入門というには相当ハイレベルだったが、ブレトン・ウッズ体制から今までの現代金融の歴史が網羅的に解説された良書。
金融技術は高度になっているものの錬金術ではない。流行っている金融商品がどういう仕組みで、なにが起これば儲かり、なにが起これば損をするのか、という点も理解する癖をつけたいと思った。
【メモ
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◯デリバティブについて
・P&Gのデリバティブ事故は、有利子負債コスト引き下げのためにドル建て金利スワップの支払いコストが利上げによって急上昇したことで発生。利下げを読んで変動金利を支払って固定金利を受け取るスキームにしていたので大損となった。販売した銀行側は高いROEを求められる中でリスクを説明するインセンティブを失い、ガバナンスが大きく問題になった
・デリバティブは本来リスクヘッジ手段だが、低金利下の中機関投資家がリターンの向上を意識して利用し始めたことで多くの損失例が出た。
・一方、デリバティブを規制することは市場にとっても良いことではないし、リスク管理商品として他の代替手段がない。2013年末で金利スワップの名目元本ベース残高は461兆ドル、店頭デリバティブの約65%
◯不動産バブルについて
・銀行はバブル経済下で新たな収益源を模索し、後に不良債権の種となる中小企業屋ノンバンク、不動産、個人への貸し出しを増やした。
・住専は個人向け住宅ローン専門銀行としてスタートしたが、銀行等の侵食によって企業の不動産事業にも手を出した。住専への融資は総量規制の対象外だったため、銀行は農林系金融機関がこぞって住専への融資を拡大。その後不動産バブルが崩壊し、不動産開発業者への融資が焦げ付き。95年8月には総資産の約半分の6兆円超の巨額損失が発覚した。
・リーマンショックも、各金融機関が不動産神話に飛びついた構造は同様。銀行はサブプライムローンを増やし、これを証券化して市場にばらまいた。しかし市場のニーズが高いことから十分な信用力評価と信用力補完をするインセンティブが薄れ、金融技術への過度な期待もあって不当に格付けの高いゴミ証券が市場に溢れた。
・また、手数料ビジネスを行っていた投資銀行が、商業銀行のようなアセットビジネスの収益性に魅力を感じ、レバレッジをかけて証券を保有するようになった。ベア・スターンズは2007年末時点で110億ドルの資産に対して4,000億ドルの資産を保有、しかも流動性の低い長期保有を前提とした証券であり、これが暴落してJPモルガンに身売りすることになった。
・リーマン・ブラザーズもレバレッジを効かせてCMBSを買い漁っていたことから、サブプライムローンが焦げ付き始めてからは破滅の一途を辿った。AIGはCDSの大量ポジションを抱えていたため瀕死となって公的資金投入された。ちなみにGSはゴミCDOを売る傍ら密かにそれにCDSをかけたり、別ルートでAIGのCDSを買ったりして儲けていた。