中島隆信のレビュー一覧
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野球というゲームのルールから説き起こしてその非効率性を論じ、それが日本において如何にして甲子園という高校野球にとっての聖地とそこで繰り広げられる国民的行事を生み出したのか、その歴史と構造を競争性、教育性、文化性、非商業性という著者独自の視点から明らかにする好著。
高校野球は「重要無形文化財」高校球児は「特別天然記念物」と一見現在の高野連を揶揄するかのような表現があるが、全体を読むと100年の歴史の中で改善を重ねながら作り上げた甲子園を頂点とする巨大で精緻な仕組みに感嘆と敬意を抱いているように思う。その上で甲子園至上主義がもたらす弊害にも目を向け、プロ野球球団がユースアカデミーを設立することなど -
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【読書その35】内閣府の村木厚子統括官が、国家賠償金を長崎県雲仙市の社会福祉法人「南高愛隣会」に寄付し、障害を抱える累犯者の社会復帰支援や刑事司法制度の見直しに充てるための基金が創設されることになり、3月10日(土)にそのシンポジウムがあった。そのシンポジウムに参加し、改めて勉強しようと思って手にとった本。著者は、「障害者の経済学」で有名な慶応大学の中島隆信氏。
人生に挫折はつきもの。人は、挫折を繰り返し、それを乗り越え、その都度、自分自身を見直し、人生をやり直していく。
しかし、犯罪を犯した人は、それが一度であっても一旦「前科者」のラベルを貼られると、人生のやり直しをするのは非常に難しくなる -
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ネタバレ障害者について議論するとなると大概、同情や善か悪かの評価が加わってしまう。
著者はそんな善悪論にとらわれない経済学の視点から冷静に障害者の実態や社会の改善点を解説してくれている。
「障害者を作っているのは私たち自身である」という主張が印象的。
車椅子利用者に障害があることは一目でわかるが、バリアフリー化が進めばスムーズな移動が可能となり、障害とみなされなくなるかもしれない。
働きたくても働けない障害者が社会に進出することは少子化で人手不足が深刻になっている現代に良い影響を及ぼす。
社会が障害者に対する偏見や特別に構えようとする意識を少しずつ変えていけばお互いに住みやすい環境ができていくはず。 -
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本書は、NPO(非営利企業)のガバナンスの解説書です
組織というものは、ある程度は個人の自由を認めつつも、組織としての方向性をきちんと定め、メンバーがそれに従うための工夫をする必要があります。
NPO について経営学の視点で論ずるに、その基礎となったのは、P・F・ドラッカーの「非営利組織の経営」です。
みんなのものは誰のものでもない
誰でも自分の所有しているものは大切に取り扱う
公共物は私的所有権がないので、大切に扱われない可能性が高い これを、共有地の悲劇といいます
所有者のいないものは、大切に扱われない
情報が不完全なサービス
医師は患者に比べて医学知識が豊富なので、両者が向かいあっ -
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経済学がテーマの本ではあるが、日本における犯罪者への処遇、刑罰や刑務所の内情、そして元・刑務所収容者への更生支援の実情も分かりやすく記載されていて法律を学ぶ人間にも大変勉強になる本である。
少額の窃盗でも繰り返せば懲役刑になる可能性がある。300円のパン1個を何度も盗んだ窃盗犯を刑務所に収監し、半年間懲役刑に就かせ、釈放までにかかる費用は約130万円ほど(本書刊行時、2011年)そのお金は税金から支払われる。
犯罪を犯した人間が社会に与えた損害とその犯罪者を収監し、懲役刑を科して何年も刑務所で生活させるために必要な費用。後者が前者よりも重くなれば刑罰の意味を考えなければならない。しかし日 -
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ネタバレno one left behind(SDG)という意味では、確かに、元受刑者の問題は、考えなければいけない問題ですね。integration、難しい。
後半、刑務所の経済学、と言いながら、単なる各論の読み物になってしまってない?!と思いながらつらつら読んでいたのだけど、最後の最後で、経済学で重要な「比較優位」の原則に照らすなら、総合職ばかり雇ってる場合じゃないし、技能別にしてそういう人も入りやすいようにすべき、という論に戻ってきたので、溜飲が下がりました(笑)。
一番の衝撃は、更正制度回りの諸々が、まさかのボランティアの方々や寄付金で賄われてやっと回っているという点。 篤志家すぎる.. -
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センバツの合間に。センバツが選抜であり優勝しても全国制覇でも日本一でもないことを知りビックリしました。よくNCAAと高野連のマーケティング力の違いがスポーツビジネスサイドからは指摘されますが、それはアマスポーツとして同一のフィールドに立つものではなく、スポーツと部活の違いとしての集金力の違いなのです。そう、本書は「重要無形文化財」としての高校野球の特殊性をこと細かに指摘しています。ただ、それは単純な高野連批判ではなく、野球とベースボールの違いまで考えさせるものです。そういう意味で第5章の沖縄の野球についての取材は地域スポーツとしての野球の可能性を感じさせるものでした。書名である「高校野球の経済
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ネタバレ本書は障害者をめぐるさまざまな問題を経済学という分析道具で串刺しにし、読者にできる限りわかりやすい形で解説したものである(p.2)。
中島隆信氏は計量経済学を専門とする経済学者で、「大相撲の経済学」、「お寺の経済学」、「オバサンの経済学」といった斬新なテーマの本を数々執筆している。そんな著者が今回テーマにしたのは「障害者」である。障害者をめぐる法制度や置かれている現状や課題を丁寧に解説し、経済学的視点からの解決策を述べている。
丁寧な取材にもとづいて執筆されたということがよくわかる本だった。ETV特集『生きづらさに向き合って~ある精神科クリニックの挑戦~』(NHK、2014/11/15日