木山捷平のレビュー一覧

  • 木山捷平全詩集
    よい。季節と土着の作家という感じかな。土臭さとユーモア、底抜けの明るさや屈託のなさが感じ得られる。環境や生物に自分を映すことの卓越性。

    ◎以下引用


    朝っぱらから
    山畑へ行って畑を打つと
    みみずが出て来て
    ぴんぴん
    ぴんぴん
    土の中からとんで出て
    どいつも
    こいつも
    ぴんぴん ぴんぴん。
    おらら...続きを読む
  • 井伏鱒二 弥次郎兵衛 ななかまど

    文章の名人

    短編小説とも随筆とも読める作品が収録されているが、文章の見本お手本集とも読める。井伏鱒二と太宰治という山脈に隠れてわかりにくいが、木山独自の名峰、山岳を見事に築きあげたのだと改めて感心させられた。文章の呼吸法には、山口瞳のようなユーモアと毒が混じっているようで、品が良く、昭和文士の香りが懐かしい。個...続きを読む
  • 井伏鱒二 弥次郎兵衛 ななかまど
    ゆっくりのんびりマイペースに読める一冊。ザ★木山捷平。
    日常を流れていく様なゆるりとした文体で丁寧に描く。人情描写も諄さの無い、染み入る様な優しさに癒されますね。

    「鼠ヶ関」「赤い提灯」「弁当」あたりがお気に入りです。
    最後の2編はタイトル通り。太宰と井伏鱒二について綴って云います。
    井伏鱒二の弟...続きを読む
  • 鳴るは風鈴 木山捷平ユーモア小説選
    タイトルからして、なんて風流で涼やかな、と思いつつ手にしたものの、風鈴が鳴る理由に意表を突かれました(笑)この外し方が木山捷平節なのではないでしょうか。そんな感じの、タイトルどおりユーモラスな短編を集めた一冊でした。
    「耳かき抄」「逢引き」「下駄の腰掛け」あたりは電車で読みながらニヤついてしまいます...続きを読む
  • 木山捷平全詩集
    大正から昭和のはじめの詩を読みながら、自分が生まれるづっと前の生活や景色、人のかかわりが、とても懐かしく心を落ち着かせてくれました。
  • 長春五馬路
    木山捷平の小説は色んな意味でしょうもない。
    それは日常生活をリアルに感じさせるからだと思う。
    日常生活は基本的にはしょうもない。
    充実した日常生活を送っている人間はおそらく小説などまあ読まなくてもいいのだ。
    だからしょうもない日常を過ごす自分にとってはしょうもない小説を読むことで平衡感覚を養...続きを読む
  • 白兎・苦いお茶・無門庵
    さつま揚げは美味い。
    だからといってさつま揚げの行商はまあ儲からないだろう。
    しかし木山捷平という男はそれをやる。
    それゆえ木山捷平の小説は面白い。
    2011年に復刊したこの短篇集は老境に入ってからの切なくも何か愉快な心境が綴られている。
    以前木山捷平の小説を『つげ義春的』と自分は評したの...続きを読む
  • 鳴るは風鈴 木山捷平ユーモア小説選
    解説に「・・テーマがない。・・木山捷平にとって表現行為そのものが文学なのだ」とあるが、その通りの一冊。
  • 井伏鱒二 弥次郎兵衛 ななかまど
    全体的に企まざるユーモアと何とも云えない、解説に書かれているようなエロティシズムという言葉では言い現せない魅力を登場する女性に感じた。
    構えて読まないといけないような作品ではなく、浴衣掛けの作品だが佳品だと思う。

    企まざるユーモアというのが端的に現れているのは、例えば下記のような部分である。「箱膳...続きを読む
  • 木山捷平全詩集
    木山捷平の詩が面白いとネットで見たのだが廃刊になっていて今まで読むことができなかった。
    しかしこの度めでたく復刊。
    というわけで早速読んだのだが、評判(復刊)になるだけある理由が分かった。
    第一詩集の「野」からぶっ飛んだ。
    「うんこ」やら「小便」やら・・・大正から昭和初期にかけての生活に根ざ...続きを読む
  • 木山捷平全詩集
    講談社文芸文庫20周年記念の復刊の中の1冊。こういった本は常に買える状態にしていて欲しいと思う。表紙のカラーがオレンジで中々良いです。
  • 鳴るは風鈴 木山捷平ユーモア小説選
    先に詩集を読んだ際、そのあまりにダイレクトな表現に驚かされ、カルト作家としての印象を大いに植え付けられたのだけど、この短編は普通なまで普通。
    比較対象が漫画家になるのだがつげ義春的だと思った。
    クリエーターの日常を山も谷もオチもなく淡々と描いている。
    そういう空気感が一部にマニアを生んでいるの...続きを読む
  • 長春五馬路
    長春で敗戦を迎えた木川正介は、毎日五馬路に出掛ける。知り合いの朝鮮人の配下となり、大道ボロ屋を開業して生きのびている。飄々として掴みどころなく生きながら、強靱な怒りに支えられた庶民の反骨の心情は揺るがない。深い悲しみも恨みもすべて日常の底に沈めて、さりげなく悠然と生きる。想像を絶する圧倒的現実を形象...続きを読む