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Posted by ブクログ
手術前後の過程や運用ルールを細かく決めている割には、その設定に多くの無理がある。手術の事を表に出せないのなら、元職場へは記憶喪失者として復帰させるべきだし、むしろ最初から別職場に復帰させた方が良い。読んでいてそういう矛盾が気になるのは、本筋の出来がさほど良くないからだと思います。
読み始めてすぐに思い出したのは安部公房の『他人の顔』です。この作品で安部公房は主人公に精巧に作られた他人の顔の「仮面」をつけさせることにより、顔と自我や他人や社会との関係を濃密に描きました。そこにも無理な設定は有ったはずですが、本筋の面白さに圧倒されて少々の無理は気にならないのです。
本作は「海馬移植」という設定ですから、記憶と人格の関係が描かれることを期待します。著者が考える人格はこんなもので、記憶を差し替えても元人格は残る。科学的に正しく無くても良いのです。それを深く緻密に(哲学的に?)描き込んでいけば面白く、少々の設定の矛盾など気にならないと思うのです。
沢山の高評価がついた作品です。私がいきなり『他人の顔』が頭に浮べハードルを上げてしまったのでしょうね。最初からエンタメとして読めばまた違った感想になったのかもしれません。
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