-----------------少年は少女を守るため”殺人鬼”になる------------------
”女性の髪を切る”という行為に異常な執着を持つ、悪名高き殺人鬼の子孫である灰村切。
美しき”誰にも切ることが出来ない髪”を持ち”髪の女王”と呼ばれる武者小路祝。
このふたりが出会い。
誰にも切ることが出来ない”呪い”がかかった髪を”殺人鬼であった先祖の遺品”である鋏で切ることが出来てしまったが故に始まる殺し合いの物語。
殺人鬼が残した遺品。
愛用していた殺しの道具に”選ばれた”ものには”抑えられない殺人衝動”が宿ります。
そして。
その殺人衝動-----呪い-----を解く唯一の方法は”髪の女王を殺すこと”。
これらは全て初代・髪の女王が仕組んだもの。
殺人鬼たちと自らの子孫に与えた呪い。
2代目髪の女王である武者小路祝はそれ故に殺人鬼の子孫たちから命を狙われ。
そんな”髪の女王”に好意を抱いてしまった灰村切は”殺人鬼の子孫”でありながらも”髪の女王を守る騎士”としてその鋏を振るうことになる。
ボーイ・ミーツ・ガール。
好きになった女の子のために頑張る男の子。
しかし……殺人鬼。
自らの”呪い”を解くことよりも、たったひとりの女の子のために”殺人鬼”であること、その”呪い”を受け入れ、他者を殺し続けることを選んだ男の子……
殺人衝動をなんとか抑えるための代替行為が作中でいくつか登場します。
”断裁分離のクライムエッジ”に選ばれ、鋏を愛用している灰村切の場合は””女性(祝)の髪を切る”ことによって、殺人衝動を抑えているのですが。
”代替行為が出来なくなってしまった場合”を示唆する描写も作中に登場します。
また”代替行為でも殺人衝動を抑えられなくなる可能性”も。
仮に祝を失ったら。
もし髪を切ることでも抑えきれなくなったら……
女性にとって髪がどういうものかということでよく使用される「髪は女の命」という表現が作中にも登場しますが。
この作品では「髪」を「命そのもの」と置き換えるような描写やセリフが随所に登場します。
切がはじめて祝の髪を切ったシーンで。
「生まれ変わったみたい」という思いを「はじめて私を殺してくれた」という表現で口にした祝。
切った際に床へ落ちていく髪を「血だまりのよう」と表現する切。
この作品において”髪”がどういった意味を持つのかが、よくわかります。
本来であれば”自分が殺していても不思議ではない少女”を愛した少年と。
本来であれば”自分を殺していても不思議ではない少年”を愛した少女。
そんな歪んだ、滑稽な、喜劇なのやら、悲劇なのやら、よくわからない。
けれどそれでも純粋な。
血にまみれたラブストーリー。