金井良太のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
タイトルにAIという言葉が入っているが、全体の趣旨としては、意識研究の全体像をまとめようとしている本。哲学、言語学、神経科学、コンピューターサイエンス…と色んな分野の研究が出て来て面白い。
でもただの説明文という感じでもなくて、著者の人生の歩みとともに論が進んでいくので、どちらかというとエッセイっぽさもあり、おかげで超読みやすかった。
「はじめに」で小学校のときに抱いていた疑問として「木は生きているとしたら、動けないのに風に吹かれ続けるだけってどういう感覚なんだろう?」(=木に意識はあるのだろうか?)が紹介され、それについての謎がその後の研究で少しずつ解明されていくという構成もわかりやすくて -
Posted by ブクログ
ネタバレ功利主義、義務論主義、徳倫理学
・モラルファンデーション理論
社会心理学では、倫理観を記述する概念として、5つの道徳感情が根幹をなしていると提案されている。
1傷つけないこと
2公平性
3内集団への忠誠
4権威への敬意
5神聖さ・純粋さ
1、2は、個人が倫理的価値観の中心に置かれている。
3-5は、個人よりも、社会の秩序に重点が置かれている。
モラルファンデーションのバランスには個人差があり、個人がどの倫理的価値に重きを置くかは、人によって様々。
VBM解析によると、脳の構造の違いを反映している。
政治の脳科学
p30
アメリカでは、政治心理学という社会心理学の一分野がある。そこでは、保守 -
Posted by ブクログ
たとえば何かの主義主張を持ったり、倫理的判断をしたり、たとえば人に共感しやすいとか幸福感を持ったりすることは、あくまで自分自身による、人それぞれの主観的な判断に基づくものと考えるだろう。
しかし、最近の脳科学の研究によって、「金銭的な損得勘定では割り切れない倫理観や道徳感情が、生物学的進化の結果として人間の脳と遺伝子に組み込まれている」ことが明らかになったのだという。
政治的信条とか、他者への信頼や共感など、ある程度どのような傾向があるか、生まれつきの脳の構造の違いで判断できるのだそうだ。
もちろん、その後の生育環境に60パーセントくらいは影響を受けるというが、3歳頃の性格から、ある程度20年 -
Posted by ブクログ
進化心理学、進化倫理学に関する本。最新の脳科学の研究によると、人間の倫理観は脳の中にある根本的な道徳感情に由来する。また、物事の善悪を判断するのに、進化の過程で脳の機能として組み込まれた道徳感情が、人間の判断を左右し、ときに悩ませる倫理的価値観の基盤となっているようだ。
わずか110ページ余りの本書の中で、モラルファンデーション理論、オキシトシン、信頼ゲーム、公共財ゲームなどが手際よく紹介されている。日本でも進化心理学、進化倫理学に関する啓蒙書の書き手として有名なジョナサン・ハイト、ジョシュア・グリーンの研究紹介がコンパクトにまとめられており、彼らの本を読む際に参考にしたいところである。
-
Posted by ブクログ
よくまとまったいい本ではあるが、哲学と科学の相互交渉、相互連絡を主張するのであれば、いただけない記述も多かった。
「哲学用語はやたらと『〜主義』という言葉を使って、もったいぶった感じがして困る」(15頁)
〜主義という言葉は、-ismという英語にシステマティックに対応しており、何らかの思想的立場を表すシグナルとして機能している。
専門用語が存在することにはそれなりの意義があるということを、同じ専門家として、脳科学や心理学と、哲学とは分かり合えてもいいはずなのに。
筆者は哲学を侮っているとしか思えない。
こういう、科学者による無意味なマウンティングに生産性があるとは思えない。
それを言えば