倉野憲比古のレビュー一覧
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吸血鬼・ストリゴイを信奉する異端の宗教、というだけでいかにもおどろおどろしたホラー的な雰囲気が漂うホラーミステリ。怪奇趣味や心理学の薀蓄もいろいろあって、好きな人にはとっても楽しめます。ちょくちょくホラー映画ネタが登場するのも、好きな人にとっては嬉しいところ。
怪奇趣味のわりに、事件は案外地味? そもそも他殺なのか自殺なのか、というような事件なので、派手派手しい現場ではないのですが。それでも全編に漂う陰惨な雰囲気は印象的。
ミステリとしても、考えさせられます。ラストで真相の解釈が人によって分かれる点も、はっきりしていないといえばいえないのだけど。ホラー好きな人はホラーの、ミステリ好きの人はミステリとしての、好きな真相を選べる気がします。私は……やはりホラー的だったのが好きかも。だけどホラーじゃないと解釈したほうが、より恐ろしく思えてしまうのですけどね。 -
Posted by ブクログ
「葉桜の季節に君を想うということ」「イニシエーション・ラブ」の次はこれを読め!
と帯に書いてあったので読んでみたんですが、その2作品とは全然違うと思いました。
結末も驚天動地とまでは言いがたく…(途中から何でもアリになってしまって、もはやどんな展開も驚かなくなる)
ただし、帯にある2作品の系統の本格ミステリとして読まなければ、結構楽しめる作品でした。それはそれ、これはこれ。
最初あまりに登場人物が少なくてミステリとしてどうなるのかと思ったけど、なかなか意欲的な展開になって、トリックの微妙さ・世界観の薄さを勘案しても、全体的には面白く、最後まで読ませる力はあると思う。
私のような素人からすると、合間に語られる心理学とか精神分析の話はすごく興味深く読めたし、ミステリじゃない部分の評価のほうが高いかも。
ラストに不満があるものの、デビュー作ということも考えて、作者のやる気におまけの★4つ。(ほんとは★3.5のところ)
★
「黒死館なんて、作り自体は普通の探偵小説と変わらないけど、あのブッ飛び具合は他の追随を許さない。だって名探偵法水が何を言っているのか、読んでるこっちは全然理解できないんだから。でも物語はどんどん展開し、荘厳なカーテンフォール…一体何がどうなったのか、読者はアゴを外したまま置き去りだよ。読者をあそこまで突き放しているのに、なぜだかとてつもなく面白い。なんだかわからないが凄いものを読んだって感じでゾクゾクする。
この面白さって、難解なものを珍重するスノッブ精神のせいかとも思ったんだけど、どうもそうでもないみたいなんだ。うーん、どう言ったらいいんだろう。右も左も高く堅牢な壁に取り囲まれた、絢爛たる犯罪迷宮に、ぼんと孤独に放り出されたような、言ってみれば迷子の感覚というべきかな。『黒死館』『ドグラ・マグラ』は、この迷子の感覚が味わえるよね」
「すべてのものは原初の形態、つまり無機物へと回帰する。探偵小説においては、解決篇というかりそめの緊張低減ではなく、本来の状態――?未解決のままの混沌とした謎?という地点まで大きく戻らなければ、ウソだと思う。この世界は、いつだってわけのわからない謎また謎に充ち満ちているんだからね」
すべての有機体が、本来の無機的状態に回帰する基本傾向=涅槃原則
「人間の手によって産み出された探偵小説も、ひとつの芸術的有機体としての生命を持つならば、謎から解決へと直線的に進むのではなく、さっきも言ったように、謎からまた謎へと円還していかなければならない。これが探偵小説にあるべき、究極の涅槃原則だよ。すべてが直線的に進まねばならないというのは、近代的思考の誤謬以外の何ものでもないよ」 -
Posted by ブクログ
著者自身を思わせる主人公が敬愛する探偵小説作家「御霊神矢」が失踪直前に残した日本ミステリー三大奇書」に並ぶ「最期の奇書」として残した未完の作品「ナッハツェーラーの城」を引き継ぎ完結させんと御霊神矢の屋敷に向かうが、そこで待ち受けていたのは小説「ナッハツェーラーの城」の描かれたそのままの殺人事件だったというもの。
舞台となる屋敷や目の前で斬首されたのに姿が見えない犯人など「黒死館殺人事件」を彷彿とさせるし、作中の作品そのものが入れ子状に登場するのは「ドグラ・マグラ」、メタミステリや現実と虚構の境界が曖昧になっていく展開は「虚無への供物」や「匣の中の失楽」といった感じで、過去作に見られた変格推理ものへの著者の思い入れをすべて投入したといっていい作品。
好き嫌いの分かれそうな内容だが、悪魔主義やソドミー、ネクロファイルといった要素がやや表面的なフレーバーで終わってしまっている印象を受けるのが残念。登場人物がスノッブ過ぎるのが問題なのかなぁ・・・