斎藤成也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者の斎藤成也氏は、国立遺伝学研究所教授、東京大学大学院教授などを務める遺伝学者。進化に関しては、中立進化論の立場をとっている。
本書は、ダーウィンについて解説した前段と、ダーウィン以降の進化学を解説した後段に大きく分かれる。
前段では、①ダーウィンが生きた19世紀とダーウィンの生涯、②生物学、特に進化思想がダーウィンの出現までにどこまで進んでいたのか、③『種の起源』を中心に、ダーウィンが明らかにしたこと、提唱した仮説、④ダーウィンが研究した、進化学以外の分野である、珊瑚礁の生成理論、南米の博物学、土壌へのミミズの寄与、蔓脚類の分類、植物の研究など、➄キリスト教との距離を中心としたダーウィンの -
Posted by ブクログ
ダーウィンと現代進化学の紹介。前半では,ダーウィンの生涯と『種の起原』その他の著作をとりあげ,後半で進化論の基礎を解説。ダーウィンの進化論は,淘汰進化論で,これは生存に有利な突然変異が積み重なって,進化に寄与すると説く。一方,現在の主流は中立進化説で,突然変異の大部分は生存にとって有利でも不利でもなく,そういう中立的な変異の蓄積が進化をもたらしているとする。
淘汰進化論も中立進化論も,生存に不利な変異が淘汰されてしまうことについては共通している。有利な変異が主か,中立な変異が主か,という違いだそうだが,有利と中立の境界ってどこなんだろう?単なる線引の違いじゃないのか?なんて疑問も残ったが, -
Posted by ブクログ
科学史上の偉大な発見というものは、それが新たな学問分野を生み出すことによって、常に乗り越えてられていく宿命にある。我々は、その発見を前提として議論を進めることに慣れているから、現在の知識をもってその問題点を指摘することは容易である。それに対して、その発見がなぜかくも偉大であったのかを理解することは、難しい。当時の時代背景を理解することが必須だからだ。
したがって、本書は『ダーウィン入門』と銘打ってはいるものの、およそ普通の意味でのダーウィン「入門」ではない。筆者はそのことを自覚しているし、それこそが中立論者としての筆者の狙いなのであろう。けれども、この本を読んでも、ダーウィンを理解したことに -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
人類の祖先と考えられているラミダス猿人は、約六〇〇万年前にアフリカ大陸に現われた。
その後、アウストラロピテクスやホモ・エレクトスなどの進化段階を経て、現代人とあまり変わらない顔つきの人類が地球上に広く進出するようになったのは、二〇万年ほど前である。
現代人の遺伝子を調べれば、過去に人類が拡散した様子が、ある程度は復元できる。
こうして遺伝子DNAの分析を中心とする近年の分子人類学の研究は、次々に意外な事実を明らかにしつつある。
東アジアの、海に隔てられた一角を占める“日本列島人”の起源の謎に迫る。
[ 目次 ]
第1章 進化するDNA
第2章 遺伝子でつながる地球上の人々
第 -
Posted by ブクログ
分子生物学の知見をもとに人類のルーツを探るという、なにやらスケールの大きなテーマに惹かれて、ついつい購入してしまいました。ミトコンドリアDNAやマイクロサテライト、SNPなどなど、ゲノミクスにとってはおなじみのキーワードが人類学の枠組みに組み入れられていく様は、なかなか爽快ではありました。しかしながら、初心者に対するフォローが手薄なため、ゲノミクスの素養がない人にはおそらく何をやっているかよくわからないでしょうし、人類学的な結論についても、解説が多少粗雑でわかりにくいところがありました。そういう意味では、本書は興味と素養のある人向けの一冊ではないでしょうか。