木山捷平のレビュー一覧
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短編小説とも随筆とも読める作品が収録されているが、文章の見本お手本集とも読める。井伏鱒二と太宰治という山脈に隠れてわかりにくいが、木山独自の名峰、山岳を見事に築きあげたのだと改めて感心させられた。文章の呼吸法には、山口瞳のようなユーモアと毒が混じっているようで、品が良く、昭和文士の香りが懐かしい。個...続きを読む
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ゆっくりのんびりマイペースに読める一冊。ザ★木山捷平。
日常を流れていく様なゆるりとした文体で丁寧に描く。人情描写も諄さの無い、染み入る様な優しさに癒されますね。
「鼠ヶ関」「赤い提灯」「弁当」あたりがお気に入りです。
最後の2編はタイトル通り。太宰と井伏鱒二について綴って云います。
井伏鱒二の弟...続きを読むPosted by ブクログ -
タイトルからして、なんて風流で涼やかな、と思いつつ手にしたものの、風鈴が鳴る理由に意表を突かれました(笑)この外し方が木山捷平節なのではないでしょうか。そんな感じの、タイトルどおりユーモラスな短編を集めた一冊でした。
「耳かき抄」「逢引き」「下駄の腰掛け」あたりは電車で読みながらニヤついてしまいます...続きを読むPosted by ブクログ -
さつま揚げは美味い。
だからといってさつま揚げの行商はまあ儲からないだろう。
しかし木山捷平という男はそれをやる。
それゆえ木山捷平の小説は面白い。
2011年に復刊したこの短篇集は老境に入ってからの切なくも何か愉快な心境が綴られている。
以前木山捷平の小説を『つげ義春的』と自分は評したの...続きを読むPosted by ブクログ -
全体的に企まざるユーモアと何とも云えない、解説に書かれているようなエロティシズムという言葉では言い現せない魅力を登場する女性に感じた。
構えて読まないといけないような作品ではなく、浴衣掛けの作品だが佳品だと思う。
企まざるユーモアというのが端的に現れているのは、例えば下記のような部分である。「箱膳...続きを読むPosted by ブクログ -
先に詩集を読んだ際、そのあまりにダイレクトな表現に驚かされ、カルト作家としての印象を大いに植え付けられたのだけど、この短編は普通なまで普通。
比較対象が漫画家になるのだがつげ義春的だと思った。
クリエーターの日常を山も谷もオチもなく淡々と描いている。
そういう空気感が一部にマニアを生んでいるの...続きを読むPosted by ブクログ