ちょっと前の大河ドラマ「風林火山」で、川中島の戦いを前にして、武田信玄と弟である信繁の会話のシーンがありました。
その中で、信繁が家訓を書いたと台詞があったのですが、信繁の家訓がどのようなものであったのか気になる方もおられると思います。
で、この本「武士の家訓」に収録されております。
内容は、武士の色彩というより、人として成熟するために基本どうあるべきかといった事に重点が置かれている感じがしますね。
■いつも決して虚言をいってはならない
■か弱い婦女子や貧者、老人にたいしても、軽蔑した態度をとってはならない
■学問をなおざりにしてはならない
■何事につけても堪忍を忘れてはならない
■人からの注意や、自分と違う意見でも、きちんと聞くべきである
■仕事をする覚悟は十分だが、結果が出なかったものにも気をかけるべきだ
■争うことは好ましいことではない、人の命を奪うことは言うまでもない
■他人の過失について、とやかく言うべきではない
■知り合いだからといって、ひいきをしてはならない
などなど・・・。
武田信繁の人柄が感じられ、学校の先生のヒトコトより、重みがありますね。
確かに武田信繁は、その他の武田の武将、秋山信友、高坂昌信、真田幸隆、土屋昌次、馬場信春、山県昌景、といった武将達と比べて地味な感じがします。
しかし、内藤昌豊とならび、「副将」としての能力は確固としたものがあったと思われます。
皆をまとめる卓越した「ソフトスキル」と、総大将に代わりうる「器の大きさ」、副将として大将をたてる「謙虚さ」、これらを兼ね備えないと副将としてはなりたたないでしょう。
川中島で信繁を失なった事は、綺羅星のごとき武田の武将と、偉大な大将の後を継いだ武田勝頼の間に暗い影を落としていくこととなったと思います。
この本には他にも「朝倉氏家訓」「毛利氏家訓」「(後)北条氏家訓」なども含まれています。
個人的には、北条泰時の弟である「北条重時家訓」「蒲生氏郷教訓状」「黒田如水の教訓」などが面白かったですね。
下手なビジネス書より、生き馬の目を抜く時代を生き抜いた人々の教訓を読んだほうが、人としてためになるかな?