平井美帆のレビュー一覧

  • 中国残留孤児 70年の孤独(集英社インターナショナル)
    山崎豊子先生の「大地の子」を読んでから中国残留孤児について深く知りたいと思って手に取った一冊。

    中国残留孤児に縁のない著者が本書を執筆するきっかけになったのは、金沢東京間で起きた夜行バスの交通事故。
    運転手は残留孤児2世の男性で、激務により睡眠不足が続いていたのに業務を引き受け、事故を起こしてしま...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    この10年ほどで、もっとも辛く気持ちが沈む、でもだからこそ知らなければならない、と思える本の一つでした。

    ペルシャでもミシシッピでもポーランドでもベトナムでも、古来からずっとずっとずっと繰り返されているであろう、戦争とその中の人間たちの恐ろしさ非道さ。

    法治や人権、尊厳は、紙のように簡単に引き裂...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    タイトルどおり『差し出された娘たち』の話し。差し出した男たちや差し出されなかったけれどそのことを知っていた女たち、それに娘たちを差し出されたソ連兵たちはどう思っていたのだろう。まあソ連兵は「ラッキー!」「当然じゃん!」なんだろうけど。自分が女だから、ことを進めた男たちには嫌悪しか感じない。今を生きて...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    当時の娘たちのルポルタージュ。はじめは読むのが辛かったが、淡々と語る当事者が浮かび上がってくると、次第にこちらも冷静且つ静かな怒りが込み上げてきた。

    反抗できない状況で言いくるめられ…。戦時下だからではない。著者も述べているが、現代にも同様のことは多々あると思う。

    悲しいことに、読んでほしいと思...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    昔、満州からの引き揚げ体験談に、そういった仕事をしていたとされる女性たちが、自ら申し出てソ連兵の求めに応じてくれたから、自分たちは日本に帰ることができたと書いてあった。あれは、本当に、自らだったのだろうか。そう申し出ざるをえない状況にあったのではないか。この本を読むと、そんなことを考えてしまう。どれ...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    戦時下での性暴力は、肯定しないが仕方がないと思ってたけど、確かに自分の娘がその立場になったら、仕方がないでは済まされない深い心の傷を負うところまで思い至らなかった。
    安易な人身御供を選択した団幹部に心の痛みは無かったのだろうか?集団自決でも人身御供でもない選択があったのでは…。でも男尊女卑の風潮では...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    きついな。厳しい。
    何事もミクロとマクロがあるが、特に戦争について言えば、ミクロは悲惨以外の何もない。
    弱いものからの目は、なおさらだ。

    大陸の人間が大概獣みたいなもんだが、その時の、この判断が、本当にそれしかなかったのかどうかは、後で考えれば価値が変わってくるものだからそれだけで責める気はあまり...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    敗戦直後の満州で起きた女性たちへの性暴力。終戦から80年近い年月が経とうとしている2022年の現在、被害者となった女性の肉声を収めることができる最後のタイミミングだったのではないでしょうか。

    戦争を賛美してはいけない理由が何かと問われたら、その答えはここにあると思います。もちろん、答えはひとつだけ...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    もうひとつの「戦争は女の顔をしていない」だと思った。

    第二次大戦敗戦直後の満洲。
    タイトルからは、ソ連の蛮行(戦争犯罪)が連想される。もちろんそれも酷いが、メインではない。
    本書で最も断罪されるべき存在は、自分達のコミュニティを守るため、ソ連兵に若い未婚の女性を差し出し「接待」させた日本の男たちだ...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
     『生きている間に読むべき本』というものがこの世にはあると思う 本著もそのうちの1冊だと感じる

     第二次世界大戦で日本は敗れた 
    その時満州開拓団に起こった悲劇がノンフィクションで綴られている

    集団自決や子殺しという 命の尊さを顧みることすらできない 戦争が引き起こす道徳感の及ばない状況…
    開拓...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    ソ連兵へ差し出された娘たち

    著者:平井美帆
    発行:2022年1月30日
    集英社
    (第19回開高健ノンフィクション賞受賞作)

    岐阜県の黒川村(現在の白川町)の人々が、満蒙開拓団で満州に渡り、戦後、取り残される中でソ連兵に独身の娘を(形の上では本人同意のもとに)差し出して、「接待」をさせたという事実...続きを読む
  • 獄に消えた狂気―滋賀・長浜「2園児」刺殺事件―
    滋賀・長浜で起きた幼児殺害事件の犯人である鄭永善。彼女は統合失調症を患い、いわば"二つの"顔を持つ。そんな"もう一人"の彼女が犯した、罪のない二人の幼児を殺害するというこのどうしようもなく重い罪、そしてそれによってもたらされた悲劇を、それを取り巻く人々、そして何より鄭永善と彼女の病を描くことであぶり...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    従軍慰安婦については、強制連行と表現するのは適切でないというのが、日本政府の公式見解(閣議決定)になっています。

    満州でも、婦女子は強制的に性の饗応者として差し出されたのではないと思います。
    でも、当時の空気としてほぼ強制的な形で、ソ連兵の前にさし出された女性はいたものと思われます。
    同じ空気を共...続きを読む
  • 中国残留孤児 70年の孤独(集英社インターナショナル)
    アイデンティティクライシス。

    自分が何者か分からなくなる。在日コリアンの話で聞いた事がある言葉だったが、成人近くになるまで中国人として育てられ、日本語など覚えていたかも定かでない中で、日本人だと告げられる。中国では日本人として虐められ、日本では中国人として蔑まれる。人の繋がりも属す国家も揺らぎ、本...続きを読む
  • ソ連兵へ差し出された娘たち
    「娘を殺して自分も死ぬ」・・無力感に苛まれ行きつく先。勿論、人の命を奪う権利などない。生きてこそ、その後の人生がある。語り継ぐこともできる・・満州で迎える終戦。集団自決を免れた黒川開拓団。それができた裏の事情。「接待」という的を得ない表現。尊厳を傷付けられた「犠牲者」たち。なかったことにはできない。...続きを読む
  • 中国残留孤児 70年の孤独(集英社インターナショナル)
    中国残留孤児に関する本を読むと、どうしてもテレビドラマ『大地の子』を想いだしてしまいました。戦争によってかけがえのない親を兄弟姉妹を祖国を失い、そして過ぎ去った時間は二度と戻ってこない。
  • 獄に消えた狂気―滋賀・長浜「2園児」刺殺事件―
    日本人男性と結婚した、統合失調症の中国人女性が起こした園児殺害事件のルポ。

    統合失調症は、100人に1人の割合で発症するといわれている非常に一般的な精神疾患の一つである。
    にもかかわらず、統合失調症に対する世間の偏見や差別は根強く、家族に病歴者がいるとそれは隠されがちであり、社会の正しい理解もサポ...続きを読む