桑野隆のレビュー一覧
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『知的な信念と感情的な〈中略〉要求との深い内的葛藤はロシア特有の病である』
本著はまず、19世紀のヨーロッパ革命、或いはドイツ哲学やドイツロマン主義がロシアに与えた影響について解説、その後ベリンスキー、ゲルツェン、バクーニン(についてはバーリンは否定的)という3人を軸に、19世紀の所謂インテリゲンツィアと呼ばれるロシアの思想家や作家について解説する。
冒頭の引用は西ヨーロッパに対するロシア特有の感情を説明したものであり、それは文明的先行への羨望と計算高さへの嫌悪を同時に抱えている。
(但し、「ロシア」を「(第二次大戦までの)ドイツ」と置き換えてもほぼ意味が成り立つところは面白い)
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ロシアの文学評論家であるミハイル・バフチンの生涯を追いながら、
彼の主要な概念・用語・理論枠組みなどを解説していく書籍。
新書というメディアでバフチンの書籍が出版されるとは思っていなかったので、とても驚いた。
バフチンは文学評論家ではあるが、おそらく、広くコミュニケーションについての考察を残した人、と捉えたほうが良いかと思われる。
現在でも、質的(定性的)な視点から研究を行おうとしている、
心理学・社会学・言語学等の諸学問の人々の論考において、
ときどきバフチンの引用が散見される。
おそらく、単なる相対主義でもなく、融合と言うほどの一体化でもなく、
それぞれの「声」がそれぞれのポジションを -
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ネタバレ著者である桑野さんご自身もおっしゃられている通り「バフチンの全体像をできるかぎり簡潔した」本となっている。新書というジャンル(?)のイメージに違わずかなり読みやすく、その割に、けっこうディープな(公刊されていない)ノートやメモなどのテキストも引用されたりしていて面白い。新書で読んで「このテキストいい!原典たどってみよう!」と思ったときに、それがない、というのが多々起こるのではないかと思われる。
私が特に参考になったのは、本書の前半から中盤部分にかけて、何回か繰り返される、<対話><対話原理>と<間テクスト性(インターテクスチュアリティ)>との違いに関する説明の部分。私のように、フランス系の言 -
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バフチンの思想を解説している入門書です。平凡社新書の一冊として刊行された同タイトルの本の増補版で、前著の説明をよりわかりやすく書きあらためた内容になっています。
バフチンの思想は、「ポリフォニー」と「カーニヴァル」という二つの概念を中核とする、文学理論として受けとられていることが多いように思います。しかし著者は、バフチンの思想の全体像を、対話の哲学として理解するための視点を本書において示しています。ドストエフスキーの小説世界にポリフォニー性を見いだしたバフチンの議論は、かならずしも文学作品を読み解くために考案されたものではありません。「厳密に言えば、バフチンのポリフォニー論は、その数年前から -
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筑摩書房からゲルツェン『過去と思索』が刊行されたのは、もう20年以上前だろうか?面白そうだなとは思ったものの、分厚い3巻本でかなりの高額と、ちょっと手が届かなかった。
ゲルツェンは本書の主要登場人物。何だか懐かしく感じた。ソ連崩壊以降、ロシア革命についてもあまり読まれなくなっているのかもしれないが、その前史時代の社会主義思想家や文学者の著作として、岩波文庫でゲルツェン、チェルヌィシェフスキー、プレハーノフなどが簡単に読めたものだった。
本書は、ロシア社会ならではのものとして登場したロシア・インテリゲンツィヤの姿や有り様、歴史的背景、ドイツ・ロマン主義の影響などを簡潔にまとめた論考に、