例の闘争状態を証明するために、人間の性質についてかなり細かく論じられているのが面白い。契約などについての自然法が、平和の追求を基本として演繹的に導かれているのもよく分かりました。素晴らしい翻訳がそれらの理解の助けになっています。
ホッブズが分析する人間の行動様式は、感覚的に納得のいくものばかり。現
...続きを読む代人も基本的には変わってないなと思えるので、彼の演繹には普遍性があるかも。その人間の愚かさを前提に三段論法で万人の闘争状態を導く流れは見事です。
個人的には、ある程度豊かさの底上げがされ、人間の利他性や共感力が証明されてきている現在、この理屈が通用しない世の中がくるのでは?という期待を持っています。
ホッブズの基本原理が平和であって豊かさではないところは面白いです。その結果、正不正の概念は国家と法がないと成立しないのでなんとも不安になりました。平和のみを追求する結果、格差の拡大を許し、契約による正義でそれが正当化され、結果として人が不幸になるのではと。
自然法を演繹的に導いていますが、その基本原理が平和の追求であることの根拠が欲しかった。個人的な欲求は人それぞれだから、それを目指すと闘争状態になると書かれてますが、うーん、腑に落ちない…。