森岡孝二のレビュー一覧
-
-
-
Posted by ブクログ
大学生に対して,「社会人として働く意味」を,具体的かつ実証的に伝えるための良書。著者の専門は,企業社会論や労働時間論。過労死の問題や対策にも専門研究者として取り組んでいる。それだけに,労働に関して集積された指標は豊富で,自らアンケートで収集されたマイクロデータも紹介されている。
就活がいかにビジネス化しているか,また「就職協定」と言いつつ,いかにルールがないかを謳い,雇用や労働組合とは何か,時間給や年給とは何かをわかりやすく解説したうえで,最後に就職に求められる力と働き方を問う。その中で,とくに強調されているのが労働知識の修得であり,労働者が法律や制度によっていかに保護されているかを知って -
Posted by ブクログ
「働きすぎ」を導く要因を、企業を取り巻く環境、働き方に関する環境、商品市場をめぐる環境、労働市場をめぐる環境という四つの側面から分析し、さらに「働きすぎにブレーキをかける」ための提言を行っています。「提言があればよい」というものでないことはもちろんなのですが、本書の場合は前段の分析が十分に行われているため、提言もうなずくところが多いものとなっていると思います。日本では、賃金・労働環境の面でもジェンダー差別が非常に強く、そのことが30〜40代男性の労働強化につながっているという点については、私も最近考えていたところでした。(20060128)
-
Posted by ブクログ
題名の「雇用身分社会」とは、筆者の造語であるが、筆者はそれを下記の通り説明している。
【引用】
パート、アルバイト、派遣、契約社員などの雇用形態は、いまでは雇用の階層構造や労働者の社会的地位と不可分の「身分」になっている。本書は、このように労働者がさまざまな雇用形態に引き裂かれ、雇用の不安定化が進み、正規と非正規の格差にとどまらず、それぞれの雇用形態が階層化し身分化することによって作り出された現代日本の社会構造を「雇用身分社会」と名づけて考察してきた。
【引用終わり】
1984年に15%程度強であった非正規労働者の比率は、バブル崩壊以降、増え始める。20%を超えたのが1994年。1999年に -
Posted by ブクログ
「○活」と略されるようになると、だいたい社会問題化しているような気もしますが、就活はまちがいなく社会問題ですね。
自分は団塊ジュニアの独身おっさんですが、その私が2023年にこの本を読んでもなるほどなと思わせてくれました。
読んだ時点より10年以上も前に書かれた本ですが、現在でもほぼ通用する内容と言うことを考えると、日本の雇用環境があまり変わっていないということなのでしょう。
ただ、当時と現在との違いで考えると、当時はブラック企業でも就職せざるを得なかったのが、現在は人手不足もあって、学生さんがブラック企業を敬遠してくれるようになったのは良いことのような気がします。
個人的には、雇用は流動化 -
Posted by ブクログ
以前働いていた職場でこんなことがあった。製造業派遣が解禁される前、請負として大量の非正規職の人達が定年退職者の代わりとして入ってきた。やっている仕事は正社員と大差ない。それまで皆仲良く助け合ってやって来た職場だったが、突然正社員に特権意識が芽生えて請負作業者を下に見るようになり、職場の雰囲気も殺伐としたものになった。『身分社会』が生じた瞬間だった。
雇用形態の差が身分社会の形成や差別にまで繋がっているという著者の認識は実に的を射ている。雇用を取り巻く歴史的状況も俯瞰することができ参考になった。
一つわからないのは、高額所得者を含む全ての所得階層で所得が減っているとすると、この20年間の僅かばか -
Posted by ブクログ
現在、関西大学名誉教授である著者が、2014年3月に定年退職する直前に構想が浮かび、昨年10月に発刊された新書。「雇用身分制」をキーワードに、日本の労働社会全体像を概観したことが特色(筆者談)としてあげられます。
「職工事情」「女工哀史」「貧乏物語」など、日本における資本主義が作られてきた過程の中で書かれた本の内容が紹介されていますが、今の労働実態をめぐる状況と比較しても遠い昔のことでなく、むしろ悪くなっているといえる現状に、恐ろしさを感じました。
非正規労働者が増えたということはそれだけ正社員が減らされたことであり、さらに縮小させられる方向と指摘。それに関連して、人材派遣会社パソナ関係者 -
Posted by ブクログ
最低賃金を上げ, 男女の雇用の差別を少しずつ無くしていくしかない。今のままでは貧困の連鎖が続いてしまう。株主資本主義の行き着く先は、欲望の最大化。
効率的な市場は欲望を最大化させるだけで, 人間的な尊厳を持った生活を万人に提供することはできないのではないか。自由競争は強い奴が勝つ仕組みであり、政府の人間が一部の大企業や機関投資家や銀行などのために規制緩和を続けているのは政治家としてどうなんだろう。
規制緩和の結果、一般市民に利益はあるのだろうか。裏で政治献金や賄賂をもらっているから,彼らに利益になるような政策を出しているのではないかと思ってしまう。
適正な規制と適正な規制緩和を考えるのが