版元が文藝春秋だし、田中角栄だし、「最後のインタビュー」だし。
これは読むべきだろうと購入したのだが…。少々肩透かしだった。
ここ数年、角さんブームらしく、新刊書店では数種類の角さん本が
平積みになっていたのを目にしていた。本書もブーム目当ての便乗
本という感じかな。
政界引退後にマスコミをシャットアウトしていた角さんが、何故、
著者のインタビューだけを受けたのかは謎だけど、合計して13時間
にも及ぶインタビューは貴重ではある。
ぶっ通しでのインタビューではないので、話が細切れになるのは分か
るのだが、角さんの話をまとめた間に著者の推測を交えた解説が入る
のが邪魔だった。
ただ、角さんの考えていたことは伝わって来る。この人は本当に学歴
の人ではなく学力の人だったんだなと思う。だから、自分の頭で考え
る政治家だったのだろう。
学歴だけが立派な今の政治家を、角さんならどう見るのだろうな。
あ、それなら大川隆法先生が角さんの言霊を伝える本を書いている
から、それを読めばいいか。読まないけど…。
角さんもそうだが、政界のフィクサーだった児玉誉士夫だとか、スケー
ルが大きかったと思うのは、現在の私が年齢を重ねて年下の政治家さえ
いるのだけが原因だとは思えないんだが。
今のフィクサーって竹中平蔵とかか?ちっさいなぁ。
いささか期待外れの本書だったが、周恩来やフルシチョフとの会談の
裏話は面白かった。
「私が田中角栄だ。小学校高等科卒業である。諸君は日本中の秀才代表
であり、財政金融の専門家ぞろいだ。私は素人だが、トゲの多い門松を
たくさんくぐってきて、いささか仕事のコツを知っている。一緒に仕事
をするには互いによく知り合うことが大切だ。われと思わん者は誰でも
遠慮なく大臣室にきてほしい。何でも言ってくれ。上司の許可を得る
必要はない。できることはやる。できないことはやらない。しかし、
すべての責任はこの田中角栄が背負う。以上」
44歳の若さで大蔵大臣に就任した時、大蔵省幹部を集めての挨拶の
言葉。最後の一文、この言葉を言い切れる政治家が今もいるかな?