あらすじ
抜群の記憶力、発想、決断力、そして人情……
未公開インタビュー記録をもとによみがえる天才宰相の知性と魅力!
没後23年を経てもなお日本人の心を惹きつけてやまない田中角栄。
その角栄はロッキード事件発覚後、マスコミをシャットアウトし、「闇将軍」として権勢を振るっていたが、ひそかに13時間半ものロングインタビューに応じ、みずからの思いを世に出そうとしていた。当時、海外通信社の記者を務めていた著者は、ロングインタビューに立ち会ったほか、約4年間、講演や会議における角栄の発言を記録してきた。
本書はそれらの記録をもとに、著者独自の目線で「天才・角栄」の政治理念を解き明かした作品である。
全編、角栄の名調子が冴え渡る。
「合理性だけを追求してきた日本の頭脳集団は、人間の本質を忘れている」
「総理大臣になってから『勉強します』は許されない」
「外交は“叩き上げ”同士で」
「道徳観のない政治家に人はついてこない」
「俺は自分の選挙区のことは5メートル単位で把握している」
「恋人の電話番号は手帳に書くな。手帳を見ながらダイヤルを回すのでは、恋の成就もおぼつかない」
現代日本の閉塞的な経済状況や、東アジアの安全保障危機をズバリ予言している指摘もあり、角栄の慧眼には驚くばかりだ。人情の機微を知り尽くした滋味深い言葉も、読む人の心にしみわたる。
脳梗塞に倒れる10カ月ほど前におこなわれた最後のインタビューでは、政治と人生に対する達観した思いを吐露しており、枯淡の境地を感じさせる。
どこから読んでも面白くためになり、すべての人に勇気を与えてくれる一冊である。
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Posted by ブクログ
1994年まで新潟に暮らしていた、それも田中角栄氏の選挙区にいた。その頃は選挙権がある歳ではなかったが、精力的な政治手腕とロッキード事件による逮捕を比較的近い位置で見ていたのかもしれない。だからこそ、どういう事を語っていたのか知りたくなり本書を手に取った。政治の裏の裏までは理解しようがないが、本書を読む限り、先を見据えた政治家だったと、原子力政策など裏目に出たものもあったが、論理があり決定、実行した人だったと感じる。
Posted by ブクログ
版元が文藝春秋だし、田中角栄だし、「最後のインタビュー」だし。
これは読むべきだろうと購入したのだが…。少々肩透かしだった。
ここ数年、角さんブームらしく、新刊書店では数種類の角さん本が
平積みになっていたのを目にしていた。本書もブーム目当ての便乗
本という感じかな。
政界引退後にマスコミをシャットアウトしていた角さんが、何故、
著者のインタビューだけを受けたのかは謎だけど、合計して13時間
にも及ぶインタビューは貴重ではある。
ぶっ通しでのインタビューではないので、話が細切れになるのは分か
るのだが、角さんの話をまとめた間に著者の推測を交えた解説が入る
のが邪魔だった。
ただ、角さんの考えていたことは伝わって来る。この人は本当に学歴
の人ではなく学力の人だったんだなと思う。だから、自分の頭で考え
る政治家だったのだろう。
学歴だけが立派な今の政治家を、角さんならどう見るのだろうな。
あ、それなら大川隆法先生が角さんの言霊を伝える本を書いている
から、それを読めばいいか。読まないけど…。
角さんもそうだが、政界のフィクサーだった児玉誉士夫だとか、スケー
ルが大きかったと思うのは、現在の私が年齢を重ねて年下の政治家さえ
いるのだけが原因だとは思えないんだが。
今のフィクサーって竹中平蔵とかか?ちっさいなぁ。
いささか期待外れの本書だったが、周恩来やフルシチョフとの会談の
裏話は面白かった。
「私が田中角栄だ。小学校高等科卒業である。諸君は日本中の秀才代表
であり、財政金融の専門家ぞろいだ。私は素人だが、トゲの多い門松を
たくさんくぐってきて、いささか仕事のコツを知っている。一緒に仕事
をするには互いによく知り合うことが大切だ。われと思わん者は誰でも
遠慮なく大臣室にきてほしい。何でも言ってくれ。上司の許可を得る
必要はない。できることはやる。できないことはやらない。しかし、
すべての責任はこの田中角栄が背負う。以上」
44歳の若さで大蔵大臣に就任した時、大蔵省幹部を集めての挨拶の
言葉。最後の一文、この言葉を言い切れる政治家が今もいるかな?