平井美帆のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
よく本になったなと思う。
残さなければ、無かったことにされる。
そんな強い思いが感じられる。
異郷の地で自分たち女がされたこと、直面したこと、強いられたこと。どんなに絶望の日々を過ごしたことか。祖国にやっとの思いで帰ってきてからも“仕方がなかったこと。皆んなのお役に立ったのだから。減るものでもなし。”とさらに傷つけられ、苦悶の日々を送ることに。
改めて思う。戦争は勝者にも敗者にも誰にも なにももたらさない。それどころか更に酷い傷を残す。特に弱いもの、子供、高齢者、女性に。
今も ウクライナやガザで戦争が続いている。
人間って賢いはずなのに。
歴史からは いつも何も学ばない。 -
Posted by ブクログ
他の人を助けるために性を売る女性。
自分の意思よりも日本の集落の上層部の男の人とソ連の幹部で決められた合意に従うしかなかった少女達。
そして他の人を守るとために自ら進んで売りに行く回数を増やした人や、身体を売った人に日本に帰国後、物好きだったなと言われる彼女達。
どこまで男性は卑怯なのかと思った。
そしてそんな世の中腐ってると思う。私ならその言い方はないと若くても思うし、その場で伝える。
そんな集団なら抜け出して経験を語るべきだとやっぱ思ってします。
そうならない環境、同じ地域に住んでいて閉ざされた環境にいるのは恐ろしいことだと思った。
戦争を始めたのも男性で、犠牲になるのは1番弱いも -
Posted by ブクログ
ネタバレ毎年8月には先の大戦に関する書籍を意識して手にするようにしています。
そんな中で手にした本書。
今までに手にしてきた戦争関連本とは全く違い、国策として満州へ渡った黒川開拓団の「接待」について著者である平井美帆さんが実体験を聞きまとめたノンフィクション作品。
「減るもんじゃない」
この一言は酷すぎるし、辛すぎる。
敗戦の直前になり突如として参戦したソ連。
北方領土の問題だけでなく、かつて満州と呼ばれた地もソ連軍により攻め込まれたことを改めて実感。
いわゆる従軍慰安婦の問題で戦争により女性が性の被害を受けた事実があることは知っているつもりです。
しかし、本書で語られるのはソ連軍に「接 -
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また私の知らなかった戦争が、ここに記されている。
戦争関連の本を読むたび、知らないことばかりだなぁ、とため息が出る。
内容はあまりにも衝撃的で、著者はよくここまで聞き出せたと思う。
やはり女性だからこそ出来たのでしょう。
敗戦直後の満州。
黒川開拓団は団を守るため、未婚の娘たちを「接待」の名目でソ連兵へ差し出す決定をする。
こうした接待や性的暴行などは戦時中の話として聞くことはあるが、衝撃なのは身内の男たちの態度だ。
「皆を守るため」と娘たちを選別して差し出し、誰も助けてくれない。
更にやっとの思いで帰国したら「汚い」と言われ、誰にも歓迎されない。
笑みを浮かべながら「減るものじゃない」と -
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下手すると下卑た内容になりがちなテーマが静謐な筆致でまとめられている。
まずそこに感服した。
当事者目線で寄り添う筆者の温かい共感があったからこそ、このような大作が生まれたのだろうなと思った。
それにしても、当事者たち(特に善子、玲子)の強いこと。
しかし、彼女たちも、元から強かったわけではないだろうし、強くなりたかったわけでもなかったに違いない。
強くならざるを得なかった彼女たちの哀しい境遇に、今一度、男たちは思いを馳せてほしいと思う。
男たちの(日ソ、そして時代を問わず)卑怯さ、浅ましさ、薄さは、彼女たちの強さ、優しさと余りに対照的だった。
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タイトルから想像される事実は
この本にとって前半の部分のみ
後半は命からがら満州から
引き揚げてきた女性たちの
戦後の戦いだ
新聞で性被害にあった女性の体験談を
読んだことがあるが
男性にとっては加害の事実は
一時のことかもしれないが
女性にとっては一生続く苦しみ
だということを知った
その性差の感覚の違いは
どうしようもなく大きいのだ
男たちが口にする
「減るもんじゃないから」ではなく
「減るなんて生易しいものではなく
すり減って消耗して呑み込まれて
蝕まれて病んでいくもの」だと
抗議したい
だから作者が戦後77年もたって
過去の事実を執拗 -
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本著の最後の方で用いられた表現、人柱や人身御供が当にそれだと思った。読書を通じて薄らとは知っていた、強姦とは異なる取引。ソ連兵の要求に対して身を捧げた女性たち、それを開拓団が集団の防衛のためと組織立って行い「接待」と称した。無力な敗戦者は彼女たちに救われた訳だ。しかし、彼女たちに感謝も謝罪もないばかりか、心無い、汚れに触れるような扱いや言葉。その取引で交渉人が私益を得るような疑いまであったという、日本軍として武装解除後の無力感、意地汚さ、苛立ちと悲しさの混ざる思いだ。
戦争にも国際法があるとは言え、警察機能が麻痺した状態、かつ敵地において何を頼れば良いか。原始的な暴力と略奪を含む社会に戻り、 -
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日本の敗戦は満州開拓団にとって、地獄の日々の始まりだったとあるが、そのなかでも団の皆を守るために犠牲になった女性たちは、悲劇というより他にない。
だが、彼女たちの心の叫びを文面で見ないことには、知らずに闇に埋もれていく。
悲惨なこともあったであろうで済まされ流されていくのは、避けてほしいと思う。
真実が見えなくなっていくことは、決してあってはならないはずだから。
彼女たちの書き記したメモがすべてを教えてくれる
《私は見た 父のにぎりこぶしに なみだ一滴》
《ソ連兵に引きだされ、友は馬にのせられ、どこへ行ったのか》
《乙女ささげて 数百の命守る 女塾で学んだ大和魂 音をたててくずれ落ち -
Posted by ブクログ
アジア・太平洋戦争では、日本の貧困や飢餓から村をあげて旧満州への移民政策が推し進められた。移民政策と同時に現地に住む中国人の住居を接収し、日本人に追い出された多くの中国人が困窮した。敗戦と同時に、中国人はかつて日本人が行ったとおり、日本人への略奪や暴行があいつだ。加えてソ連軍の進行で、帰国もできず対応を迫られる村人たち。相次ぐ集団自決の中、黒川満蒙開拓団では娘たち15人を「性接待」としてソ連軍に提供し、村人の人柱にされた。呼び出し係、事後の洗浄係、人柱としての娘たち。性病や感染症で亡くなる娘たち。やっとの思いで、帰国に途につくが、橋を渡る際に渡河する交換条件で蹂躙される娘たち。命からがら帰国
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Posted by ブクログ
開拓団でそんなことがあったなんて、でもあり得ることだと感じた。これ読むと、従軍慰安婦は確かに存在したのだろうと思う。
ソ連軍から女性兵の笑い声が聞こえた、と書かれているところがあり、同じ性でも立場が違うと人の痛みに鈍感、冷淡になれる、想像力の欠如にゾッとする。いや、ここで男の立場に立たないと自分が逆の立場になるという自衛の気持ちが麻痺させるのだろうか。平時は優しくて、リーダーとして振る舞っていた人が、犠牲者を接待に連れ出し、その後見ぬふりして生きていける厚顔ぶり。「非常時だったから」という言葉の冷淡さ。
その「非常時」から戻っても、感謝されず、いないものとされる、むしろ傷モノとしてさげずまれる -
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子供を持つこと
この本を読むまでは
「体が産めない状況なら、何も無理に母にならなくても良いのではないか?」
と考えていた。子供は生まれればおしまいでは無い。最近はせっかく生まれたのに、幸せになれない子供のニュースが溢れている。
この作品で、欲しくても授からない女性の気持ちや葛藤を知り、そうまでして授かったならば、きっと両親は大切に育てるだろうし、幸せになれるのは子供だけではないのではないかと感じた。
当事者ではない人の理解に繋がる作品だと思うし、当事者の人がもっと語れる世の中になるべきなんだろうなと感じた作品。