<世界を渡る粒パスタ、その名はクスクス>
クスクスという食べ物があることは知っていたが、何となく食べる機会がないままだった。どこかでそれと意識せず食べていたことはあるのかもしれないが、何とはなしにただエキゾチックな食べ物という印象だけがあった。
先日読んでいたレシピ本にクスクスを使った料理があり、
...続きを読む「おし! この機会に食べてみるか!」とネットで注文したのはよいが、パセリとミントで味付けしたサラダ、というのが何だかぴんと来ない。ふぅん? そもそもクスクスってどうやって食べるものなんだ?と遅ればせながら本を読んでみることにした。
著者はフランス暮らしが長いようで、旅や語学に関する著書が数冊、訳書もある。
クスクス研究家というわけではなく、比較的個人的な興味から始まっているようだが、分布、各地での作り方・調理法、その歴史等、相当深く調べられていて、非常に興味深く読んだ。読後は何だか、しみじみと感慨が残る。
フランスでは国民食となっているらしいクスクスだが、そもそもよく食べられていた地域は「マグレブ五国」と呼ばれる北アフリカ(アルジェリア、モロッコ、チュニジア、モーリタニア、リビアの西部)である。リビアの首都であるトリポリの東に位置するシドラ湾のあたりで、南北に線を引き、その西側がクスクスの主要消費国となる。ベルベル人と呼ばれる人々が住んでいた地域である。
フランスで近年急速に広まったのは、モロッコとチュニジアの独立で、北アフリカ生まれのフランス人がフランスに大量に帰国したのがきっかけの1つと言われる。
クスクスとは、デュラム小麦(Trititum durum)を粗く割り、その上に小麦粉をまぶして作る粉パスタである。大きさは「蟻の頭」と言われる。地域によっては芯がデュラム小麦ではなく、雑穀(ソルガム、ドングリ等)である場合もある。
一種の保存食であり、日本の糒(ほしいい)と似たようなものと考えることもできる。ロングパスタと違って、お湯をかけただけでも食べられる。ただ通常は蒸して食べる方が美味であるようである。
スープに入れたり、付け合わせにしたり。3種の肉や野菜などのたくさんの具を入れればクスクス・ロワイヤル、野菜だけなら「貧乏人のクスクス」。イタリアにはイカ墨のクスクスがある。甘くしてデザートとして食べる例もあるそうだ。
クスクスは、皆で分けながら食べるのに向いているため、慈善団体のフリーフードとしてもポピュラーになってきているという。3人で食べられるなら4人でも食べられる。おかわりも自由だ。
日本語では忍び笑いを思わせる、何だかかわいらしい名前である。語源には諸説あるようだが、響きのよさは、この名が残った一因ではなかろうか。
クスクスとともに長い旅をしたようだ。
巻末には日本でクスクスが食べられる店の一覧あり。東京に偏っているのが難だが、いつか行ってみるのも楽しいかもしれない。
*で、クスクスについてはだいぶんわかったのですが、家でどうやって食べてみる!? これはまた別のレシピ本等、探してみよう(^^;)。幸い、クスクスは保存食、慌てなくてもよかろう・・・。
*『世界の市場めぐり』も引っ張り出して眺めたり。なるほど、アルジェリアに作っているところの写真がありました。