あらすじ
自由平等・絶対平和の追求を主張する洋学紳士君と軍備拡張で対外侵略を、と激する豪傑君に対し、南海先生の持論は二人に「陳腐」と思われて……。自らの真意を絶妙な距離感で「思想劇」に仕立てた中江兆民の代表作。未来を見通した眼力が、近代日本の問題の核心を突く!
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中江兆民「三酔人経綸問答」光文社古典新訳文庫
元の本が書かれたのが1887年、この2年後に明治憲法が発布され、7年後に日清戦争が起きる。明治維新からは十分に時間が経ち、一方で欧米列強に対しては弱さを自覚していた時代である。そして欧米では普仏戦争が終わり帝国主義が全盛期を迎えていた。そんな時代に民主主義と平和主義に心酔する洋学紳士、富国強兵と大陸進出を熱望する豪傑、そして中庸をとく我が家の主人南海先生が鼎談する。時代のキーワードがスペンサー流の「進化」であること、中国侵略論も既に強かったこと、早くも英独の建艦競争から将来の世界大戦をうかがう見方もあったことなどが興味深い。南海先生の立憲君主制から民主主義への漸近論も、これが昭和初期であれば素直に受け取られたかどうか。
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お馴染みの洋学紳士、豪傑君、南海先生の3人がヘネシーを飲みながら経綸について語り合うという本を現代語に訳したもの。100年も前の話だけど、中身はまだ舞台を現代にしても通じるんじゃないだろうか。
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明治の政治思想家の本。酒好きの「南海先生」を2人の客(洋学博士、豪傑の客)が訪ねてきてそれぞれの視点・思想から国のあるべき姿を論じ、意見を戦わせているという構図。この3人の他に注釈が、さらにこれを聴いている聴衆(時にヤジ的な)が加わる。
当時の社会情勢や倫理観を踏まえておかないとわかりづらい部分もあるが、概ね普遍的な話しが展開している。それぞれの理想と現実が色濃く表れ、極論が展開される傾向もありつつ、しかし現実的な話でもある。
著者は各論客の意見を極端に位置付けながらも、当時の国民に様々な視点から物事を考えるよう啓蒙する狙いを持っていたのかと思える。
映画やドラマ、小説にも「当時の社会情勢」という注釈が入るのを良く目にする。昨今の作品も何十年か先には同じように「当時の」とつくこともあるんだろうか、なんてことも考えてしまった。
Posted by ブクログ
1.この本を一言で表すと?
平和主義と武装主義の議論を対話形式でまとめた本。
2.よかった点を3~5つ
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2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・なぜ対話形式の内容になっているのだろうか?
・立憲制と民主制を区別しているのはなぜだろうか?
・洋学紳士は「狂暴な国は決してないことを知っています。」(p73)と言っているがそんなことはないということは明らかだ。
・豪傑君の理屈は現代社会では通用しない。
・欄外の「眉批」はどのように捉えればいいのかわからなかった。
3.実践してみようとおもうこと
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5.全体の感想・その他
・最後の南海先生がまとめた内容は当たり障りのない内容で意外だった。
・解説を読んで大事なんとなく著者の言いたいことはわかった。19世紀後半の日本において日本がいかに生き延びるかをよく考えた結果なのだと思う。
・この本が書かれた明治20年頃にブランデーがあったのは知らなかった。
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明治時代に、このような知識人がいたということを知れただけでもまず読む意味があった。
大正から令和の時代の今までの歴史を振り返ると、その慧眼に驚く。
Posted by ブクログ
大酒飲みの南海先生の家に、自由平等・絶対平和の追求を主張する洋学紳士君と軍備拡張で対外侵略をと激する豪傑君がやってきて、それぞれの主張を述べて南海先生も持論を述べ、夜が明けて紳士君と豪傑君が帰るまでの話。
物語が書かれた時代というところをイメージできた方が、それぞれの主張の背景みたいなものがリアルに感じられて面白いのかも。
2人の対極な、でも極端であることは共通している主張も、のらりくらり話を聞いていた南海先生の話す2人よりマイルドな持論も、それぞれなるほどなと思う部分もあるし、現代はこうなってるよって3人に教えてみたい気持ちにもなった。
Posted by ブクログ
翻訳が分かりやすくてすいすい読めるし、想像以上に書かれている内容が今読んでも古びておらず面白い。(これが明治20年(1887年)時点で書かれていた驚き…)もちろん原文も収録されてます。
豪傑君、西洋紳士君、南海先生の3名による正解のない議論(あえて読者に「そこ」を考えさせる構成)に加え、脚注と解説で補足された事項を踏まえ、もう一度ゆっくり咀嚼して読み直したい1冊でした。