岩波文庫
ポール ヴァレリー 「 精神の危機 」精神に関する論文や講演録
表題「精神の危機」は ヨーロッパの精神が アメリカやアジアに移転することにより、先に 大国化したヨーロッパが 相対的に 衰退することを危惧した論文。
表題の精神の意味は、技術開発や植民地政策により先に大国化したヨー
...続きを読むロッパの資本主義システムや利益に限定している
表題以外の論文については、精神という言葉に 知性、主義、文明、言葉と結びつけて価値を見出しており、かなり多様な意味を持たせている。精神に主体性があり、普通に読んでも 精神が何たるかわからない
*精神は 過去の中から重要なものを探り出したり、新しいシステムを構築する
*精神は 反省し、存在条件を考え、徳性、権能、財産を脅かす危険を考える
*精神は 群れ集うことを嫌悪し、離散、異議、差別は、精神にとって活力の証
*精神は、問題を解決するための変形力〜反射や記憶、習慣では問題が解決しないと 精神が登場する
*精神は、我々をとてつもない冒険に誘いこむ など
精神の危機
序文「我々文明なるものは、今や、すべて滅びる運命にあることを知っている」
「ヨーロッパは〜アジア大陸の小さな岬の一つになってしまうのか〜地球の貴重な部分、巨大な体軀の頭脳
として、とどまり得るのか」
「ヨーロッパ精神が支配するところには、必ず、最大限の欲求、最大限の作業、最大限の資本、最大限の野心、最大限の勢力、最大限の外的自然の変形、最大限の関係及び交換が出現する。この最大限の集合がヨーロッパ」
方法的制覇
「大国の仲間入りをする国〜古くからの大国が何世紀もかけて築いたものを駆け足で模倣し〜自らを組織する〜ドイツ、イタリア、日本」
精神の政策
「精神は、あるときは 過去の中に〜重要なものを探り出し、保存しようとする。別のときは すべてをご破算にして、人間世界の新しいシステムを構築しようとする」
「精神は自分自身について反省し、自分の存在条件を考え、自分の徳性、権能、財産を脅かす危険について考える」
「精神は群れ集うことを嫌悪し、他の精神と衝突することで何かを得る〜離散、異議、差別は、精神にとって活力の証」
精神連盟についての手紙
「精神とは、生体の自動反応では解決しようのない問題を解決する変形力〜反射や記憶、習慣では問題が解決しないことが分かると、精神が登場して、切ったり、貼ったり、変化させ、想像上のテストを繰り返し、自由をよそおい〜」
知性の決算書
「私たちは存在の奥深いところにある本質的な静けさ、かけがえのない忘我の感覚を失ってしまった〜その静けさ、忘我の時間こそ、生命の最も繊細な要素がリフレッシュされ、力が回復され〜精神を本来の自由に返す空白状態である」
精神の自由
「精神とは、その冒険に瞬間的な方向づけ、刺激、推進力を与えるとともに、行動に必要な口実と幻想のすべてを与える」
「地中海〜精神の自由および精神そのものが最も発展した地域で、同時に交易も発展した」
「精神は、我々の内部にある一つの力だが、我々をとてつもない冒険に誘いこみ、その結果、人類は生命の正常な初期条件の一切から遠く離れてしまった」
「精神の自由のないところでは、文化も衰退する」
精神の戦時経済
「知識は自由な精神においてしか増大しえない。自由な精神とは、始めから自分に厳しい制約を課す強さを持つ」
ペタン元師の謝辞に対する答辞
「どうか誰も新たな戦争が人類の運命をよりよくし、和らげることができるなどと思わないで下さい」