恒川邦夫のレビュー一覧

  • 精神の危機 他15篇

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    「風立ちぬ、いざ生きめやも」により詩人として再注目を浴びているだろうヴァレリーだが、彼の主意はその言葉に対する洞察力やそれを操る能力、即ち知性にある。WW1後に執筆または講演された内容を集めたこの評論集で、ヴァレリーはこれまでヨーロッパこそ世界そのものであったが今は世界の一部となってしまった事実を指摘しながら、人間らしさが損なわれてしまう隘路に、内面が摩耗させゆく時代に対する警鐘を鳴らしている。その言葉の切っ先は丹念に研がれたナイフの様に鋭く私の中へ切り込んで行き、何度も声を上げて叫びそうになる程。必読。

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    2013年08月29日
  • 精神の危機 他15篇

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     ポール・ヴァレリーの文章はなんとなく読みにくくて、細部で感心する部分はあっても、全体のメッセージが理解しにくいという印象があった。しかしこの本はとても面白かった。
     おおむね第一次大戦後あたりに書かれた文章なのだが、ヨーロッパ「近代」に凄まじい動揺が走った時代であり、社会の価値が急速に変貌していく「危機」を、ヴァレリーは鋭敏に看取した。
     この洞察は、現在にもつながっている。20世紀初頭に起こった「変化」は、その後の100年間の諸々の事象を支える土台となっており、ヴァレリーによる分析は現在の文化にもかなり当てはまる。
     興味深いのは、ヴァレリーが「後発の」ドイツの勃興に対して抱いた畏怖の念で

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    2012年07月23日
  • 精神の危機 他15篇

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    二つの大戦をはさんだ20世紀の前半、激動といってよいヨーロッパにおける「知の巨人」による思索。そこに現れてくる諸相は、100年後の我々の問題意識と驚くほどつながりがある。一言で言ってしまえば近代化、今風に言い換えればグローバリゼーションなる暴力に対し、危機にさらされる精神について、その絶望的な現実と展望を、驚くほど理性的に、淡々と語っている。

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    2012年02月19日
  • 精神の危機 他15篇

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     ハムレットはつぶやく。「そして私は、ヨーロッパの知性であるこの私は、どうなるのか・・・・・・。そして平和とは何か。平和とは、恐らく、人間に自然な人間相互間の争いが、戦争がするように破壊によって翻訳される代わりに、創造によってあらわされるような状態をいうのであろう。創造的競争、生産能闘争の時だ。しかし、「私」は生産に疲れていないだろうか。極端な試みへの欲望を出しつくし、また微妙な混合薬を濫用しすぎたのではなかろうか。私は自分の困難な義務や超越的な野心を放棄させねばならないのか。私も時勢にしたがって、いま大新聞を経営しているポローニアスのように、どこかで航空事業に従事しているレヤーチーズのように

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    2012年02月20日
  • 精神の危機 他15篇

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    岩波文庫

    ポール ヴァレリー 「 精神の危機 」精神に関する論文や講演録


    表題「精神の危機」は ヨーロッパの精神が アメリカやアジアに移転することにより、先に 大国化したヨーロッパが 相対的に 衰退することを危惧した論文。

    表題の精神の意味は、技術開発や植民地政策により先に大国化したヨーロッパの資本主義システムや利益に限定している


    表題以外の論文については、精神という言葉に 知性、主義、文明、言葉と結びつけて価値を見出しており、かなり多様な意味を持たせている。精神に主体性があり、普通に読んでも 精神が何たるかわからない

    *精神は 過去の中から重要なものを探り出したり、新しいシ

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    2023年06月02日
  • 精神の危機 他15篇

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    ヴァレリーによる文明論的な論考集。要するに急速に近代化されていく社会に警鐘を鳴らしてるわけだけど、1世紀近くも前の著作とは思えないほど現代に通じる。近代化を駆動するのはグローバル化、新興国の成長、科学技術の発展で、この論点整理もそこから見えてくる問題点も驚くほど現代的。もちろん100年前と今とでは個々の要素は大きく違うけど、それでも問題意識それ自体はまだまだ現役だと思う。
    面白かったのが、ドイツの台頭を考察した「方法的制覇」。最近の欧州でのドイツの独り勝ち状態と状況的によく似ている。特に、ドイツの強さをその"方法"に見出す主張は、インダストリー4.0なんてものがドイツから登場した背景を読み解く

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    2016年03月06日