近藤宗平のレビュー一覧
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発がんの危険率に”安全量”はないと考える直線閾値なし仮説の考え方は、1985年の最初の国連科学委員会で、遺伝学者が主張して、医学者の反対を押し切って国際的合意として採用され、以後、国際放射線防護委員会(ICRP)はこの考え方を基本としている。
池田信夫さんのブログ2011.04.26には、ICRPは「この仮説は放射線管理の目的のためにのみ用いられるべきものであり、すでに起こった微量の被ばくについてのリスクを評価するために用いるのは適切でない」と警告していると紹介してあった。
本書の様に、人体への放射線の影響を正しく理解し評価することが大切だが、日本では何故、魔女狩り的な新興宗教的な拒否反応をも -
Posted by ブクログ
著者は原爆投下後の広島で、実際に被曝サンプルを集めて調べたことをスタートとし、生物への放射線の影響を研究してきた、物理学と遺伝学と基礎医学の学者。
原爆被曝の急性症や放射性物質事故の白血病やがん発病などの統計と、胎児被曝も含む動物実験から、「直線しきい値なし説はどうも当てはまらない、それはなぜか?」を、細胞分裂とがん発病の仕組みに始まり、放射線や紫外線等の刺激で傷ついたDNAがどのように自身を修復するか、あるいは不完全な複製だった細胞が死滅するか、それらがなぜ細胞ががん化することにつながるのか、をタンパク質の分子レベルまで遡って説明する。
専門的で難しいところも敢えてそのまま、今分かってい -
Posted by ブクログ
「放射線の体に対する影響には閾値ががない」「放射線の毒性はDNAを損傷させる点にある」などの仮説(通説?)が誤りであることを論証していて、素直に受け入れ難いような気持ちの反面、少し安心させてくれる本
索引や参考文献の記載もあり、著者の自説に対する自信や出来るだけ使いやすい本を作ろうとする著者の誠実さが表れている
一気に読むにはしんどいが、ゆっくりじっくり読めば素人でも何とか理解できる
ただし、内部被曝についての論証が十分でないこと、チェルノブイリ原発事故の影響と考えられている子供の甲状腺異常について、「見かけ上の発病率の増加」にすぎないと断じる点は、不満が残る。特に後者については科学的な