石村博子のレビュー一覧
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「アイヌ神謡集」で知られる知里幸恵の短い生涯、アイヌ民族としての葛藤とユカラを文字で残そうとする格闘、アイヌ神謡集誕生までの経緯をさまざまな資料等を活用して、描き出す好著です。
我が家にはギリシャ神話などの本とともに、書棚に岩波文庫版の「アイヌ神謡集」があります。1984年第7刷なので、思春期のころに手にしたはず。
序文を一読して大きな衝撃を受け、最初のシマフクロウの神のユカラを読み始めて、いわば虜になったのを思い出します。以来、アイヌ民族、アイヌ語、アイヌ文化、アイヌ民族に対する日本政府の対応の歴史、法制の変遷に関心を寄せ続けてきました。本書を手にして、ふたたび、さまざまな勉強をしていこうと -
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ネタバレ満州からの引き揚げの物語と言えば、藤原ていさんの「流れる星は生きている」が強烈な印象があるが、これは全然違うパターンの引き揚げの話。
満州でコサック出身の母と日本人商人とのハーフとして生まれ、草原で馬を乗り回し、コサックとしての誇りを抱いていた少年が、たった一人で徒歩で引き揚げてきた話。その後、「ビクトル古賀」として格闘技で有名になった主人公に取材して、その生い立ちや生々しい終戦前後の満州の様子、引き揚げのときの様子を描いたルポルタージュの大作です。
一応、正規の方法で引き揚げ隊に入り、父親の知り合いと行動をするつもりだったが、引き揚げ列車は出発した瞬間から殺伐とした感じになり、大人たちは誰も -
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日本人である福岡県柳川の旧家柳川藩立花家の名門一家の父と、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ二世直属のコサック近衛騎兵を務めたロシア人を父に持つ母、サムライとコサックの混血、白系ロシア系日本人のビクトル古賀のノンフィクション。
41戦全て一本勝ちのサンボの生ける伝説のビクトル古賀の満州からの日本までの引き揚げを綴る。
満州関係の文献になるとどうしても、陰鬱にならざるを得ない。が、この一冊には爽やかさすら漂う。
もちろん、想像を絶する凄惨な有様を垣間見るが、10歳の少年が戦地を独り生き抜くその奇跡は手に汗握る。
また、一冊を通して、満州の成り立ちから衰退、ロシア、中国、日本の動きも非常に分か -
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ネタバレ引き揚げに関する書籍は結構読んできたが、今回は10歳の少年が独りで、とあったので、さぞかし過酷な…と想像していた。
でも実際は違った。
これまで読んだ引き揚げ体験談は、多かれ少なかれ皆団体での行動。
この本の主人公ビクトル少年が言うとおり、団体での行動はとても危険だったのかもしれない。
置き去りにされてしまったのは想定外だったとは思うけど。
独りだったからこそ助かった命なのかもしれない。
とはいえ、相当サバイバル力がある少年。
普通の子供とはわけが違う。
コサック(どんな人たちなのか知らなかった)の人達が持つ、生きるための知力体力。
10歳にしてすでにそういう力が備わっていた。
それと、ロ -
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世界大会、ロシア選手権などで優勝し、41戦連続1本勝ちのサンビスト、ビクトル古賀。最後の勝利は1975年40才で監督として遠征した日ソ対抗サンボ国際試合に現役選手の変わりに急遽出場を決めたときのことだ。現役を引退して1年あまり、体重制限のため3日間絶食し相手は世界大会で優勝経験のある強豪選手、それでも開始わずか30秒で跳腰を決め見事な1本勝ち。自由主義国の人間として初めて「ソ連邦功労スポーツマスター」を送られ1977年にはソ連国内でも160人ほどしか受賞者のいない「ソ連邦スポーツ英雄功労賞」も受賞。「サンボの神様」「伝説のサンビスト」と呼ばれた。しかし、そのビクトルは「だけどね、俺が人生で輝い
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戦後の混乱期に、満州から日本への約1000kmの道のりを、たった一人で旅した少年の実話である。
士族の血を引く父親と、コサック騎兵隊の子孫である母親を持つハーフの少年が、10歳のときに満州で終戦を向かえるところから物語は始まる。
満州からの引き揚げについては、恥ずかしながら本作を読むまで詳しい事は知らなかった。侵攻してきたソ連兵の略奪や、日本人に恨みを持つ中国人民の襲撃により、途中で命を落とした日本人は少なくないらしい。少年も実際にそんな場面を数多く目撃している。
ソ連軍侵攻時の混乱により、不幸にも母親と離れ離れとなった少年。しかし少年は幼い頃からコサックの厳しい訓練を受けており、持ち前 -
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ネタバレコサックと日本人の血をひく少年ビクトル古賀。
終戦間近、ソ連軍の侵攻、中国国民党と共産党との内乱。逃れるように日本を目指すが、日本人の目にはロシア人と映る。そして引揚の汽車から降ろされてしまう。生まれ育った旧満州はロシア人、トルコ人(タタール)、中国人、モンゴル人、ユダヤ人、ツングース人、オロチョン人が住む場所。純然とした日本人では決して身につかないコミ二ケーション力がビクトルにはついている。そして抑圧されてきた民族としての生き抜くすべが、コサックの中で伝えつづけられてきた。安全な水の探し方、食べられる草、足に巻く布・・・。
辛苦ばかりが語られる引揚の中で、死を直面しながらも、少年の冒険 -
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p32「樺太ではこうして戦後数年間、多くの民間人が“囚人として“ソ連本土の収容所に送られていった。その数は、3000人とも4000人ともいわれ、実態は何も把握されていないことを物語っている」
こんな時代に、苛烈な人生を送る事となった人物1人1人をつぶさに取材、その内特に9人について詳述したルポルタージュ。シベリア等内陸部に送られる理不尽さ、日本人家族との別れ、連絡の途絶え、ソ連やウクライナ等大陸の女性との出会い、子供や家族との生活、その後の日本への帰国にまつわる話など、淡々と描かれるのだが、何故か読むのを途中で止められない気にさせるものがあった。
「愚かな戦禍によって人生を翻弄された、名もな -
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100年前、たった1冊の神謡集を世に送り出し、短い時間を駆け抜けて行った知里幸恵。
金田一京助との出会いは、アイヌに伝わる神謡の口語訳に火を当てる事。しかし、129日の東京での時間が彼女の生を縮めたのか、今となってはそれが幸いだったかどうかは語れない。
しかし、言えるのは「アイヌから大地を奪ったシャモ」がちゃんと向き合わねばならぬ心情そのもの。
石村氏の文は平明であり、とても読み易い。「100分de名著」で触れなければ幸恵の人生にも触れることなかった。番組では幸恵の姪の長女の朗読で神謡が朗読される。幸恵の生の声は残っていなくても、100年を経た時間が再現されるような 心に響くその調子。
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