高田昌幸のレビュー一覧
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北海道新聞で道警の裏金追求のスクープを出した。著者を含むそのチームが、新聞社内の不祥事を材料に圧力を受ける。その後、チームで打った「泳がせ捜査」の記事が証拠がないとのことで撤回などを道警から求められる。著者らは抵抗するも、組織的にかけられる圧力により力を削がれる形となり、最終的には道警の意を汲む形で謝罪することとなる。
驚くべきことに「泳がせ捜査」の「真実」は当初の記事よりも闇が深く、単なる拳銃密輸の泳がせ捜査の失敗ではなく、拳銃輸入の摘発の代わりに覚醒剤の密輸を見逃すという取引を警察組織が行ったということであった。著者は、稲葉氏という元警察官の個人名を出してまでそのことを告発する。稲葉氏はそのことを自著でも暴露しているという。それでも、一度警察の軍門に下った北海道新聞は、対抗することがもはやできなくなっているのかもしれない。
著者は、「悪人はどこにもいない。どこにもいない」と書く。「悪人」はいないのに、結果としてこのような腐敗と不祥事が発生する。このことに対して少なくとも意識的でありつづけなければならない。 -
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2003年に発覚した北海道警察による裏金事件と、その後に起こった覚醒剤流出事件という大不祥事。その当時、北海道新聞社の社員として一連の取材指揮を執った高田昌彦氏による著書。
本作の内容は、事件当時に道警の総務部長であった佐々木友善氏が、警察を退職後に道新と出版社を相手に起こした、名誉棄損裁判の様子を記したものである。
道新に限らず多くの新聞社は、地元の警察から事件事故の情報を得ており、高田氏の言葉を借りると主従の関係が出来上がっている。その新聞社が警察の不祥事を約1年半連日のように取り上げたのだから、まさに犬が飼い主の手を噛んだような話だ。
裁判が結審した後にも記者個人を偽証罪で訴えるなど、佐々木氏の異常なまでの粘着質っぷりが恐ろしく印象的だった。佐々木氏は退官した自身を笹船、新聞社を戦艦大和に例えていたが、真逆の印象を受けたのは自分だけだろうか。
しかし、あまりにもイジワル爺さん的に描かれてしまった佐々木氏だが、約40年という警官人生の中では市民のために尽くした功績も少なくないハズである。できればそんなエピソードも少しは紹介してあげてほしかった。 -
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敗戦直後から今日までの調査報道を取り上げて記載している本である。どれもきっかけはちょっとした疑問、違和感であり、そのまま流してしまえば事件として取り上げられることもなく、修正されることもないまま慣例として連綿と続いていたかもしれない。最後の方で、「どこまで取材するかの壁は、外部からの圧力ではなく記者の心理的な障壁が大きい」と記者が語っている。延々と孤独な作業に耐える根気が必要だし、上層部の受け止めに対する忖度もある。頭のいい人ほど損得勘定が働いて避けるような気がする。この本に登場する記者や報道者の成し遂げてきた業績には、心から感服する。
権力に媚びるほうが見返りは大きい。大勢に味方したほうが批判されることも攻撃されることも少ない。その中で不正に怒り、主権を有する国民の権利を守って真実を明らかにする真のジャーナリストはいかにして生まれ育つのか、今はペシミスティックな展望しか見えない。せめて金のために、耳目を集める真偽不明の情報を拡散するユーチューバーは、こういう本を読んで恥を知って欲しいものだ。
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ネタバレ【130冊目】道警の裏金問題に対する道新の取材・告発記事、それをめぐる一連の出来事と、道新の謝罪広告掲載、道警OBによる道新らを相手取った訴訟。そして、こうした動きの背景にあった道新幹部による道警及びそのOBとの秘密交渉の暴露を内容とする本書。副題が印象的。
一時期集中的に報道された道警不祥事を整理するのにも役立った。
相関関係にあるいくつかの出来事が同時並行的に描写されているため(これは筆者の認識と合致するのだろう。また、記載をドラマチックにすることにも貢献している。しかし、本書における時系列を前後させるレトリックは、読者を混乱させることにも少なからずつながっているようだ。)、他のレビューには認識の誤りも見られる。私には、本書では下記のように書かれている。
▲道警の裏金問題:
道新→(記事にて告発)→道警
▲裏金問題対応時に本部長が総務部長を叱責したかなどに関する名誉毀損訴訟:
道警OB→(提訴)→道新、高田記者等
●薬物捜査の報道について:
道警→(訂正要求)→道新
道新上層部→(訂正要求・情報源明示要求)→高田・佐藤らの記者
道新上層部→(謝罪広告)→道警
●上記報道に関する道新の謝罪広告について:
道警、道警OB→(不満・訂正要求)→道新
こうして整理してみるといまいちよく分からないのは道警OBの佐々木氏の対応。当初は自身に対する名誉毀損に関する調査・謝罪要求を行っていたのにもかかわらず、薬物捜査の謝罪広告についての自身の不満を名誉毀損訴訟提訴の理由としている(ように本書では読める)。分析的に見れば論理必然的な関係にないはずの両者を混同しているからこそ、佐々木氏の対応が、道新に対する意趣返しのように解釈されるのではないだろうか(その当否は別として。)。
他のレビューには佐々木氏個人の要求・提訴と、道警による対応を混同しているものが見られる。私自身は、少なくとも母国語でなされる文章についてはその相関関係を正確に理解できる人間になりたいものだ。特に個人が主体なのか、組織が主体なのかという点は、本書が個人と組織の関係を主題の一つにしているからこそ、丁寧に読み解きたい。
他のレビューに事実関係を混同しているものがあるのは、本書全体が醸し出す「道警」だとか「秘密交渉」という言葉のおどろおどろしさや、それらに対する恐怖の念から来るのかもしれない。大衆とは往々にしてそうしたものにより冷静なマインドを失いやすいのだろう。だからこそ、「知ろうとすること。」ではないが、冷静に事実関係を見通そうとする姿勢を忘れない能力を意識的に身に着けなければ。
なお、文庫版ではなく、単行本版の方のレビューには良いものが多い。なぜなのだろう。
その上で。裏金問題と薬物捜査報道に対する謝罪広告について。
多くはここには書かないが、本書の記載にある「けじめ」だとか「セレモニー」だとかが主に道警幹部や道新上層部の認識に一番近い表現なのではないだろうか。人間や組織の関係性の生臭い部分がよく表されている言葉だと思う。 -
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北海道警の裏金問題に関する調査報道にまつわる裁判記録から明らかになった組織防衛の話。
道警側、道新側にも組織を守ろうとする人たちが登場する。組織を守れば、組織に守られると期待するが、結局組織は個人を切り捨てる。
組織と闘う個人の労力は並大抵のものではない。
自分に正直に生きる、正義を貫く、真実を追求することは実際大変なことだ。しかし、それでも勇気を振り絞ってやらなければならない時がある。
一番問題なのは、裁判にならなかったら、裏取引の事実がずっと闇の中にあったことであろう。
ほぼ不可能だと思うが、警察側からの視点でもこの事件を見てみたい。 -
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03年から北海道警察の裏金問題を一年半にわたり追究し,最終的に認めさせた北海道新聞が,道警に逆襲され屈伏するまでの一部始終。著書はその渦中にあった記者。
事件報道で食っているメディアが警察権力に切り込むハードルの高さに驚く。しかし「弱き一市民」として「読者を代表して」執拗にクレームつけるとか,告発本の細かい事実誤認にケチつけて名誉毀損訴訟を起こすとか,警察側のえげつなさ半端ないな。
一方で,文庫化にあたり最終章に加えられた秘密保護法批判の部分は残念。単に「メディアと権力」という構図でしか問題を捉えておらず,法律(案)の内容に踏み込んだ話はまったくない。実際に権力と対峙し,辛酸を舐めた著者にとっては,無理もない話なのかも知れないが,この部分の説得力はなかった。 -
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道警のそしきてな裏金作りを調査報道で暴いた北海道新聞が道警の反撃(捜査情報を流さない、裏付の甘かった報道への逆捜査、名誉毀損訴訟)の前に屈し、調査報道の中心だった著者をスケープゴートに手打ちをしようとした裁判の背景の当事者の手による告発ルポ。
もちろん第三者視点から見たときに、著者が強引な記者だったり、記事の書き方がセンセーショナリズムに偏るなどのことはあったとは思うが(だいたい記事なんて半分創作というか都合のいい部分使って書きたい結論に合わせて書き抜くだけだし)、それでもこの中身が事実なら(まず事実だろう)警察と新聞の腐敗の闇の深さに茫然とせざるを得ない。
組織維持の前に正義も使命も吹っ飛んでしまう官僚組織(新聞社上層部含めて官僚)の怖ろしさ。
著者が最後の方でエピソードとして書き加えた一般企業の内部告発者の「社長とその取り巻きの茶坊主どもを退任させたけど、結局後に座った連中もすぐ同じ顔になる」というコメント(大意要約)が胸に刺さった。 -
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調査報道とはジャーナリストが自ら取材し、本人及び媒体となった報道機関の責任の元に発表するものであり、その対義語に近いものは「発表報道」と定義している。その発表報道の端的な例として序盤で大本営発表のことに触れている。
戦後から2025年までの調査報道の中で代表的なものを、その内容や軌跡をダイジェストで挙げている。見聞きしたことがあるものから初めて聞いたものまで様々。いずれもジャーナリストが抱いた疑問や「不正は許さない」と、各方面からの圧力に屈しない強い信念によって、不正の追求や中には法改正にまで繋がった事例もある。
SNSなどで無責任な言説が溢れる現在。出所が明確で責任を持って発信する報道姿勢と、常に権力は監視しなければならないこと、疑問を持ったことには行動が必要だと思えた。 -
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読後に感じたのは、「正義はどこに?」という嘆きでした。
実名での執筆、これだけでも勇気と覚悟のいる作業だと思います。本書は、道警の組織的裏金作りをスクープした道新への圧力と、それに屈した記録です。悪いことをしていても必要悪とし、組織ぐるみの隠ぺいもトップの方針に従っただけと開き直る日々の妥協が組織のみならず個人の尊厳をも地に堕とす怖いお話です。さらに危惧されるのは、こうした問題がいたるところで提示されながら、警察組織の体質は変わっていないのだろうなと思わせる事実です。我々は素直に警察や裁判所などは国民を守る側だと信じていますが、権力サイドのトップの意向でいとも簡単に不正に手を染めてしまう聞き分けのよい職業人化してしまう事実はおそらくあらゆる組織が内包する危険性だと思われますが、であるからこそ最低でも司法と治安部門くらいは国民サイドの強固な砦であってほしいと願わずにはいられません。
その願いもむなしく、現在、安部政権下で政権の覚えめでたき黒川検事長定年延長が画策されています。
3権分立が建前の行政の権力者が司法のトップ人事まで介入・・なりふり構わない露骨なやり口にこの国は本当に大丈夫なのかと怒りすら感じます。
最後に、筆者について、Wikipediaから。
高田 昌幸(たかだ まさゆき、1960年 - )は、日本のジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授。元北海道新聞・高知新聞記者。
高知県立高知追手前高等学校卒業後、東京で新聞店従業員を経て法政大学法学部政治学科入学。卒業後、一般企業を経て、1986年北海道新聞入社。小樽報道部、本社経済部、本社社会部、東京支社政治経済部、本社報道本部編集委員、同部次長、東京支社国際部編集委員、ロンドン支局、東京支社国際部次長を経て、本社運動部次長。2011年6月に退社しフリーに。2012年4月に高知新聞に入社。社会部に所属。2017年3月に退社。同年4月より東京都市大学教授。
北海道拓殖銀行の破綻と営業譲渡、地元百貨店の乱脈経営、地元信用金庫の不正融資事件などを取材。
1996年、取材班の一員として「北海道庁公費乱用の一連の報道」で新聞協会賞、および日本ジャーナリスト会議(JCJ)奨励賞を受賞。
2004年、取材班代表として北海道警裏金事件取材(キャップ佐藤一、サブキャップ中原洋之輔、松本成一、林真樹、峯村秀樹、米林千晴、田中徹、青木美希、内山岳志、古田佳之、大出行秀)で新聞協会賞、JCJ大賞、菊池寛賞、新聞労連ジャーナリスト大賞を受賞。