阿古智子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最近は各国の貧困層に関する本を選んで読んでいる。
一方で「潤日」などの中国の富裕層に関する本も読んだので、中国の貧困層について学ぶために読んでみた。著者は新聞や雑誌などでよく見かける現代中国の専門家である東大教授である。中国の現状についても、自分の足で取材するし、中国の言論人とも交流が多くあるようである。
さて、この本であるが最初は売血によるHIV感染がどのように貧しい地域に広がり、その問題に対して感染者が捨てて置かれる様子が報告される。中国は日本の高度成長期に比べて10倍くらいのスピードで急激に発展しているので、法整備、意識、インフラなどが歩調をとれておらず、また、中央共産党、地方政府、集体(政治的なグループ)、会社組織、血縁などの様々なセクターがありそれぞれが互いを気遣うことなく勝手に活動している。その中で貧困層はなんとか生きていくために、また貧困から抜け出すためにさまざまな努力をするのだが、それもまたさまざまな事情で翻弄される。農民と都市という戸籍の問題、社会主義経済という矛盾を孕んだシステム、そして自由でない言論空間、それから抜け出そうとするネット上での現論など、さまざまな問題とそれに対する対策や状況がよく調べられて書かれている。
さまざまな問題の要因は信頼関係が育たず、拝金主義が横行しているのが根本にあるような気がした。
また「貧者を喰らう国」という書名はおそらく著者は意向とは違うんだろうという気がした。確かにひどいところが多いが、変われるのではないかと希望を持っていることが伝わってくるからだ。
最後に中国の問題は決して対岸の火事ではなく、日本も此岸の問題として考えなければならないことが指摘されている。
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Posted by ブクログ
良書。
いわゆる「反中」「嫌中」本ではなく、筆者のフィールドワークに基づき、中国が抱える問題について、丁寧に書かれた本。
中でもやはり、中国独特の戸籍制度の問題がある(「農民工」、「土地制度」など)。
選書版あとがきにあるように、お互い冷静になって外交をしなければ、共有圏をうまく活かせないのではないかと思う。
個人的には、副題にあるように「中国格差社会からの警告」とあるように、制度は違えど、抱えている問題は日本も同じであり、社会的な大きな歪みを抱えている。「農民工」、つまり農業を捨て(地方の疲弊)、都市に出て、低賃金で労働し(格差問題)、…というのは、日本が直面する「地方消滅」の問題と重なって見えた。 -
Posted by ブクログ
現代中国の格差社会の闇、深いなぁ…。
おいおいそりゃちょっと、と言いたくなるような腐敗っぷりの事例が本書の中には満載です。
中国の格差問題研究としては草分け的な研究者さん(本書をおすすめしてくれた友人談)による、非常にわかりやすく、丁寧に書かれた現代中国の暗い側面。
東京でもしばしば見かけるような、日本に観光に来る中国の方は13億人のごく一部。中国の特に農村部では、日々辛い暮らしに耐えている人々の姿があることを本書で知ることができます。
読み進んでいくと、仮に完全フィクションのマンガだったとしても「そんな悪役キャラ実際には絶対いない!」と突っ込むレベルの予想の斜め上な感じのお役人やお金持ちのみなさまが登場します。
例えば、不衛生な病院で採血されてHIVに感染して支援を求めてきた人たちに「お前らが全員死ねば、問題は解決する」と言い放った自治体のお偉いさん。
彼女とドライブ中に女性をひき逃げした後、ナンバー見られたかもと思って引き返して、負傷した女性を助けるのかと思いきやナイフで刺し殺した大学生(車は親に買ってもらったとか)。
被害者サイドも、目先のお金のために安い価格で手持ちの土地を売ってしまう農民、自分の畑から排水したいと公道を壊しながら掘り進む農民(しかも村のチーム長?的な立場)と、色々と心配な気持ちになります。。
後半には少し希望がある話で、インターネットの発達によって市民が権力を監視するくだりがあり、最後の第7章は今後中国はどうなるのかを考察しています。中国の憲法や制度から紐解いていて、ほぼ素人の私でも非常に理解しやすく感じました。
※中国憲法にも言論の自由の規定ってあるんですね。。
真面目に興味深い本でした。悪平等は良くないと思うけど、ここまでの格差社会は。。
ただ、都市部の住民は農村部の犠牲のもとに暮らしが成り立っていることをあまり認識していない、という調査結果は、もしかすると今、自分も誰かに対する加害者になっているんじゃ?という疑念を思い起こさせます。