石村博子のレビュー一覧

  • 脱露 シベリア民間人抑留、凍土からの帰還

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    ネタバレ

    圓子賢次さんの章で、
    「今までの人生で幸せを感じたことはあったか」と尋ねた際、「ひとつもない」と答えたということがとても辛かった。
    ロシアで結婚もして、子どもにも恵まれていても、それでも幸せを感じたことはないと言い切れてしまうことの絶望は、経験したことのある人以外は絶対にわからないと思った。

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    2026年07月06日
  • 脱露 シベリア民間人抑留、凍土からの帰還

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     1945年8月14日、日本はアジア・太平洋戦争の敗北を認め、ポツダム宣言を受諾し、翌8月15日には昭和天皇が玉音放送(終戦の詔書)を行った。この時、日本国外には660万人の日本人が点在していた。本書は、日本の敗戦後、民間人シベリア抑留者として極寒の地で苦役に耐え、苦難な生活を強いられながら生き抜いた9人の人生録である。日本への帰国を夢見る当事者、待ちわびる妻子や家族。ソ連で妻子を持ち、帰国をためらう抑留者。帰国が実現した当事者と両国家族との複雑な関係。ソ連(露)日両国の国策に翻弄され、自己意思残留というかたちで日本に切り捨てられた人々。著者は、日本は戦争により多くの命を失わせ、戦後処置においては、最も弱き人々を「効率的」に消去していったと断罪する。
     なお、本書は2014年にNHKのBS1スペシャルで放送された「女たちのシベリア抑留」、及び2019年にNHKのプロデューサー小柳ちひろが同名で書籍化した先行調査も引用している。また、NHKのプロデューサー小柳ちひろ氏は、NHKで放送が続いている「映像の世紀バタフライエフェクト」のプロデューサーとして現在も精力的に歴史考証を続けている。

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    2026年05月06日
  • 脱露 シベリア民間人抑留、凍土からの帰還

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    戦後の混乱期に南樺太で逮捕され,その後ソ連の収容所で強制労働された人々.
    1950年代に帰国事業が始まるが,様々な理由で(大抵は現地の人との結婚)帰国をしなかった人もあった.彼らはその後長い間忘れられ,日本政府にも見捨てられていたが,ソ連崩壊後に再発見される.
    ある人は一時帰国を果たし,ある人は日本国籍を取り戻し,しかしロシアを脱出するのには50年もかかったわけであり,それらを果たせた人はごく僅かであった.
    本書はそんな人たちを描く良質のルポタージュである.

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    2024年12月21日
  • ピリカ チカッポ(美しい鳥) 知里幸恵と『アイヌ神謡集』

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    「アイヌ神謡集」で知られる知里幸恵の短い生涯、アイヌ民族としての葛藤とユカラを文字で残そうとする格闘、アイヌ神謡集誕生までの経緯をさまざまな資料等を活用して、描き出す好著です。
    我が家にはギリシャ神話などの本とともに、書棚に岩波文庫版の「アイヌ神謡集」があります。1984年第7刷なので、思春期のころに手にしたはず。
    序文を一読して大きな衝撃を受け、最初のシマフクロウの神のユカラを読み始めて、いわば虜になったのを思い出します。以来、アイヌ民族、アイヌ語、アイヌ文化、アイヌ民族に対する日本政府の対応の歴史、法制の変遷に関心を寄せ続けてきました。本書を手にして、ふたたび、さまざまな勉強をしていこうと決意した次第です。

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    2022年07月22日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    ネタバレ

    満州からの引き揚げの物語と言えば、藤原ていさんの「流れる星は生きている」が強烈な印象があるが、これは全然違うパターンの引き揚げの話。
    満州でコサック出身の母と日本人商人とのハーフとして生まれ、草原で馬を乗り回し、コサックとしての誇りを抱いていた少年が、たった一人で徒歩で引き揚げてきた話。その後、「ビクトル古賀」として格闘技で有名になった主人公に取材して、その生い立ちや生々しい終戦前後の満州の様子、引き揚げのときの様子を描いたルポルタージュの大作です。
    一応、正規の方法で引き揚げ隊に入り、父親の知り合いと行動をするつもりだったが、引き揚げ列車は出発した瞬間から殺伐とした感じになり、大人たちは誰も一人ぼっちの子どもに手を差し伸べようとはせず、皆自分が生きて帰ることだけで精いっぱい。(それは、藤原ていさんの「流れる星は~」でもしっかりと描かれていた)。コサックとしての訓練を受け、どんな状況でも自分で生きる力が備わっていたビクトルが、余裕の表情で鼻歌を歌っているのが気に食わなかったらしく、「お前ロシア人だろ!」と大人から蹴り飛ばされ、列車から降ろされる。
    しかし本人はまったく恨んだりはせず、「あのまま日本人の大人たちと行動していたら死んでいたかもしれない」と振り返る。
    弱りはてた引き揚げ隊一行は実際、盗賊たちの格好の餌食になっているし、線路わきには行き倒れになった人達の死体がごろごろと転がっていた。ビクトルは必要になったら死体から靴やベルトなどをはぎ取り、中国語やロシア語を駆使して通りかかった町のロシア人に助けてもらったりしながら、本当に、徒歩で!引き揚げてきたのだ。
    ご本人は、昨年(2018年)11月に83歳で亡くなった。格闘家として有名だったようだが、その少年時代やコサックというものに注目が集まることはなかった。彼の物語を掘り起こしたことで、最後のコサックの人々にも光をあて、教科書ではなかなかわからない、終戦前後の満州やシベリアの実態も人々の暮らし目線でわかる物語になっていてとても興味深かった。

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    2021年07月30日
  • いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる

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    企業再生に必要なのは「いのち」を守る、生きてこそ、と思う気持ちだということを心から理解した。

    数々の悲しみを乗り越えた先生だからこその、重みのある温かな言葉で紡がれた本。

    中小企業に勤める方は読んでおくと良いと思います。

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    2021年02月19日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    彼が大陸を独りで渡る姿が脳裏に浮かぶ、そのときの話がとても爽やか。歴史に詳しいともっと楽しめたと思った

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    2021年01月31日
  • いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる

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    村松弁護士の生き方に心を打たれ、この本を読んでから多少他人を慮るようになったと思います。
    読みながら辛くなる部分もあり、テーマが重たいですが読んで良かった本です。

    いのちをかけて仕事をすること。
    信頼できる人に自分の時間をつかうこと。
    人を大切にすること。
    が凝縮されています。

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    2019年05月19日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    日本人である福岡県柳川の旧家柳川藩立花家の名門一家の父と、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ二世直属のコサック近衛騎兵を務めたロシア人を父に持つ母、サムライとコサックの混血、白系ロシア系日本人のビクトル古賀のノンフィクション。

    41戦全て一本勝ちのサンボの生ける伝説のビクトル古賀の満州からの日本までの引き揚げを綴る。

    満州関係の文献になるとどうしても、陰鬱にならざるを得ない。が、この一冊には爽やかさすら漂う。
    もちろん、想像を絶する凄惨な有様を垣間見るが、10歳の少年が戦地を独り生き抜くその奇跡は手に汗握る。

    また、一冊を通して、満州の成り立ちから衰退、ロシア、中国、日本の動きも非常に分かりやすい。各国の軍隊の編成、呼び名、同じ河にしても、満州側からの呼び名、ロシア側からの呼び名なども実に飲み込みやすくまとめられている。ロシア人、中国人、日本人、
    その中でも革命派、反革命派、保守派、改革派、キリスト教、仏教、小難しくなりそうな題目も、そこに暮らす民の行動が描かれることで、物凄くよく分かる。

    ロシア、中国、モンゴル、朝鮮、日本とその周囲を囲まれた満州。1932年に建国し、たったの13年5ヶ月で消滅した満州帝国。

    立地的環境ではスイスと同じだが、何故スイスは現在まで存続し、満州は滅びたのか...
    知りたい欲を掻き立てられる。

    兎にも角にも星5の一冊でした。

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    2018年11月12日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    異色の視点から書かれ面白い。ロシア、満州、コサックなど、今迄馴染みの薄いことに大変興味をそそられた。

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    2017年05月01日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    ネタバレ

    引き揚げに関する書籍は結構読んできたが、今回は10歳の少年が独りで、とあったので、さぞかし過酷な…と想像していた。
    でも実際は違った。

    これまで読んだ引き揚げ体験談は、多かれ少なかれ皆団体での行動。
    この本の主人公ビクトル少年が言うとおり、団体での行動はとても危険だったのかもしれない。
    置き去りにされてしまったのは想定外だったとは思うけど。

    独りだったからこそ助かった命なのかもしれない。
    とはいえ、相当サバイバル力がある少年。
    普通の子供とはわけが違う。
    コサック(どんな人たちなのか知らなかった)の人達が持つ、生きるための知力体力。
    10歳にしてすでにそういう力が備わっていた。
    それと、ロシア語を話せることも大きかっただろう。

    太陽、空、木、水…いろんなものを見たり、音を聞いたりして判断するという、サバイバル術。
    そして、過酷で悲惨な状況に置かれても、どこか楽しんでいるような少年の体験談。
    読み応えのある内容だった。

    以前「父親に叱られて車から下ろされた少年が、独りで歩いて自衛隊基地の施設へ移動し、そこで一夜?を過ごした」ということがあったが、それを思い出した。
    人間が持つ「生きる力」も、昔とはだいぶ違うのだろうなぁ。

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    2017年01月23日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    世界大会、ロシア選手権などで優勝し、41戦連続1本勝ちのサンビスト、ビクトル古賀。最後の勝利は1975年40才で監督として遠征した日ソ対抗サンボ国際試合に現役選手の変わりに急遽出場を決めたときのことだ。現役を引退して1年あまり、体重制限のため3日間絶食し相手は世界大会で優勝経験のある強豪選手、それでも開始わずか30秒で跳腰を決め見事な1本勝ち。自由主義国の人間として初めて「ソ連邦功労スポーツマスター」を送られ1977年にはソ連国内でも160人ほどしか受賞者のいない「ソ連邦スポーツ英雄功労賞」も受賞。「サンボの神様」「伝説のサンビスト」と呼ばれた。しかし、そのビクトルは「だけどね、俺が人生で輝いていたのは、10歳、11歳くらいまでだったんだよ。それに比べたらあとの人生なんてとりたてて言うほどのことってないんだよ。」と酔いが回るとそう言って少年の顔で笑う。

    10歳の少年がソ連国境近くのハイラルで家族と行き別れ、先ずはハルピンへ、そして満州鉄道沿いに約1000kmをいく爽快な冒険譚だ。もちろん終戦直後のロシアの満州侵攻後でロシアとハーフのビクトル少年は日本人引き揚げ隊から追い出されるなどひどい目に遭っているし、先々で人々が襲われ、殺される所も目撃している。のどかな話ではない。それでも暗さはみじんもない。ようやく日本の親戚の家にたどり着き満州のことを思い出すがその感想は「愉しかったな。」だ。

    グーグルマップの徒歩ルートによるとハイラルからハルピンまでは800km(6日と19時間、ただしこの間はは馬と列車で移動)ハルピンから錦州まで763km(6日と10時間)。途中汽車に乗ってはいるが下ろされた所からの鉄道距離でも652km。ハルピンで約1年暮らしたあと、1946年の8月の終わりにハルピンから列車に乗り、新京(長春)までの中間を少し超えた松花江を超える所で荷物を奪われ置き去りにされた。ハルピンでの不良仲間にも見捨てられる。奉天(瀋陽)までたどり着き、やっと列車に乗れたと思ったのもつかの間錦州までの半分を超え遼河を超えたあたりでまた降ろされ見捨てられる。列車に乗ったのはざっと250kmほどで少なくとも500kmはほぼ一人で歩いている。錦州についたのは恐らく10月末から11月頭。2ヶ月以上も毎日歩き続けた。錦州では大人達がここまで来るのに3週間以上かかった、ずいぶん歩かされたなどとグチを言うのを聞きながら何とも言えない気持ちになり後でそれが弱い日本人の大人達への優越感だと気がついた。「日本人ってとても弱い民族ですよ。打たれ弱い、自由に弱い、独りに弱い。誰かが助けてくれるのを待っていて、そのあげくに気落ちしてパニックになる。」

    ビクトル少年はどうやってここまで逞しくなったのか。ビクトルの祖父フョードルは帝政ロシアの近衛騎兵でコサック騎士団の一員だった。日露戦争では当時世界最強と言われた騎士団を秋山好古の騎兵第一旅団が破ったのは有名な話だがフョードルは日本軍の捕虜となるが丁重な扱いに感激しすっかり日本びいきになった。ソヴィエト革命政権後弾圧を怖れたコサックは満州へと逃亡し、大興安嶺の西の三河という一帯に最後のコサック村をつくりすみついた。フョードルとともにビクトルの母クセーニアも3歳の時にここに移り住むことになる。

    ビクトルの父古賀仁吉は柳川藩主立花家の流れをくむ武士の家系で兄の石橋袋城が冒険家大谷光瑞の弟子だったことから西本願寺の末寺を建てるためハイラルに渡った。仁吉は兄に呼び寄せられ軍服用に毛皮を調達する会社を作りそこで優秀な猟師のコサック村に出入りしクセーニアと出会った。フョードルもサムライと親戚になれると喜んだが長男の正一=ビクトルだけはコサックとして育てさせた。コサックは若者が子供達に馬の乗り方を始め、ナイフの使い方、森での食べ物や飲める水の見つけ方、草原での方向感覚など生きる知恵を教える。手製のパチンコでクルミの実を落とすのも得意だ。意外と後で重要だったのが三角巾の様な布を靴下代わりに使う方法だろう。このおかげでビクトルはマメを作らずに歩き通した。薬がなければマメとは言え感染症になると命取りだ。かたい武家の作法になじまないビクトルだがコサックの知恵で生き延びたと言える。しかし、コサックとして育てられてなければそもそも独りではぐれたりはしていないかも知れないのだが。

    ビクトルの知恵は自然の中のものだけではない。人間が怖いことを知っているので線路そばは歩かず、線路が見えるぎりぎりを歩く。街を見つけると煙突から出る煙を見てロシア人の家を見つけ助けを求める。そして家に入れてもらうと最初にイコンに向かって十字を切る。これ一発で信頼されるのだ。死体を見つけるとせめてとうつむけにしてやるところは母親ゆずりのようだ。ハイラルに残された母親は殺され棄てられた日本兵を独りで埋葬していた。母親に会えるのは7年後の日本で連絡がついたのもビクトルが日本に帰ってからのことだった。

    あとがきでビクトルはありがとうを繰り返す。引き上げ時が夏でよかった。独りで出会った兵隊はどこの軍も普段はいい人だった。「辛かったこと、悲しかったこともありましたが、そんななかでも「今日もアリガトウ」と感じていたことは今でも鮮明に覚えています。少し前に骨折して満足に字が書けないビクトルの最後の言葉は。
    「そして、まだ生きています。感謝を込めて。」「ここまで書いて手首イタイ・・・」年をとっても子供の様なじいちゃんなのだ。

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    2014年03月12日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    戦後の混乱期に、満州から日本への約1000kmの道のりを、たった一人で旅した少年の実話である。

    士族の血を引く父親と、コサック騎兵隊の子孫である母親を持つハーフの少年が、10歳のときに満州で終戦を向かえるところから物語は始まる。

    満州からの引き揚げについては、恥ずかしながら本作を読むまで詳しい事は知らなかった。侵攻してきたソ連兵の略奪や、日本人に恨みを持つ中国人民の襲撃により、途中で命を落とした日本人は少なくないらしい。少年も実際にそんな場面を数多く目撃している。

    ソ連軍侵攻時の混乱により、不幸にも母親と離れ離れとなった少年。しかし少年は幼い頃からコサックの厳しい訓練を受けており、持ち前の精神力を発揮して、ついに一人で日本への引き揚げを果たしてしまう。
    しかも、日本に帰国したところで物語は終わらない。

    少年はやがて大人になり格闘技で世界的に活躍する事となる、ビクトル古賀という名前で。ソ連の国技であるサンボで公式戦41連勝、しかもオール一本勝ちという不滅の記録を打ちたて、当時西側諸国民としては異例の、ソ連邦功労スポーツマスターを受賞してしまうのだ。

    ここ数年、ノンフィクション作品を年間数十冊のペースで読んでいるが、年に1~2冊は心が揺さぶられるような良書に出会う事がある。本書はまさにそんな作品であった。

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    2013年10月08日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    ネタバレ

    なんて凄いんだろう。なんて爽やかなんだろう。
    満州からの引き揚げ話はとかく暗くなりがちだが、本書の読後感はどこか草原を吹き抜ける風のように清々しい。
    こんな少年もいたということを、ずっと記憶にとどめておきたい。

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    2012年08月30日
  • たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

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    ネタバレ

     コサックと日本人の血をひく少年ビクトル古賀。
     終戦間近、ソ連軍の侵攻、中国国民党と共産党との内乱。逃れるように日本を目指すが、日本人の目にはロシア人と映る。そして引揚の汽車から降ろされてしまう。生まれ育った旧満州はロシア人、トルコ人(タタール)、中国人、モンゴル人、ユダヤ人、ツングース人、オロチョン人が住む場所。純然とした日本人では決して身につかないコミ二ケーション力がビクトルにはついている。そして抑圧されてきた民族としての生き抜くすべが、コサックの中で伝えつづけられてきた。安全な水の探し方、食べられる草、足に巻く布・・・。
     辛苦ばかりが語られる引揚の中で、死を直面しながらも、少年の冒険心や溌剌とした姿が語られる。
     ここで語られているのもコサック族のほんの一端だか、今まで全く知ることのなかった、時の政権に虐げられたり、利用されてきた史実を知り心痛んだ。満州時代には関東軍情報部の朝野部隊としてコサック人が対ソ謀略部隊として編成されたり、現ロシアも前線で戦う軍団として見做されている。
     そのコサックの母がいい。柔道・レスリング・サンボといった武術に長け、海外に知れ渡り指導者になった息子に対し母は「強くなってもえらくない。人のために泣いたり笑ったりできる人間こそえらいんだ。」
     沢山の人に知ってもらいたい。

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    2012年08月17日
  • 不完全でいいじゃないか!

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    薬物依存・引きこもり・PTSD等の若者と彼等を回復へと導いた精神科医の「魂の記録」と言っても良いと思います。
    また著者(伊波)は自身をアダルトチルドレンとして、赤裸々な半生の告白もしています。
    医者と患者という上下関係の中で治療するのではなく、対等な人間
    同士の関係の中から患者の回復力を引き出すやり方は効率が悪い(一度にたくさんの患者を治療するという意味では)のでしょうが、結果的にはとても確実な方法に思います。

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    2010年11月30日
  • 脱露 シベリア民間人抑留、凍土からの帰還

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    p32「樺太ではこうして戦後数年間、多くの民間人が“囚人として“ソ連本土の収容所に送られていった。その数は、3000人とも4000人ともいわれ、実態は何も把握されていないことを物語っている」

    こんな時代に、苛烈な人生を送る事となった人物1人1人をつぶさに取材、その内特に9人について詳述したルポルタージュ。シベリア等内陸部に送られる理不尽さ、日本人家族との別れ、連絡の途絶え、ソ連やウクライナ等大陸の女性との出会い、子供や家族との生活、その後の日本への帰国にまつわる話など、淡々と描かれるのだが、何故か読むのを途中で止められない気にさせるものがあった。
    「愚かな戦禍によって人生を翻弄された、名もない人々の貴重な魂の歴史がそこには息づいていた」からなのだろう。

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    2025年11月26日
  • 脱露 シベリア民間人抑留、凍土からの帰還

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    戦争が産んだ悲劇と言うか、ますますロシアが非道な国に感じる。ロシアでなければここまで酷い状態にならなかったのではと思う。
    日本の敗戦がほとんど決まった状態で日ソ不可侵条約を一方的に破棄して攻め込んで来て領土強奪はおろか非人道的な抑留を行う。火事場泥棒と言っても過言ではない。
    ウクライナ侵略も歴史は繰り返すでもないけどロシアと言う国家の体質は変わらないなぁ。

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    2025年08月05日
  • 脱露 シベリア民間人抑留、凍土からの帰還

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    読み応えがあった。ロシアに抑留された日本人たちの歩んできた道が刻まれる。
    サラリと語られているが、壮絶、という言葉では括れないほどにロシアでの生活は厳しく、救いがない。
    複数人のエピソードからなる本だから、あまり濃くないのでは、と思いきや一つ一つのエピソードが重たい感触を残す。読んでよかったと思えた。

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    2024年09月17日
  • ピリカ チカッポ(美しい鳥) 知里幸恵と『アイヌ神謡集』

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    「アイヌ神謡集」を著した知里幸恵の評伝。新しい本だけに、最新の情報や研究成果が追加されている。例えば、2010年に開館した「知里幸恵 銀のしずく記念館」が生まれるまでの物語。1970年代の再評価から始まり、生誕百年を機会に一気に盛り上がり、全国の幸恵ファンが協力してお金を出し合って開館に至る感動のストーリーだ。知里幸恵は今も多くの人の心の中に生きている、そう思わせる著作である。

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    2024年07月12日