ついにご開帳になった天狼院プレゼンツ「糸井重里秘本」の中身。
力がある作品なので、夢現の境目にいるときなんかにこの本の内容がリフレインしてきてちょっと憂鬱な気分になる(笑)
僕は昭和という期間を6年ほどしか過ごしていないけど、記憶の片隅の方にある昭和の風景をなぜだか思い出さずにはいられなかった。
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物心つく前に引っ越したはずの団地の風景、まだ色がなかった年代物の白黒テレビ、ランニングとステテコ姿のジイちゃん。
特別うちの家が貧しかったわけではないと思うのだが、あの頃はまだ物を所有することへの憧れみたいなものがあったように思う。我が家の14インチのブラウン管が24インチのトリニトロンになった時の感動も同時に思い出す。
この本がどんな本かと言われると回答に窮するが、取り敢えず昭和の風景を思い出したことだけは確かで、ごく自然に描かれた死が、何人かの懐かしい顔と2匹の温もりを思い出させてくれた。
今は物質的には豊かな時代だなと思う。低成長がどうの、昔に比べて平均所得がどうのと言いながら、クーラーの効いた部屋でネットに興じながらポテチを食む。トイレは水洗だし、待ち合わせ場所を厳密に決めなくても概ね問題なく落ち合える。
僕らが生きる停滞する日本は、本当に貧しいのだろうか?
頭の片隅に蘇る、まだ貧しさが身近にあった時代の風景を思い出しながらそんなことを考える。勿論、深刻な貧困は未だなくなってないし、僕の見える世界だけで世の中を語ることは愚かしいこともわかるのだけど、この本を読んでそういう事を考えたことは記録しておくことは僕にとって価値あることなので、どうかご容赦いただきたい。