の得意科目の英語と数学を生かせる東京外国語大学の英米科と北海道大学の理類という,両極端の大学を選んで受験してしまった。結果は,第一志望の東京外国語大学は二次試験の幾何を失敗し,滑り止めに受けていた北大の理類に入学します。
私は大学時代にできるだけアメリカについての知識をつけたかったので,医学に関係のない法律や経済,歴史書なども手当たりしだいに読みあさり,旺盛な知識欲を満たすことで,自分なりの有意義な学生生活を送ったと思う。
私は,基本的に英語で考え,英語で生活しているため,英語系のアルファベットを使う外国語は話しやすくなってきている。多くの西洋言語や英語の形態は,話し始めからすでに YES の意見か NO の意見かがわかり,答えも YES か NO かのいずれかを求められる。 しかし,日本語の場合,最後まで話を聞かないと YES か NO かがわからないし,あいまいな言い回しが多いように思う。アメリカに永く住んでいると,この日本的なあいまいな言い回しに鈍感になって「いったい,この人は何を言いたいのだろう?」と,相手の話の主旨が時々,わからなくなってしまう。 英語や西洋の言葉にはあいまいな表現はほとんどない。それは西洋社会自体が,あいまいな答えを必要としていないからだろう。それぞれ異なる文化を持った多種民族で構成されている西洋人たちの考え方はさまざまで,1つのことを討論してゆけば膨大な時間を消費することになる。彼らにとって YES と NO の答えは明確で,あいまいな表現では誤解を起こし,かえって共通の接点をなかなか見つけることができなくなっています。
さらに,外国語が理解できるようになってきたら,あなたは今まで気づかなかった日本語の文法的な問題や日本の言葉が持つ意味の深さ,美しさに感動するだろう。
ノーベル賞を2度も受賞したキュリー夫人の数々のエピソードの中に,彼女の天才的な集中力が語られている。 キュリー夫人が学生時代の話である。悪友がいたずら心を起こし,一心不乱に本を読んでいた彼女のまわりに椅子を山積みにして,それを一度に崩して脅かそうとした。突然,ものすごい音がして椅子の山が崩れたが,彼女は平然と本を読んでいる。反対に驚いた友達が彼女の肩を揺さぶった。そこで,初めて何が起きたのかがわかった彼女は「本に夢中で,音さえ耳に入らなかった」と答えたと言います。
音楽の好きな人なら,お気に入りの歌手の歌う歌詞を覚えればよい。歌にはメロディがあり,歌詞のフレーズは簡潔で分かりやすく,歌を口ずさむことは,どこにいてもできることだし,なによりもうれしいことはメロディのあるものは忘れにくい。 あなたが,毎日の仕事を苦痛に感じていたら,けっして良い成果は上がらないはずだ。仕事のうまくいっている人は,仕事に何かしらの野心や目標を持ち,業績が上がるでしょう。
ところで,生理学面からいろいろな効率の良いことをお話ししてきたが,記憶力や集中力,持続力などのすべてのパワーの源は体力にあるといえる。だから,毎日,汗が軽く出るくらいの運動は努めてするようにしたい。この程度の運動は,心臓や肺などの臓器機能の働きが良くなり,精神的プレッシャーにも強くなる。一日の生活の中に,軽い運動を取り入れると,気分転換になり,生活にリズムがついてくる。知的活動の疲れは,単に身体を休めるよりもむしろ,軽い運動をしたほうが疲れが取れやすく,リラックスして眠ることもできる。仕事で嫌なことがあった時こそ,一駅手前で電車を降り,ブラブラ散歩でもしながら帰るようにする。酒場で愚痴をこぼすより,よほど気分転換になり,かつ健康的でポジティブな生活態度となります。
また,ヨーロッパは大陸で,共通の歴史や文化を背景に成り立っているので,言語も発生が地理的に近いものほど,その形態はよく似ている。北欧のスウェーデン語とノルウェー語はかなりよく似ているし,ポルトガル語とスペイン語は文法や発音もほとんど同じです。
まず表7-2で,英語がいかにフランス語の影響を受けているかがわかるだろう。単語のつづりもほとんど変わらないので,英語の単語を覚えていたら,その意味はだいたいフランス語にも結びつくものがあります。
スペイン語の発音は日本人には簡単にでき,単語もローマ字のように読めば良いので,2つ目の外国語としてはお勧めです。
最後に,“SLAVIC” (スラブ語)についてお話ししよう。この言語は,ソビエトと東欧諸国の言葉で,同じヨーロッパ大陸に位置しながらも,“ROMANCE”(ロマンス語)や “GERMANIC”(ゲルマン語)と同じように考えることはむずかしい。なぜなら,この言語は英語の成り立ちとは大きくへだたりがあったからだ。文化や宗教,民族的に見ても他の国々とは著しく違う。 もし,あなたがすでにロシア語を習得しているなら,ポーランド語やチェコ語は簡単にマスターできるはずだ。“SLAVIC” の中の言葉ならポーランド語もブルガリア語も容易にマスターできるはずだ。しかし,英語とロシア語の共通点となるとむずかしくなります。
文法ができなければ外国語は話せないと考えているのなら,それは言語というものをわかっていないことになる。極端にいえば,言語は文法から成り立っているわけではない。私たちは日本語と英語の文法はよく知っているが,ロシア語やトルコ語の文法を見てみると,大きく違い,文法の成り立ち自身が論理的でないことに気づくだろう。
また,外国語を勉強することを,よく車の運転に例えることがある。私たちが免許を取る時,ハンドルやギア,ブレーキ,アクセルがどのように動くか,そして,どうすればうまく運転できるかを知りたいと思う。誰も車のメカニズムまで知りたいと思わないだろう。免許を取る時,エンジンの作り方まで聞いた人はいるだろうか? 私たちは,車の専門家でない限り,エンジンはエンジンであり,タイヤはタイヤとして覚えた。車にはなぜ,エンジンがついているのかという質問は,言語になぜ動詞や名詞,形容詞があるのかという質問と同じ意味になる。車も言葉も同じように,うまくなるには練習,練習また練習というわけです。
よく,外国語で夢を見ることができるようになれば,かなり外国語が上達しているといわれるが,あなたはいったいどのくらいたったら外国語で夢を見ることができるようになるだろうか?
そこで,私はノートに単語を書くことよりもカードに書くことをお勧めする。一般に市販されたカード式の単語帳もあるが,これはお勧めできない。なぜなら,既製の単語カードに,あなたの必要とする単語が載っているとは限らない。あなたは,自分が使う言葉,必要とする言葉を覚えなければならない。いくらむずかしい単語を覚えても,使う機会がなかったら役に立たないし,たちまちのうちに忘れてしまうだろう。
まず,あなたは文房具店に行って,縦3センチ横9センチくらいの真っ白なカードを買おう。カードの左上端に単語を書き,ぐるりと逆さまにして,同じように左端の上に違う単語を書く。裏面には,それぞれの意味を日本語で書き,その単語のちょっとした使い方や言い回しも書いておく(1枚のカードで2個の単語を覚えられる仕組みだ)。カードがたくさん集まったら,アルファベット順のインデックスボックスに整理しておこう。
外国語は,こういうものなのだ。確実に正確な言葉を使えるまで待っていたら,誰も話すことはできない。誰でも間違いながら,落胆しながら少しずつ進歩してゆくものだ。外国語の勉強をしたくなくなるスランプを乗り越えるために,私がこれからお話しする,いろいろなことにチャレンジしよう。
子供の本やマンガ本は,たくさんのスラングや感情表現などが入っていて,わからない時もあるだろう。しかし,実際に使うことのできる実用会話のフレーズが多く,勉強になる。あなたは,まだ,その外国語についてすべてを理解できないだろうし,わからないことが多すぎるが,別に落胆する必要はない。なぜなら,それはノーマルなことなのです。
⑨外国語の新聞を買おう。 あなたは,まず新聞を読み,見出しに何が書かれているか理解できるよう努力する。そして,あなたが最も興味のあるセクションのページを広げ,たくさん読むようにすると,あなたはその記事の要点を早くつかむことができるようになる。もし,必要なら辞書を使うようにする。何度も出てくる単語は,そのうちに確実にあなたのボキャブラリーとなっていくだろう。
最後に,トーマス・ヤング博士(Dr. Thomas Young:1773-1829)の言葉を紹介しよう。彼は,学習は「自分自身で学ぶこと」だと述べている。自身のやる気と決意で自分自身で学んでいるだけなのだ,と。 ヤング博士は,物理学者,医師,ロゼッタストーンの解読を始めた言語学者であり,エジプト学者,音楽家などでもあった。彼は,1773年,英国サマセットのミルヴァートンにあるクェーカーの家庭に10人兄弟の長男として生まれる。14歳でギリシャ語とラテン語を学んだほか,フランス語,イタリア語,ヘブライ語,ドイツ語,カルデア語,シリア語,サマリア語,アラビア語,ペルシャ語,トルコ語,アムハラ語に精通していたという。 1792年にロンドンで医学を学び,1794年にエジンバラへ移り,1年後にドイツのニーダーザクセン州のゲッティンゲンへ行った。そこで彼は1796年に物理学の博士号を取得し,翌年,ケンブリッジのエマニュエル大学へ入学。同年,彼は叔父のリチャード・ブロックレスビーの遺産を相続したことで経済的に独立することができ,1799年にロンドンのウェルベック通りで医師として開業した。 1801年,ヤングは王立研究所(Royal Institution)での自然哲学(主に物理学)の教授に任命されたが,やがて教授職を辞任。教えることより,研究にもっと時間を注ぎたかったからだという。その後,数多くの理論を発表した。 “Jack of all trades, master of none”(多芸は無芸)は,平均的なレベルで多くのことを上手くやる人(凡人のジャック)を描写するやや軽蔑的な表現だが,どの芸においても抜きん出ることなく,達人にならない場合が往々にしてある。しかしながら,多くの研究分野で抜きん出る珍しい才能のある天才も時にはおり,全ての業界における博学者または達人(polymath or master of all trades)と呼ばれる人がいる。
チェコ語は,すべてのヨーロッパの言語の中でも最も発音に近く表記された言語だ。例えば,以下のチェコ語は,次のような英語の単語の音と同じになる。
スロベニアは人口約200万人で,旧ユーゴスラビアの中で最も豊かな国であり,2004年にEUに加盟した。ハプスブルク帝国時代の影響が色濃く残っており,オーストリアやドイツなどから観光客が数多く訪れている。
私の今の目標は,「眼病のすべてが治せる医者になりたい」というものである。そのためには世界でいちばん進歩したテクニックを使いこなし,応用できるようになること。そして,世界中の医者たちの研究も勉強し,把握するような努力を自分自身に義務づけている。 私にはもっと豊富な手術の経験も必要だし,そのためには細かな手術に必要な反射神経も養わなければならない(眼科の手術には顕微鏡を使うので,目と両手,両足を同時に動かすことができなければならない)。今の私にとって,医学を勉強するための外国語と反射神経を養うスポーツは必要不可欠になってきている。たぶん,私は,生涯,外国語を勉強してゆくだろうし,全人生を医学に捧げてゆくと思う。 そして,このような人生を送ることができたのも,外国語の勉強を通して得たすべてのもののおかげであると思う。外国語の習得は,私に,人生に対するチャレンジの姿勢を教えてくれた。 私には,外国語のマスターは簡単なことだとは,けっして言うことはできない。 しかし,外国語をマスターしたい人は,とにかくやってみること,続けること,楽しむこと。そして,その結果はやり遂げた人のみが感じることのできる,「本当に素晴らしいものだ」ということは断言できます。