川口葉子のレビュー一覧
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【読みはじめた理由】
学生時代は茶道部に所属していたが、茶道の本質や歴史についてあまり触れる機会がなかったため、この機会に詳しく知りたいと思った。また、茶道部で使っていた茶室で過ごしたあの安らぎの時間を懐かしく思い、それを感じ取れるものを探していた。
【読んでみて思ったこと】
「お茶の本」ではなく「本のお茶」という題名にもあるように、長い歴史の中で蒸留されてきた味わい深い精神文化の香りを楽しみ、安らぎと美の世界に思考をめぐらせることのできる本だった。繊細な言葉選びも心地よく、漢字のもつ雰囲気にも細かく注意を払って作られた、なめらかな文章に感じた。茶道の精神文化や美意識のうまみがぎゅっと凝縮さ -
Posted by ブクログ
川口葉子さんの視点を本を介しておすそ分け
京都 カフェと洋館アパートメントの銀色物語
「疎水のほとりに建つ、しだれ桜の花の色に染まった古いアパートメント。」
という冒頭の一行を読んだ瞬間、本を閉じました。
この本は「流して」読みたくない。じっくりと、その単語の意味
ひとつひとつを噛みしめながら読み進めていきたい、
と辞書をひもとき、「疎水」とは灌漑のためなどに切り開いた
水路だと知ります。
読み進めていくとその疎水の手掛かりになりそうな場所の記述が
出てきましたので、次は地図でその場所を確認し、その土地の
風景を文字から立体化させ、思いを馳せます。
次々と紹介されるカフェはどこも美しく -
Posted by ブクログ
「すいませぇん。いっぱいなんですぅ」
いつのことだっただろう。六曜社地下店を初めて訪れたときだ。河原町三条の交差点から文字通り地下へ降りる階段を降り切ると、もうそこは“店”だった。マスターと思しき人からそう断られた。
なぜだろう、
「なんだ、満席かよ」
とは思わずに、
「そうか、じゃあひと廻りした後でまた来てみるか」
自然にそう思った。
カウンターの向こう側にすっくと立ったその人の姿と物腰は、足を踏み入れた瞬間にもう私を虜にしていた。
小一時間後に席を得た。柔らかな京ことば、いつもなら無遠慮なはずがなぜだかここでは密やかな東京弁、パソコンを打つ白人、本を読む