魚川祐司のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ミャンマーで上座部(テーラワーダ)仏教を学んだ著者が、初期仏教の解釈をおこなうとともに、現代に生きる仏教の実践者たちの体験も参照しながら、釈尊(ゴータマ・ブッダ)「解脱」「涅槃」ないし「悟り」の具体的な内実を、明確にしようと試みた本です。
著者は、「解脱」や「涅槃」を証得した修行者には明白な自覚が訪れるといい、それを世間の「現実性」と区別して「本来性」と呼んでいます。その上で、大乗仏教における「即心是仏」や「平常無事」の主張は、「現実性」から「本来性」への移行というゴータマ・ブッダの教えには明白に見られた方向性は無効化され、「現実性」と「本来性」が媒介無しに等置されていると論じています。