青来有一のレビュー一覧

  • 人間のしわざ
    『戦争は人間のしわざであり、誰も望まなくてと人間は秩序を求めるのと同じくらいに混沌を求めており、なにもしなくてもアンテナは錆びついていき、コンクリートは剥がれ落ちはじめ、土台の鉄骨でさえだんだんと傾いて、いつかは壮麗な天主堂の崩壊のときは必ずくるだろう…』ー『人間のしわざ』

    青来有一が書くことの根...続きを読む
  • 人間のしわざ
    2015.7記。

    むごたらしい殺戮の現場を撮りつづける戦場カメラマン、息子はその写真をネットで売りさばき、原発へのテロを夢見ながら引きこもっている。
    広島で教皇が演説した時にいったという「戦争は人間のしわざです」という言葉は、原爆さえ神の御心による試練だと信じようとしていた長崎出身の主人公に動揺を...続きを読む
  • 人間のしわざ
    「人間のしわざ」と「神のみわざ」という2編から成るが、両者は内容的に連続している。個人的には、混沌とした前者よりも、主人公あるいは作者の思索や主張がより明快な後者の方が好みだが、前者を読まなければ後者は理解できず、要するに2編で1編なのだろう。
    30年前の学生時代に分かれた男女の邂逅から話は始まるが...続きを読む
  • 小指が燃える
    原子爆弾が落とされて、これで良かったのだ これしかなかったのだ
    と、思ったことが私にもあるだろう きっとある
    祈りと神と原罪と人間の、私は何たるかを分からないけれどどうしてこうも海のように晴れ渡っているのか
  • 悲しみと無のあいだ
    長崎に落とされた原爆の日を思う2編。

    句碑に刻まれた松尾あつゆきの日記
    原爆で亡くなった彼の妻と3人の子、生き残った父と娘一人。
    当時を体験し、次の世代へとそれを伝える林京子さんに対する気持ちと、
    自分はあの日の現実を聞いて想像するしか出来ないもどかしさ。

    被爆者である父が、亡くなるまで結局語ら...続きを読む