高校の国語現代文の教科書。100%芥川の「羅生門」が、そして殆どに漱石の「こころ」鷗外の「舞姫」が判で押したように掲載され、定番化している謎を追った一冊。
教科書問題といえば「歴史」教科書問題であったが、若者の活字離れが叫ばれる今、その原因の一端でありそうな国語の教科書について誰も問題にしていない
...続きを読むことが恐ろしくて仕方ない。
芥川作品の中でも、戦前は一度も採録されたことのない「羅生門」が何故戦後登場し、他を駆逐する勢いで定番に収まったのかという経緯が下手なミステリーを読むより面白い。
少子化により限られたパイを奪い合う戦いで、どの教科書会社もリスクを冒せないまま、無難な教科書が横並びする現状。
「羅生門」も「こころ」も「舞姫」も、いずれも名作には違いないが、果たして教科書の教材に相応しいのか。
これらを読んで更に深くこの作者について知ろう、他の作品を読んでみようと今の高校生が思うのかどうか。
私にとって本を読むことは人生においてなくてはならないものだが、それは決して国語の授業で培った習慣ではなく、むしろ授業を聞かずに好きな小説を隠れて読み耽ったお陰だと思っている。
教科書はあくまでも入口だとしても、教師、学生共に興味を持てるものになるよう議論を尽くすべきではないか。
受験において軽視されがちな現代文。しかし日本人の根幹である国語能力を国として今後どうしていくのか、全く見えないでいる。