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Posted by ブクログ
たとえば何かの主義主張を持ったり、倫理的判断をしたり、たとえば人に共感しやすいとか幸福感を持ったりすることは、あくまで自分自身による、人それぞれの主観的な判断に基づくものと考えるだろう。
しかし、最近の脳科学の研究によって、「金銭的な損得勘定では割り切れない倫理観や道徳感情が、生物学的進化の結果として人間の脳と遺伝子に組み込まれている」ことが明らかになったのだという。
政治的信条とか、他者への信頼や共感など、ある程度どのような傾向があるか、生まれつきの脳の構造の違いで判断できるのだそうだ。
もちろん、その後の生育環境に60パーセントくらいは影響を受けるというが、3歳頃の性格から、ある程度20年後の政治的性向が予測できるという研究結果もあるというから驚きだ。
何が人を幸せにするかという調査では、自分の属する社会において、信頼関係のあるつながりをもつこと、困ったときに相談できる人がいること、などが、経済的利益を上げるよりも結局は個人個人の幸福感を高めるという結果が紹介されており、このあたりは自明のことで納得だ。
しかし、その幸福感をより強く感じやすい人そうでない人、他者との関係をつくるソーシャルスキルの得手不得手など、その人の生来持っている脳の遺伝的構造も関連してくるとなれば、子どもの社会的能力をあげることが、彼らの未来を幸福なものにするのに繋がる一つの方法であるといえる。
子どものころは親の庇護のもとに愛情を受けて育ち、学校という小さな社会で社会的訓練を受け、成長してからは働くということで経済的利益を上げるとともに、一緒に働く仲間とのつながりのなかで幸せを感じながら生きる。
こう書いていくと、脳科学云々は別にして、なんだか当たり前のことが一番幸せなのかもな、などと思ったりして。
Posted by ブクログ
進化心理学、進化倫理学に関する本。最新の脳科学の研究によると、人間の倫理観は脳の中にある根本的な道徳感情に由来する。また、物事の善悪を判断するのに、進化の過程で脳の機能として組み込まれた道徳感情が、人間の判断を左右し、ときに悩ませる倫理的価値観の基盤となっているようだ。
わずか110ページ余りの本書の中で、モラルファンデーション理論、オキシトシン、信頼ゲーム、公共財ゲームなどが手際よく紹介されている。日本でも進化心理学、進化倫理学に関する啓蒙書の書き手として有名なジョナサン・ハイト、ジョシュア・グリーンの研究紹介がコンパクトにまとめられており、彼らの本を読む際に参考にしたいところである。
一つ気になったのが、経済学批判がされている箇所。本書では、「『人間は利己的で合理的な生物である』として、人間の経済活動のモデル化が経済学で行われており、それが道徳感情の持つ人間の行動を捉え損なっている」と論難されているが、そんな経済学は大昔の経済学であり、現在の経済学では限界合理性の導入や行動経済学、神経経済学といった分野もあるので、藁人形的な批判に思えた。
経済学に関する記述は少し気になるところであるが、わずかなページ数のなかで、現在の進化心理学、進化倫理学の研究成果をざっと掴めるので、進化心理学、進化倫理学に始めて触れるにはいい本だと思う。
Posted by ブクログ
よくまとまったいい本ではあるが、哲学と科学の相互交渉、相互連絡を主張するのであれば、いただけない記述も多かった。
「哲学用語はやたらと『〜主義』という言葉を使って、もったいぶった感じがして困る」(15頁)
〜主義という言葉は、-ismという英語にシステマティックに対応しており、何らかの思想的立場を表すシグナルとして機能している。
専門用語が存在することにはそれなりの意義があるということを、同じ専門家として、脳科学や心理学と、哲学とは分かり合えてもいいはずなのに。
筆者は哲学を侮っているとしか思えない。
こういう、科学者による無意味なマウンティングに生産性があるとは思えない。
それを言えば、同じ論法で筆者や脳科学を批判することができてしまう。
「本書で筆者が紹介する脳科学の用語はカタカナばかりであって、日本語で記す意味がよくわからないし、ルー大柴かよ!わかりにくい!もったいぶった感じがする!」みたいに批判されても、唯々諾々と筆者は受け入れるのだろうか?
こういう無意味な文を、啓蒙書に挟み込む程度の研究者とは思っていなかった。もっとマシな人だと思っていたのに。
金井さんの論文はいくつか読んだことがあり、刺激も受けたが、その研究者としての姿勢には失望した。
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