木山捷平のレビュー一覧
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短篇というのは、読んでいる最中は意想外なストーリー展開や彫琢された文章の美しさに夢中になって時を忘れたりするが、私の場合、読後数日から数週間もするとその内容をあらかた忘れてしまう。だから数年もたつと、再読でもほとんど初読の作品と同じように楽しめることになる。読んでいて「ああ、これは読んだことあったな」と気づいても、前に読んだときにはあまり印象に残らなかった場面や情景描写に出くわして、その作品の魅力を再確認することになる。
木山捷平は、そういう何度でも楽しめる短篇をいくつも残している。戦争や貧乏生活など厳しい経験を持っていながら(持っているからこそ)、陰気にならず、巧まぬユーモアがある。
「 -
購入済み
文章の名人
短編小説とも随筆とも読める作品が収録されているが、文章の見本お手本集とも読める。井伏鱒二と太宰治という山脈に隠れてわかりにくいが、木山独自の名峰、山岳を見事に築きあげたのだと改めて感心させられた。文章の呼吸法には、山口瞳のようなユーモアと毒が混じっているようで、品が良く、昭和文士の香りが懐かしい。個人的には「ナナカマド」が特に気に入りました。
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タイトルからして、なんて風流で涼やかな、と思いつつ手にしたものの、風鈴が鳴る理由に意表を突かれました(笑)この外し方が木山捷平節なのではないでしょうか。そんな感じの、タイトルどおりユーモラスな短編を集めた一冊でした。
「耳かき抄」「逢引き」「下駄の腰掛け」あたりは電車で読みながらニヤついてしまいます。(木山さんの頭の中で発想連携はどう繋がっているのだろう…と思わずには居られない)「柚子」はお気に入り。旅先で出会う女性とのなんやかやの話ではあるのですが、一般的に期待されるような展開にならずに済むのが良いです。そしてふんわりとした気持ちにさせられると云う…。 -
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ゆっくりのんびりマイペースに読める一冊。ザ★木山捷平。
日常を流れていく様なゆるりとした文体で丁寧に描く。人情描写も諄さの無い、染み入る様な優しさに癒されますね。
「鼠ヶ関」「赤い提灯」「弁当」あたりがお気に入りです。
最後の2編はタイトル通り。太宰と井伏鱒二について綴って云います。
井伏鱒二の弟子、と云うと、本当にバラエティ豊かだなあと思います(笑)木山捷平も小沼丹も、太宰好きな知人から勧められて読み始めたのですが、似ている様で味わいが全く違う!太宰も、強いて言えば開高健もまったく違うけれども、井伏門下生と云われてみると、「あぁ、そうかもね」と頷ける不思議。 -
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木山捷平の小説は色んな意味でしょうもない。
それは日常生活をリアルに感じさせるからだと思う。
日常生活は基本的にはしょうもない。
充実した日常生活を送っている人間はおそらく小説などまあ読まなくてもいいのだ。
だからしょうもない日常を過ごす自分にとってはしょうもない小説を読むことで平衡感覚を養わなければならないのだ。
短編が多い木山小説にしては珍しくこの作品は中編となっている。
満州でボロ屋(よく言えば古着屋)をやって生計を立てていた時代の私小説。
中編だからと言ってテイストが変わっているわけでもなく、淡々とし綴られている。
ただ最後まで読むと単にヤリ自慢したかっただけではなか -
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さつま揚げは美味い。
だからといってさつま揚げの行商はまあ儲からないだろう。
しかし木山捷平という男はそれをやる。
それゆえ木山捷平の小説は面白い。
2011年に復刊したこの短篇集は老境に入ってからの切なくも何か愉快な心境が綴られている。
以前木山捷平の小説を『つげ義春的』と自分は評したのだけど、そのままの感想をまたしても抱いた。
市井の平凡で間抜けな生活が感じられる。
その絶妙なゆるさが好きだ。
また個人的にこの作家が優れている点として、植物に詳しくその描写を丹念にしているということが挙げられる。
面白い作家は自然に明るくない読み手にも飽きさせずに植物を描くように思う。
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全体的に企まざるユーモアと何とも云えない、解説に書かれているようなエロティシズムという言葉では言い現せない魅力を登場する女性に感じた。
構えて読まないといけないような作品ではなく、浴衣掛けの作品だが佳品だと思う。
企まざるユーモアというのが端的に現れているのは、例えば下記のような部分である。「箱膳」について、辞書からの引用をして説明をした後、
~これは余計な話だが、むかしの若い女は心中や駆落などする時、親の箱膳に置手紙を入れておいて、親の腰をぬかせる用具にも使った。
というような部分だ。
また、一寸、これは良いなあと思い、一生のうちで一度使ってみたく思った台詞があって、
(ここもかなり可笑 -
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木山捷平の詩が面白いとネットで見たのだが廃刊になっていて今まで読むことができなかった。
しかしこの度めでたく復刊。
というわけで早速読んだのだが、評判(復刊)になるだけある理由が分かった。
第一詩集の「野」からぶっ飛んだ。
「うんこ」やら「小便」やら・・・大正から昭和初期にかけての生活に根ざしたアバンギャルド。
現代でこういう文章を書く人は珍しくないけれど、当時としては真っ当な評価はされなかっただろうな。
文学界のインディーレーベルともいえる講談社文芸文庫から出版されているのも納得。
反面、第二詩集「メクラとチンバ」(タイトルからして凄い)ではふるさとの土臭い感じがまた「野」とは -
Posted by ブクログ
先に詩集を読んだ際、そのあまりにダイレクトな表現に驚かされ、カルト作家としての印象を大いに植え付けられたのだけど、この短編は普通なまで普通。
比較対象が漫画家になるのだがつげ義春的だと思った。
クリエーターの日常を山も谷もオチもなく淡々と描いている。
そういう空気感が一部にマニアを生んでいるのだと感じた。
文壇のサブカルレーベル(勝手に命名)である講談社文芸文庫に収められるのも納得。
解説でも触れられていたのだけど、とにかく「ゆるい」。
「ゆるい」なんて解説される作家は珍しいと思う。
この選集は私小説だけで構成されているのだが、どうも私小説というのは陰気になりがち。
だけどこの