田村和紀夫のレビュー一覧
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それはむかーしのことですが、私が高校生だった頃、一向に成績のよくならなかった教科の一つ数学の授業の時、先生がこんなことを言いました。
「日本では、高校の主要教科は理系文系と分かれていて数学は理系の教科だと言われているが、ヨーロッパなどでは、数学はほぼ哲学の隣あたりに位置している」云々……。
さて、それを聞いた時私がどんな感想を持ったのか、今となっては全く覚えていません。ただ、そう言われたことだけは今になっても覚えています。
後日、かなり月日がたってからですが、クラシック音楽の本を読んでいたら、音楽と数学の高い親和性について書かれた文章があって、そこにはバッハの「平均律」なんかが例 -
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評者のようなすれたクラシック・ファンは『交響曲入門』などといういかにもビギナーむけのタイトルの本に関心はないのである。が、それが「講談社選書メチエ」から出たとなると……
著者については寡聞にしてよく知らない。音楽学者で、『ビートルズ音楽論』などという本も出しているそうだ。結論からいえば、まさに「交響曲入門」、正統的な立場から、音楽の構造を丹念に追ってまとめた文句の付け所のない本である。「文句の付け所のない」などと持ち上げた場合、必ず文句をつけるわけだが、巻末の「ディスクガイド」をみると、筆者の嗜好が概ねわかってくる。今さらモノラル期の名演ばかり挙げる手合いではないが、1960年代、70年 -
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交響曲の形式についての説明を期待してたんだけど、どちらかと言えば成り立ちについての簡単な歴史的背景。あとは時系列にそって作曲家とエポックメイキングだった交響曲について、個別に評論。楽典はある程度納めてる人向けの本ですね。
とは言え、わりと知らなかった事も多くて。例えば、もともと交響曲はクラシックの本流じゃなかった、というのは意識した事なかった。声楽→協奏曲というのが境界を中心とした本流の流れで。舞曲→オペラ→シンフォニア→交響曲という傍流がベートーヴェンの深刻な取り組みで器楽の集大成という地位を確立。でも、ほとんど同時に完成形になってしまったので、その後も時間で見るとそれほど長い間クラシック -
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入門書としては、スコアのページがあるなどレベルが高いかも知れないが、文章だけでも交響曲作家たちの目指した音楽がよく分かる。ソナタ形式が読み解くカギであり、楽章の編成、調性・移調・変調、楽器編成、リズムなどにより曲の特徴が説かれる。ハイドン、モーツアルト、ベートーベン、シューベルト、ブルックナー、マーラーその他の主だった交響曲についての解説が分かり易い。最後のディスクガイドは名盤紹介というわけではなく、各演奏の特徴、功罪の説明がユニーク。
モーツアルトの晩年の3大交響曲はハイドンのロンドン・セット以前、ブルックナーの第5はブラームスの第1以前!驚きの事実を初めて知らされた。マーラーにとって音楽は -
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音楽の本質について、七つの視点に沿って著者自身の考えが展開されている本です。
本書の冒頭で著者は、音楽の起源をさぐる方法には「考古学的方法」「文化人類学的方法」「現象学的方法」の三つがあると述べています。これにつづいて、「音楽は魔法である」にはじまり、「システム」「表現」「リズム」「旋律」「ハーモニー」「コミュニケーション」の七つのテーマに沿って音楽の本質が探究されていくことになるのですが、そこでの議論は実証的な考古学や人類学の成果にもとづいているというよりも、むしろいささか素朴なしかたではありますが現象学の本質観取の方法がとられています。
こうした視点から音楽の本質を論じた本ははじめてだ