サラリーマンが、自身の体験を基に不動産投資の実際をわかりやすく平易な言葉で解説した書。一年程度の期間に、銀行借り入れによるレバレッジを利かせ、ゼロから資産3億まで増やした体験談である。一棟目の福岡のアパートを皮切りに、仙台、横浜のRCマンションと投資を増やしていく過程で、銀行とのやり取りや、管理会社
...続きを読むの選定、仲介業者へのモチベーション付けなどが描かれている。願わくば、もう少し詳しい描写があれば、ケーススタディとして後に続く人たちへの参考にもなったと思われるが、個人情報や業者への遠慮なのか、その辺はあまり踏み込んでいない。とはいいつつも、全くの素人である読者が、不動産投資の実務的プロセスを順序立てて描かれているのは貴重である。DCFなどのファイナンス理論についての知識がいくらあっても、実務はやはり経験者の話が最も参考となる。本人はかなり謙虚なトーンで語っているが、かなりの努力家であり向上心も強い方であると推察される。巻末に、参考とした文献の多さに加え、JBバーニーといった企業戦略の本の名も挙がっていることに関心する。本中、物件のバリューアップについて書かれているが、基本はやはり顧客重視、市場環境分析、差別化といった概念が根底にあるのは間違いない。こうしたマーケティング的ロジックについては巻末に少しだけ触れられているが、本人のそうした分野についての意識の高さが伺える。今後、不動産投資を行うにあたって最初に読む本としては手ごろだろう。