篠原勝之のレビュー一覧
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ついにご開帳になった天狼院プレゼンツ「糸井重里秘本」の中身。
力がある作品なので、夢現の境目にいるときなんかにこの本の内容がリフレインしてきてちょっと憂鬱な気分になる(笑)
僕は昭和という期間を6年ほどしか過ごしていないけど、記憶の片隅の方にある昭和の風景をなぜだか思い出さずにはいられなかった。
物心つく前に引っ越したはずの団地の風景、まだ色がなかった年代物の白黒テレビ、ランニングとステテコ姿のジイちゃん。
特別うちの家が貧しかったわけではないと思うのだが、あの頃はまだ物を所有することへの憧れみたいなものがあったように思う。我が家の14インチのブラウン管が24インチのトリニトロンになった -
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熊さんこと篠原勝之の、回想を交えた日々の暮らしについて。私小説なのかドキュメントなのか。ところどころわからない。
父の死から、猫のこと、母親や山梨の仲間などを短篇形式で綴る。ところどころ、海外での活動についても語られるが、そちらはあまり地に着いていない風で、自分の本拠地に戻ってくる。
ジフテリアで聴覚と嗅覚を失い、金は有るだけ作品につぎ込むという、破天荒な生活は、タモリ等と80~90年代にタレントとして活躍していたときを知っていると、ちょっと意外な感じがある。
タレントということで、はじめは差し引いて読み始めたが、語彙も相当有るし、何よりも文章の流れに力があるので、よく出来た小説のように -
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鉄のゲージツ家・クマさんこと、
篠原勝之さんの自伝的小説です。
17歳で、育った北海道は室蘭の家を出て上京し、
人生の苦みをたくさん味わってもきたクマさんの、
ふんどし一丁の自分をあらわしたようでもある、
連作短編の私小説でした。
重厚長大でも軽薄短小でもなく、
ぎゅっとエネルギーを秘めた、
質感のある物質を感じさせるようでもある。
そして、それこそ、鉄の芸術作品の、
赤錆に感じさせられる渋みみたいなものと、
人生の錆からでる苦味みたいなものとが、
ミックスされているような文章と内容だと
感じました。
全部で八篇なのだけれど、
最初のお話からしてじんわりとおもしろく、
最後のお話を読み終 -
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ネタバレゲージツ家のクマさんこと篠原勝之の自伝的小説。父親からのDVから逃れるために17歳で北海道を家出し、肉体労働、結婚、家族離散、借金、愛猫、スキンヘッド、母親の痴呆、そして、実弟のたかりと死。鉄とあいまみれる連作集。
目がなくなっちゃうほどニコとした笑顔が印象に残る人だけど、こんなに凄まじい人生を送ってる人だったのか。過剰な修飾をおさえた文に、クマさんの感情が乗り移ってるかのようだった。クマさんが自分の子どもに手をあげた時、ああDVって次の世代にも連鎖してしまうものなのかしらと思ってしまった。絶望したクマさんはすぐに一家離散させたけども。ただ、読み終わった後はなぜか爽快な気分になれた。 -
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かつて捕鯨で栄えた港町に住む洋は両親の別居により、母親の実家のミカン山で暮らすことになる。そこでの生活に馴染めない洋は、1年後の夏に故郷の町を目指してマウンテンバイクUMIのペダルを漕ぎ出すのだった。
少年の成長が実に真っ直ぐ真正面から書かれています。マウンテンバイクでの旅の話がメインかと思ったのですが、その部分はあっさりとしており、クライマックスも海の上で肩透かしをくらった感じもあります。しかし少年の心の象徴としてマウンテンバイクが素敵な役割を果たしています。
また実に読後感が爽快なんですね。それはいわゆる「悪者」を出していないからかも知れません。何かが変わってしまった母親にも、転校先でちょ