安田登のレビュー一覧
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著者は、初めての能で「松風」を鑑賞中、水面に浮かぶ月の風景を幻視してから能にハマり、能楽師にまでなられた方。私も初めての能で、著者までではないが、鑑賞中時間を忘れてトリップした経験があり、能は従来のエンタメとは何か本質的に違うのでは、と思ったことがあったので、興味深く本書を読めた。
入門書に相応しく、能楽の歴史や、特徴や仕組み、効能などがカバーされていた。特に興味深かったのが、漱石や芭蕉、三島由紀夫や村上春樹などの現代の作家や漫画家の作品に見られる能からの影響。それら影響を受けた作品を改めて読んでみたくなった。
最も印象的だったのが、現代の映画などを私たちはお金を払って「消費」する感覚で鑑 -
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新しい何かを学ぼうとしても、いきなり専門書に手を出すのはハードルが高い。そもそも、需要と供給の原則通り、専門書は価格も高い。
そんな時、NHKの100分de名著シリーズは、非常にありがたい。当代切っての学者や評者の解説を、まあ普通の版元なら無理だよねというリーズナブルなお値段で、気軽に手に入れることができるのだ。
本書は、摩訶不思議な能楽師、安田登先生が軍記物の名著『平家物語』を解説しておられる。「祇園精舎の鐘の声」で始まる名調子を大半の人は口ずさむことができるだろうし、重盛の「孝ならんと欲すれば忠ならず」という台詞をご存知の方も多いだろう。信長が好んだことで知られる幸若舞や能の『敦盛』は -
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中国史を少しずつ齧るにつれ、避けて通れないと感じるのが司馬遷の「史記」である
どうしても敬遠してしまうのだが、でも気になる気になる…
少しだけこの世界を覗いてみたい…
そんな自分に天からの思し召し
能楽師の安田登氏が解説
何度も目からうろこを落としてしまった「異界を旅する能」以来だ
とても楽しみである
司馬遷の「史記」は三皇五帝と呼ばれる古代の伝説の王の時代〜前漢まで
2500年以上の歴史が描かれる
歴史書には、一般的な出来事を時系列に書く「編年体」と人物を中心に書く「紀伝体」がある
司馬遷はこの「紀伝体」で描くことによって、直線的な歴史ではなく、歴史に物語が生まれ、たくさんの -
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古事記、論語、奥の細道、中庸
4つの古典のメッセージをわかりやすくまとめている
古事記
描かれる死生観がとても興味深い。昔は因果の関係が世になく、死は魂が一時的に離れたものと捉えていたため、死に対する恐怖がなかったそう。
因果や時間については、映画『メッセージ』をみてから関心を持っているのでもっと深掘りしたい。
論語
齋藤孝さんの『声に出して読みたい論語』に載っていたものも紹介されていたが、解釈の違いがおもしろかった。こっちの解釈の方が腑に落ちたので安田さんの『論語』を読んでみようと思う。
奥の細道
芭蕉は『俳諧的生活』を重んじたそう。俳諧=和気あいあいとする笑いであり、俳諧的生活=和と -
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面白い。母語である日本語で伝わらない、誤って伝わってしまうのは何故か、を非常に短く例を挙げてくれている。
本書で最も感銘を受けたのは正しい日本語がないというのを専門家から聞けた事だった。的を得た、的を射たや了解は失礼なのか、などネットミームでは様々な話が挙がっているが筆者の見解としてはどちらでも良いし、好きな方を使えば良い。言葉というのは日々変化しており、誤読されたものが広まったりする事も言葉の揺らぎとしてあるものだという認識だ。
しかし、読書好きとしてはやはり好きな言葉遣いがあり、それこそ正しいとして広まってほしいものだが、、、。
筆者は前作は難しいために売り上げが芳しくなかった事から本書で -
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ネタバレ世阿弥の風姿花伝で能に触れた後、能のことをより勉強したいと思い購入。
面白いなと思ったのは世阿弥の「初心忘るべからず」という言葉の解釈である。本来は物事を始めたときの気持ちをずっと忘れるなととらえられがちだが、本来世阿弥が意味した意味というのは「折あるごとに古い自己を断ち切り、新たな自己として生まれ変わらなければならない」ということである。これは知らなかったため、「はぁ~」と勉強になった。実際、室町時代の能と幕府に保護され式楽となった江戸時代、明治時代以降、戦後と4つのフェーズで能は大きく変化しており、形を変えながら生き残ってきたのはまさにその「初心忘るべからず」を体現してるなと感じた。
ま -
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ネタバレ著者自身がワキ方の能楽師でいらっしゃるため、「能というのはこういうものだよ」とレクチャーしてもらえる内容ですが、観劇を始めたばかりの現時点では「そうか、そういうものか」と知識として受け入れる状態です。
しかし、観劇の回数が増え、能の謡を習ってある程度年数が経った後にこの本をもう一度読めばより腹落ちするのではないかと思える、自分の能楽の経験値を測れる本のような気がしました。
内容として特に興味をそそられたのが、主人公の武士が修羅道や地獄に堕ちるストーリーの多い能を江戸幕府が庇護した主目的は「敗者の鎮魂」であった、そして幕府から与えられた鎮魂、それも「源義経の魂を鎮める」というミッションが芭蕉の -
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能や論語などの古典をベースに、教養や知性についての対談を書籍化したもの。タイトルに変調とあるように、一般常識では見られない解釈や解説が非常に面白い。「不惑の惑は、本来は域であり、枠にとらわれるなという意味」「教養とは、外部に開かれた小さな窓枠。内部の言語のみで説明できるわけがない」「笑いは割らい。その場の雰囲気を割って変化させるもの」「自由とは不安定。四つ足から二足歩行となり、さらに飛ぼうとしている」「雨粒を感じようとする動作を制御して行うことはできない」「矛盾はあって当然。最強の矛があったら世界は終わる」「事象の背後に見えないパターンを見いだすことが戦略」