デザインのお勉強。
■4つの基本原則
良いデザインの作品には必ず見られる基本原則の概要を次に示します。各原則を個別に解説していきますが、それらが実際には、互いに関連しているということを覚えておいてください。どれか一つの原則しか使わないということは、めったにありません。
コントラスト(Contrast)
コントラストの背景にある考え方は、ページ上の要素同士が単に「類似するのを避けるということです。もし要素(書体、色、サイズ、線の太さ、形、空きなど)が「同一」でないなら、はっきり異ならせるということです。コントラストは、ページ上で視覚を引きつけるもっとも重要な要因になることがよくあります。つまり、読者をまず読む気にさせるという働きをするのです。また、情報をより明確に伝える役割もします。
反復(Repetition)
デザインの視覚的要素を作品全体をとおして繰り返すことです。色、形、テクスチャー、位置関係、線の太さ、フォント、サイズ、画像のコンセプトなどを反復させることができます。反復は、組織化を促進し、一体性を強化します。
整列(Alignment)
ページ上では、すべてを意図的に配置しなければなりません。あらゆる要素が、ほかの要素と視覚的な関連をもつ必要があります。整列は、すっきりと洗練された見え方を生み出します。
近接(Proximity)
互いに関連する項目は、近づけてグループ化しなければなりません。いくつかの項目が互いに近接しているとき、それらは複数の個別のユニットとしてではなく、1個の視覚的ユニットとして認識されます。近接は、情報の組織化に役立ち、混乱を減らし、明確な構造を読者に提示します。
■近接のまとめ
いくつかの項目が互いに近接しているとき、それらは、複数のばらばらのユニットではなく、1個の視覚的ユニットになります。互いに関連する項目は、グループ化する必要があります。視線の流れを意識しましょう。どこから見始めるか、どういう道筋をたどるか、どこで見終わるか、読み終わったあとどこに目がいくか。紛れもない始めから紛れもない終わりまで、体の論理的な流れが目で追えるようになっている必要があります。
基本目的
近接の基本的な目的は、組織化です。ほかの原則も組織化に貢献しますが、関連する要素を近づけてグループ化するだけで、自動的に組織構造ができあがります。情報が組織化されていれば、読んでもらえる可能性が高くなり、覚えてもらえる可能性も高くなります。情報の組織化の副産物として、より魅力的(組織的)な空白(デザイナーの好物)を作りだすことができます。
実現方法
目をかすかに細めてページを眺め、視線が止まった回数を数えれば、視覚的要素の数がわかります。それが1ページあたり3〜5個を超えている場合(もちろん内容によります が)、近接によってグループ化して、1個の視覚的ユニットにできるものがないか検討しましょう。
避けること
ページ上に個別の要素を作り過ぎないこと。
要素間に均等の空白を作らないこと。ただし、各グループが関連する下位区分の一部である場合は除く。
見出し、小見出し、キャプション、画像などが、本文のどの部分に関連するかを、読者が一瞬でも迷わないようにすること。要素間の関連を、近接によって作りだすこと。
異なる性質の要素間に、関連を作らないこと。 関連しない項目は、離して配置すること。
ただ空いているという理由だけで、隅や中央に何かを貼り付けないこと。
■整列のまとめ
ベージ上のすべてのものを、根拠なく配置してはいけませんページ上のすべての要素が、ほかの要素と視覚的つながりをもつようにしましょう。
一体性は、デザインにおける重要なコンセプトの一つです。ページ上のすべての要素を一体化し、結び付け、相互に関連させるには、個々の要素を結び付け視覚的な綱が必要になります。ページ上の個々の要素が物理的に離れている場合でも、ただ配置のしかただけで、それらが結び付き、関連し、一体化されているように「見せる」ことは可能です。あなたが好きなデザインを見てごらんなさい。うまくデザインされた作品なら、最初はどんなに荒っぽく混沌として見えようと、そこには必ず整列の存在を見つけることができます。
基本目的
整列の基本的な目的は、ページの一体化と組織化です。その効果は、居間の床に散らばった犬のおもちゃを、あなた(あるいは犬)が、おもちゃ箱に片づけることによく似ています。
強い整列が、もちろんふさわしい書体と組み合わされて、洗練された表現、フォーマルな表現、楽しい表現、真剣な表現を生み出す主役になることはよくあります。
実現方法
意議的に要素を配置してください。物理的に離れていても、そろえることができるほかの要素を必ず見つけましょう。
避けること
同じページで2種類以上の文字ぞろえを用いないこと(たとえば、 同じページで使うようなこと)。
と(たとえば、中央ぞろえと右だろえき
フォーマルで静粛な表現を意識的に作る場合は別として、中央ぞろえにする癖をやめるために真剣に努力してください。中央ぞろえを選ぶなら、「とりあえず」ではなく、意識的に選択しましょう。
■反復のまとめ
デザイン全体をとおして視覚的要素を反復すると、孤立している部分が結び付き、作品が一体化され強化されます。反復は1ページの制作物でも役立ちますが、複数ページの文書では欠かせない存在になります。(複数ページの場合は、単に一貫性と言うことがよくあります)。
基本目的
反復の基本的な目的は、一体化と視覚的なおもしろさを加えることです。ページの視覚的なおもしろさを軽く見てはいけません。おもしろそうに見えれば、読んでもらえる可能性が高くなるのです。
実現方法
反復とは、一貫性のことだと考えてください。あなたはすでに、それを実践しているはずです。それなら、すでに存在する一貫性を、もう一歩進めましょう。見出しのような一貫性のある要素を、意識的なグラフィック・デザインの一部に変えてみましょう。それぞれのページの底と見出しの下に1ポイントの罫線を引いているなら、それを4ポイントの罫線に変えて、反復要素をさらに強調し、もっとドラマチックにしたらどうでしょう。
次に、ただ反復を作りだすためだけに、要素を加えることを考えましょう。番号付きリストがあるなら、その数字をもっと目立つ書体や白抜きにして、その出版物のほかのすべてのリストも同様にしてはどうでしょう。まず始めは、すでに存在する反復を見つけてそれを強化します。反復の考え方と見え方に慣れたら、情報の明晰性とデザインを強化する反復を「作りだす」ことを始めるのです。
反復は、服装にアクセントを付けることと似ています。ある女性がすてきな黒のイブニングドレスとシックな黒い帽子を身に着けているとしたら、赤いハイヒール、赤い口紅、小さな赤いピンで、服装にアクセントを付けることができるでしょう。
避けること
要素を、うるさく強迫的に感じるほどには反復させないように。コントラストの価値を意識してください(次章と、特に活字のコントラストを解説したセクションを見てください)。
たとえば、さきほどの女性が黒いイブニングドレスに、赤い帽子、赤いイヤリング、赤い口紅、赤いスカーフ、赤いハンドバッグ、赤い靴、赤いコートを組み合わせれば、その反復は、衝撃的で統一的なコントラストではなく、強迫的なものになり、焦点が混乱してしまうでしょう。
■コントラストのまとめ
ページ上のコントラストは、私たちの目を引きつけます。私たちの目はコントラストが「好き」なのです。同一ページに2つの異なる要素(2種類の書体や2種類の太さの線など)を配置するときには、それらを似せてはいけません。コントラストを効果的にするには、2つの要素がはっきりと異なっている必要があるのです。
コントラストは、壁の染みを隠すために塗るペンキの色合わせと似たところがあります。だいたい、同じではだめで、正確に同じ色にするか、それが不可能なら壁全体を塗り直すしかない のです。「ほぼ近い、が有効なのは、馬蹄と手榴弾だけだ」と、熱心な馬蹄投げプレーヤーだった私の祖父は、いつも言っていたものです。
基本目的
コントラストには、互いに密接に関連する2つの基本的な目的があります。一つは、ベージにおもしろみを作りだすことです。ページがおもしろそうに見えれば、読んでもらえる可能性 が高くなります。 もう一つは、情報の組織化を支援することです。ある項目から次の項目への論理の流れが、つまり情報の組み立てが読者に一瞬でわかるようになっているべきです。 コントラストを付けたせいで、読者を迷わせたり、焦点ではないものを焦点に見せてはいけません。
実現方法
書体の選択(この本の後半を見てください)、線の太さ、色、形、サイズ、空きなどでコントラストを付けましょう。コントラストを付ける方法は、簡単に見つけることができます。コントラストは、視覚的なおもしろさを加えるための、たぶんもっとも楽しくて効果的な手段でしょう。大切なのは強調することです。
避けること
コントラストを付けるなら、力強くいきましょう。太そうな線ともっと太そうな線とで、コントラストを付けようとしないことです。茶色の本文と黒の見出しで、コントラストを付けようとしないことです。よく似た書体を複数使ってはいけません。正確に同じでないものは、はっきり異ならせるのです。
デザインには、そして人生にも、全般的に通用する方針がもう一つあります。
それは、臆病になるな、ということです。
あなたのデザインに、そして人生にも、空白がたくさんできることを恐れてはいけません。
空白は目と魂が憩うところです。
■暖色対寒色
寒色は背景に「引っ込む」し、暖色は前面に「出る」