中原清一郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
手術前後の過程や運用ルールを細かく決めている割には、その設定に多くの無理がある。手術の事を表に出せないのなら、元職場へは記憶喪失者として復帰させるべきだし、むしろ最初から別職場に復帰させた方が良い。読んでいてそういう矛盾が気になるのは、本筋の出来がさほど良くないからだと思います。
読み始めてすぐに思い出したのは安部公房の『他人の顔』です。この作品で安部公房は主人公に精巧に作られた他人の顔の「仮面」をつけさせることにより、顔と自我や他人や社会との関係を濃密に描きました。そこにも無理な設定は有ったはずですが、本筋の面白さに圧倒されて少々の無理は気にならないのです。
本作は「海馬移植」という設定です