小林可夢偉と片山右京。新旧日本人F1ドライバーの対談集。
可夢偉に関する初著作でもある。
ホンダの撤退、ブリジストンの撤退表明、そして中嶋一貴の不振。
日本とF1との関係性が途絶えそうな絶対絶命の状況下、
2009年のラスト2戦で突如彗星の如く現れ、2010年厳しい序盤戦を
乗り越えルーキー最高位
...続きを読むを記録した可夢偉。この本を読むと可夢偉の
活躍は決して運だけではなく必然であったと改めて思わされる。
可夢偉がレースに臨むアプローチはビジネスの現場にも役立つのでは
ないだろうか。自分の欠点や問題点は徹底的に分析するもあの時
あれをやっていれば...といった変わりようのない過去を悪戯に振り返り
はしない。要は無駄な事は考えず極めてシンプル、最短距離で目の前
の課題にあたる姿勢は参考になる。
本書はそうした可夢偉の持つ資質を読者に示してくれる一方、
対談集にしてはテンポや臨場感に欠けるのが気になる。
F1ファンは当然分かるだろうが、F1に興味のない人が手を
取ったらどれが可夢偉の発言か右京の発言か分かり辛いのでは
ないだろうか。そして本書に出てくる内容はF1ファンであれば
昨年度、雑誌やTVで触れた内容が殆ど。本書で初めて知りえた
事実は極めて少ない。要は素人にとっても玄人にとっても中途半端
な内容なのだ。可夢偉に関する初めての著作だけに個人的には
広くF1に興味のない方も含め手を取ってもらえるような内容、
構成にして欲しかった。右京は好きなドライバーだが右京vs可夢偉
の対談集の形にあえてしなければならなかった必然性を感じない
のである。