鶴ヶ谷真一のレビュー一覧

  • 三酔人経綸問答

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    中江兆民「三酔人経綸問答」光文社古典新訳文庫
    元の本が書かれたのが1887年、この2年後に明治憲法が発布され、7年後に日清戦争が起きる。明治維新からは十分に時間が経ち、一方で欧米列強に対しては弱さを自覚していた時代である。そして欧米では普仏戦争が終わり帝国主義が全盛期を迎えていた。そんな時代に民主主義と平和主義に心酔する洋学紳士、富国強兵と大陸進出を熱望する豪傑、そして中庸をとく我が家の主人南海先生が鼎談する。時代のキーワードがスペンサー流の「進化」であること、中国侵略論も既に強かったこと、早くも英独の建艦競争から将来の世界大戦をうかがう見方もあったことなどが興味深い。南海先生の立憲君主制から

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    2024年10月05日
  • 三酔人経綸問答

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    お馴染みの洋学紳士、豪傑君、南海先生の3人がヘネシーを飲みながら経綸について語り合うという本を現代語に訳したもの。100年も前の話だけど、中身はまだ舞台を現代にしても通じるんじゃないだろうか。

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    2023年10月01日
  • 一年有半

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    原文は漢文調で書かれたものであるが、懇切丁寧な注とともに口語文に訳されていて、たいへんに読みやすい。もちろん、原文に触れるに若くはないかもしれないが、書かれている内容を通じて、作者のことを身近に感じることができるという意味では、むしろ口語訳の方がいいのではないかと思われる。

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    2022年07月15日
  • 一年有半

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    中江兆民について思い出したので、新訳文庫に入っているのを発見して、紐解いた。原文は漢文調とはいえ学の無い大学生でもなんとか読めたのだから、何をわざわざ訳する必要があるのだろう、悪口を言おうと目論んでいた。

    そうすると、訳文と同量の注がついていて、この40年間に画期的に進んできた中江兆民研究の成果を惜しみなく注いでいた。「コレは買わなくては!」となった。感想を書く(当然小論文ではない)。

    とはいえ、「一年有半」は万民に膾炙している著作ではないので、簡単に説明する。明治34年、自由民権活動家・中江兆民は喉頭癌を患う。医師から「あと一年有半だ」と告知され、その後約4か月の間に「生前の遺稿」として

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    2021年05月23日
  • 三酔人経綸問答

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    明治の政治思想家の本。酒好きの「南海先生」を2人の客(洋学博士、豪傑の客)が訪ねてきてそれぞれの視点・思想から国のあるべき姿を論じ、意見を戦わせているという構図。この3人の他に注釈が、さらにこれを聴いている聴衆(時にヤジ的な)が加わる。

    当時の社会情勢や倫理観を踏まえておかないとわかりづらい部分もあるが、概ね普遍的な話しが展開している。それぞれの理想と現実が色濃く表れ、極論が展開される傾向もありつつ、しかし現実的な話でもある。

    著者は各論客の意見を極端に位置付けながらも、当時の国民に様々な視点から物事を考えるよう啓蒙する狙いを持っていたのかと思える。

    映画やドラマ、小説にも「当時の社会情

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    2024年08月25日
  • 三酔人経綸問答

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    1.この本を一言で表すと?
    平和主義と武装主義の議論を対話形式でまとめた本。

    2.よかった点を3~5つ


    2.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・なぜ対話形式の内容になっているのだろうか?
    ・立憲制と民主制を区別しているのはなぜだろうか?
    ・洋学紳士は「狂暴な国は決してないことを知っています。」(p73)と言っているがそんなことはないということは明らかだ。
    ・豪傑君の理屈は現代社会では通用しない。
    ・欄外の「眉批」はどのように捉えればいいのかわからなかった。

    3.実践してみようとおもうこと


    5.全体の感想・その他
    ・最後の南海先生がまとめた内容は当たり障りのない内容で意外だった

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    2024年01月27日
  • 三酔人経綸問答

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    明治時代に、このような知識人がいたということを知れただけでもまず読む意味があった。
    大正から令和の時代の今までの歴史を振り返ると、その慧眼に驚く。

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    2022年12月30日
  • 三酔人経綸問答

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    大酒飲みの南海先生の家に、自由平等・絶対平和の追求を主張する洋学紳士君と軍備拡張で対外侵略をと激する豪傑君がやってきて、それぞれの主張を述べて南海先生も持論を述べ、夜が明けて紳士君と豪傑君が帰るまでの話。
    物語が書かれた時代というところをイメージできた方が、それぞれの主張の背景みたいなものがリアルに感じられて面白いのかも。
    2人の対極な、でも極端であることは共通している主張も、のらりくらり話を聞いていた南海先生の話す2人よりマイルドな持論も、それぞれなるほどなと思う部分もあるし、現代はこうなってるよって3人に教えてみたい気持ちにもなった。

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    2022年01月13日
  • 三酔人経綸問答

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    翻訳が分かりやすくてすいすい読めるし、想像以上に書かれている内容が今読んでも古びておらず面白い。(これが明治20年(1887年)時点で書かれていた驚き…)もちろん原文も収録されてます。
    豪傑君、西洋紳士君、南海先生の3名による正解のない議論(あえて読者に「そこ」を考えさせる構成)に加え、脚注と解説で補足された事項を踏まえ、もう一度ゆっくり咀嚼して読み直したい1冊でした。

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    2019年08月18日
  • 三酔人経綸問答

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    南海先生、紳士君、豪傑君の三者による対談形式。分量の半分以上は原文や解説なので、新訳の本編自体は短い。

    洒落のきいた文章と、単純簡潔な構成(ヘーゲルの弁証法的?)でさっと読ませるが、中身は大問題に真っ向から取り組むもの。現代の憲法九条に関する議論もほぼこの本で語られていることにすっぽり収まりそう。

    解説にもあるが不戦条約により建前だけでも戦争が不可になるのは1920年代になってからである。

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    2019年04月29日
  • 一年有半

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    タイトルは筆者の残り余命から。基本的には世の中を斬るみたいなスタンスで伊藤博文辺りをガンガン攻撃する物申すスタイルで合間に文楽や自分の身体について触れている。
    1年半という寿命を短いと思うようなら50年あっても足りない。今を大切に生きろ、というのは至言。

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    2016年10月03日