サッと流し読み。
文化審議会建議「公用文作成の考え方」(令和4年1月7日)では、公用文を「告示・通知等」「記録・公開資料等」「解説・広報等」に分類した上で、それぞれの文書の目的や種類に応じた書き表し方を考えることとされている。
同建議では、「公用文の表記は法令と一致させる」ことを「原則」とした上で、告示・通知等は「原則に従って書き表す」、記録・公開資料等は「原則に基づくことを基本としつつ、必要に応じて読み手に合わせた書き表し方を工夫する」、解説・広報等は「特別な知識を持たない人にとっての読みやすさを優先し、書き表し方を工夫する」とされている。
つまり、公用文の書き表し方は、まず前提としての「原則」があり、文書の種類に応じて「原則」からの逸脱をどの程度認めるかを検討することとなる。
したがって、公用文作成に習熟するためには、「原則」を一定程度理解することが優先されるべきだと個人的には思う。
本書はまえがきでも断りがあるように、「原則」からの逸脱が許容される「記録・公開資料等」「解説・広報等」(本書での呼称は「公用文Ⅱ」「広報文」)を対象としているということに注意しなければならない。
つまり、「原則」をきちんと理解していない人が「告示・通知等」(本書での呼称は「公用文Ⅰ」)を書くときに本書を参照すべきではないということに注意が必要である(特に送り仮名の付け方に関して)。
ちなみに、p.79にある以下の記述は、誤りではないだろうか。
“「慣用化していて、送り仮名を省く語」の中に、「貸主」があります。しかし「借主」はないのです。そのため、「貸主」、「借り主」が正しい書き方となります。”
「送り仮名の付け方」(内閣告示)には記載がなくても、「法令における漢字使用等について」(内閣法制局長官通知)で送り仮名を付けない語の例として「借主」が挙げられているため、公用文(告示・通知等)では「借主」が正しい表記である。解説・広報等では「貸し主」「借り主」の表記も許容されるのだろうから、わざわざこの段落を書いた理由がわからない。
既に公用文の「原則」をある程度理解している人が、一般向けの噛み砕いた文書を作成するための文章術を身につけるためには参考になる本だと思う。
・広報文では「及び」「並びに」「又は」「若しくは」は使わない(第4章の7)
などは、なるほどと思った。