「数学や物理学において現れる、すなわち数理の目で見る曲線について」(p.3)、「天文、等時性を持つ時計作り、曲線の周長問題、それに代数学におけるフェルマーの最終定理など」(p.5)を話題に解説したもの。「円から楕円へ」をキーワードにして、数学や物理学の歴史を辿っていくようなストーリー性があるのが面白い。
著者の、数学の面白さを伝えようとする姿勢がひしひしと伝わってきて、いろんな有名な学者の思考過程を解き明かしてくれている。「プトレマイオスの宇宙像を描いた有名な絵」(p.55)や、「フィレンツェのベッキオ宮殿で時を刻むガリレオの設計による単針時計」(p.134)の写真、「ディオファントスの『数論』にあるピタゴラスの定理の例題の直後にフェルマーのコメントが書かれて出版されたもの」(p.197)など、資料や図、絵が多く載っていて、面白い。特に興味深いのは、アリストテレスとプトレマイオス、コペルニクスの3人の賢者が描かれた『天文対話』の扉絵(p.75)。あとは、ケプラーという人について、「『科学』だけにとらわれずに調和に満ちた宇宙を、あらゆることから美的に探究し続けた人だった」(p.117)というのも印象的だ。p.118には、ケプラー著『世界の調和』に「惑星の醸し出す和音」の図が載っている。音楽や美学の学問としての背景に、調和という、哲学的な、文系理系で分けることのできない概念が厳然と存在しているのを感じさせる。という訳で、宇宙や数理の真実という大きなテーマに挑む学者たちの物語を少しだけ感じることができる。
ただ「少しだけ」と言うのは、その思考過程はもちろん微分積分、力学などバリバリ理系の知識が必要なもので、読んでいても正直おれにはチンプンカンプンだった。(文系理系で分けることのできない云々、と言っておきながら、結局おれはド文系だし、という矛盾を感じながらも、)結局斜め読みして終わってしまった部分がほとんど。一応、「高等学校で微積分を学び始めた人たちへの贈り物として、ちょっとした副読本となるもの」(p.3)を目指して書かれたそうだが、解説してくれる人と一緒じゃないと理解するのは難しい。だいたい、ケプラーの法則は聞いたことあったのに、地球とか惑星の軌道が楕円、ということすら知らなかった。p.99の図4.15「円じゃないぞ、縮めろ、楕円だ!でも、わずかだぞ。」の絵は面白いし、記憶に残った。(16/05/03)