小林敏明のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
日本における「現代思想」の最前線に立ち続けてきた柄谷行人の思想を、クリアに論じている本です。
「あとがき」で著者は、「柄谷行人を日本戦後思想史のなかに位置づけてみる」ことをめざすという、やや泥臭いと思われるような課題をみずからに課したと述べています。そしてじっさい本書では、『畏怖する人間』や『意味という病』といった初期の批評や『内省と遡行』『探求Ⅰ・Ⅱ』のような哲学的著作を解説するに際して、現代思想の文脈の中を軽やかに疾走する柄谷の姿を描くのではなく、小林秀雄や吉本隆明、あるいは柳田國男や丸山眞男といった日本の思想家たちの地平からみずからの身をもぎ取るようにして離陸していく柄谷の泥臭い身振り