安西祐一郎のレビュー一覧
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認知科学が発展してきた歴史を学ぶと脳の認知のメカニズムについて常に新しいモデルが提唱されてブラックボックスである脳内のメカニズムが解明されてきたということがわかる。
自分の専門分野である企業投資を行うときに、企業をファイナンシャルモデルとしてとらえて様々なシミュレーションを行うのと類似している。認知科学の場合は、言語学、心理学、解剖学、神経科学、脳科学、等の様々な分野を情報科学が軸となることで、筋を通している。企業の場合は、金融が筋を通す形をとっている。
ただ、脳の場合は、圧倒的に複雑性が高く、様々な領域の知見をもとに(群盲とはいわないが)様々な研究者が「巨大な象をなでる」ようにして解明を -
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認知科学のこれまでの歩みを振り返りつつ、これからの展望をおこなっている本です。
とくに哲学などに関心をもっている読者が認知科学の概観を得たいと思ったときに困ってしまうのが、脳科学や心理学、言語学、コンピュータ・サイエンスなどの諸分野にテーマが拡散していて、それぞれの分野で追及されているテーマから哲学的な問題を抽出することがむずかしいということがあるように思います。本書は、新書一冊の分量でありながら、認知科学の研究史や諸分野で追及されている問題などを幅広く紹介しており、個人的には認知科学の全貌をおおまかにつかむうえで有益な内容でした。
巻末には「参考文献」が置かれていますが、「最近の動向と「 -
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人間とは?心とは?そして、心と脳そして社会との関係は如何なるものなのか?それらを探求するために、心理学、生理学、神経科学、言語学などが情報科学と合流して誕生した認知科学を歴史を紐解き、fMRIなどの近年に発達した脳計測機器による脳の情報処理を明らかにする。終章では、医療、身体、コミュニケーション、教育、デザイン、芸術、創造性、それぞれについての認知科学が果たすべき課題について説明していて、取り分け、創造性のところで言及されている意識のうえと意識下のはたらきの統合が感覚的に分かるような気になり、とても興味をそそられた。全体的には教科書的な感じでやや面白みには欠ける印象でした。
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とてもいい本だとは思うのだが、気に入らなかった。
なんだか明るすぎるのである。恨みや苦悩が感じられない。言葉の耳触りがいいのである。こういうのには注意しなければならない。
嘘は書かれていないが、かなり気をつけていないとどこかに誘導されてしまう。下手をすると今のこの世界にただただこき使われてしまう危険性がある。
橋本治さんが「蓮と刀」で書いてあったように、知性には一流と二流があると思う。人類に貢献するような発見は一流の知性によってもたらされ、二流の知性は自分の栄華だけを目指している。
しかし、二流の知性が自分のためと思い込んで追求しているのは、実はその世にいる人々の欲しがるものだったりし -
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認知科学という言葉、学問のことを、聞いたことがないという人もおられるでしょう。
認知科学は20世紀の半ばに勃興した学問で、
情報、情報処理という概念を人間の心理や思考に適用して、
心とは、脳とは、社会とはいったいなんなのだろうという問いに答えるべく
発展していっているものです。
心や脳と社会や環境というものは、相互に作用して発展していくというのが
認知科学の基本的な考え方。
本書では、まず、心のあり方を因数分解のように細かく分けて考えるところから始まります。
言葉というもの、記憶というもの、視覚の認知の仕方などなど
そういう心や脳の活動を分けて考える。
そうして、次に、認知科学の歴史をたど -
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端的に言ってしまえば、「詰め込みすぎ」な印象を受けました。
認知科学というテーマに関して非常に広範な学問領域からの知見や学説等について記述しており、興味深い話題が尽きることなく繰り出され、知的好奇心を刺激されます。
しかし、いかんせんまだまだ未解明・不確定な部分の多いこの分野の概要をまとめるには、たった1冊の新書では少々窮屈だったのでしょう。
著者は「分かりやすく」解説しているつもりでも、多岐にわたる学問領域の各々で使用されている専門用語の説明が不十分に感じられるところがあったり、端的に述べようとするあまりに説明が抽象的すぎて理解できなかったり。短くまとめようとする努力が裏目に出たような