青来有一のレビュー一覧

  • 人間のしわざ

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    『戦争は人間のしわざであり、誰も望まなくてと人間は秩序を求めるのと同じくらいに混沌を求めており、なにもしなくてもアンテナは錆びついていき、コンクリートは剥がれ落ちはじめ、土台の鉄骨でさえだんだんと傾いて、いつかは壮麗な天主堂の崩壊のときは必ずくるだろう…』ー『人間のしわざ』

    青来有一が書くことの根源には長崎という土地に幾重にも堆積した命と信仰するものへの揺れる気持ちがあるとは感じていたが、ここまで率直に語られるとは思わなかった。例えば「てれんぱれん」とこの「人間のしわざ」はほとんど同じことを書いているようにも思えるが、神のみわざを遥かに上回るかのような人の生み出す力、そしてその力が犯してしま

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    2015年07月08日
  • 人間のしわざ

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    2015.7記。

    むごたらしい殺戮の現場を撮りつづける戦場カメラマン、息子はその写真をネットで売りさばき、原発へのテロを夢見ながら引きこもっている。
    広島で教皇が演説した時にいったという「戦争は人間のしわざです」という言葉は、原爆さえ神の御心による試練だと信じようとしていた長崎出身の主人公に動揺をもたらす。

    主人公がみる幻覚の形で描かれる江戸期のキリシタン弾圧のすさまじさ、島原の乱における籠城戦の悲惨さ(これはバルガス・リョサの「世界終末戦争」を彷彿とさせる)。
    そして息子とともに撮影に赴いたぬかるんだ干潟に溢れる生命。

    表面的なところでいうと、意外と文体に村上龍との共通点がある気がした

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    2019年01月05日
  • 人間のしわざ

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    「人間のしわざ」と「神のみわざ」という2編から成るが、両者は内容的に連続している。個人的には、混沌とした前者よりも、主人公あるいは作者の思索や主張がより明快な後者の方が好みだが、前者を読まなければ後者は理解できず、要するに2編で1編なのだろう。
    30年前の学生時代に分かれた男女の邂逅から話は始まるが、結局、男女がどうしたということではなく、戦場カメラマンという道を歩んだ男の思索が主題となる。惨たらしい戦場、被爆地であるとともにキリシタン殉教の地である長崎、長崎を訪問したローマ法皇ヨハネ=パウロ2世、ゴルバチョフ、ワレサ議長といった一見脈絡のない場所と人が、自然、神、人間というキーワードの中でつ

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    2015年06月05日
  • 小指が燃える

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    原子爆弾が落とされて、これで良かったのだ これしかなかったのだ
    と、思ったことが私にもあるだろう きっとある
    祈りと神と原罪と人間の、私は何たるかを分からないけれどどうしてこうも海のように晴れ渡っているのか

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    2018年09月26日
  • 悲しみと無のあいだ

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    ネタバレ

    長崎に落とされた原爆の日を思う2編。

    句碑に刻まれた松尾あつゆきの日記
    原爆で亡くなった彼の妻と3人の子、生き残った父と娘一人。
    当時を体験し、次の世代へとそれを伝える林京子さんに対する気持ちと、
    自分はあの日の現実を聞いて想像するしか出来ないもどかしさ。

    被爆者である父が、亡くなるまで結局語らなかった8月9日の詳細に思いを馳せる。
    亡くなった父の少年時代と養父母とのやり取り、あくまで想像であって、
    海外小説の戦争の話。

    原爆についての話が多い著者にとって
    一番身近な人の被爆の話を聞けなかったのは心残りだね。
    もし詳細を父に聞けていれば、この小説はまた違う形になったのかな。

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    2015年09月02日