駒村康平のレビュー一覧
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日本の年金
社会保障制度の中で年金の理解度が低いと感じたので、本書を手に取った。本書では年金制度の過去から現在までの経緯や他国の制度との比較など、日本の年金制度を多面的に解説しており、非常にわかりやすいと感じた。また、個人的に年金制度の理解度が低かったのは日本の年金が年金「保険」と呼ばれていたことに起因していることもよく分かった。保険会社出身の私としては、保険は応リスク負担の保険料の拠出により、トリガー要件に合致すれば、予め設定した保険金を受け取ることができる仕組みという理解であり、保険の原義としてはこちらが正しいだろう。しかし、日本の年金制度において年金保険と言う場合、そもそも応能負担と言 -
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2025年団塊の世代が75才に到達し、2030年には65才以上が32%、75才以上が20%となると予測されている。人口は9%減少するが単独世帯は11.5%増加して全体の1/3超が単独世帯となる。特に都市部の増加が目立つ。これまでの日本の住宅政策、教育システム、そして年金も正社員の一括採用、終身雇用と言う日本型雇用システムに合わせて設計されており「階保険・階年金」のしくみが成立した。しかし90年代後半から派遣労働などの非正規雇用が増加し厚生年金と健康保険の適用対象者から外れた非正規労働者は国民年金、国民健康保険に加入することになったが、これらの保険料に企業の負担はなく、おおむね定額負担であるため
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教科書的な部分(これまでと現状)、新書的な部分(これからと論争的記述)から構成。もちろん新書的な部分が興味深い。
危機を煽るのではなく、冷静な提案だ、GPIFへの政治介入を除いて。GPIFは存在自体、知らなかった。年金積立金を市場の活性化に使おうという魂胆は許せないものが私もある。
年金については、世代、職業的な立場によって、異なる感情を抱いているだろう。利害と政治的信条がぶつかる問題だ。だからこそ、本書のようなものが必要だと思う。教科書的な部分の理解が面倒だが。
・課題:1.少子高齢化の中で、年金財政の持続安定性の確保。2.非正規労働者の国民年金未納問題。3.低所得者への生活保障。
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高所得者層の所得は増え続け、所得格差は年々拡大している。経済的にバランスのとれた中間層が静かに崩壊しつつある。スタート時点で人生の可能性に大きな格差があれば、不利な状況下にある者は人生に絶望し社会を憎悪する。境遇に絶望する低所得者層が増えれば、暴力、犯罪といった社会問題となって顕在化する。社会保障を巡る負担と給付の問題はもはや先送りはできない。所得税・資産課税・相続税の強化、高齢者への所得、資産に応じた負担の徹底、社会保障制度の見直し、非正規労働の処遇改善など、乗り越えていくべき課題はあまりに多い。本書は所得格差の現実を数値と表とグラフで明確にし、それが齎す問題を冷徹に炙り出している。持続可能