第二次世界大戦を連合国の勝利に導いた、イギリスの首相、ウィンストン・S・チヤーチルの回顧録である。
第一刊から第四刊まで読んでみて、改めて、チャーチルの指導者としての、国際情勢の先をみる鋭さには驚かさせられる。世界の指導者でこの時代以後も、これほど世界情勢を的確に見れる人はいない。第一刊の序文で、チ
...続きを読むャーチルは第一次世界大戦の戦禍を免れて、世界に残されたものを破壊尽くしたこんどの戦争ほど、防止することが容易だった戦争はかってなかったと述べている。1936年のドイツのラインラント再占領までに対して、英、仏が断固たる意志と行動を示せば、あるいは、この戦争は防げたかもしれない。また1939年でも、スタリーンのソビエトを英、仏側に引き止めることができれば、戦争の局面は変わっていたであろう。彼は戦争末期、ドイツが降伏した後、ソ連との東西冷戦が始まることを予見していたが、米国が太平洋での対日戦の集結を残していたのと、余命わずかのルーズベルト大統領の体調も相俟って、米国に戦後の冷戦が、始まりつつあることを認識させることはできなかった。第四刊のエピローグで1946年の秋、ジュネーブで、欧州の平和には仏独両国のパートナーシップが重要であると、今のEUの設立の趣旨と、同じ考えを述べている。戦争の指揮官としては、作戦の失敗はあったかもしれないが、国際問題に対する、卓越した認識、国民を指導者として導く不屈の闘志、ユーモアのセンス、英国は、危機にあったとき、最高のリーダーを輩出したと言える。、今の日本の必要な指導者は、チャーチルのような、国際情勢に対する深い洞察力と、強靭な意志力持った人が必要であろう。