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土と向き合う。雨を信じる。
そうして、日本最高のグラウンドが生まれる。
甲子園の神整備、「阪神園芸」が小説に!
絶望的な運動神経の持ち主・雨宮大地は、自分とは正反対の弟や頑なな父への鬱屈を抱え、甲子園のグラウンド整備を請け負う阪神園芸へと入社する。ところが、持ち前のセンスのなさから、仕事は失敗続き。広いグラウンドのなかで、たったひとりうろたえる自分は、本当に一人前のグラウンドキーパーになれるのか?同性愛者であることを周囲に隠す親友・一志や、重い病気を患いながら歌手を目指すビールの売り子・真夏、ケガでプロへの道を断念した、同僚の長谷。大地は同じく「選べなかった」運命に思い悩む仲間たちと関わり合いながら、自らの弱い心を掘り起こすように土へ向き合っていく。
タイガースファン、高校野球ファンのみならず、
すべてのスポーツファンに捧げる、唯一無二のグラウンド整備お仕事小説!
今日も彼らは、地味に地道に、あのグラウンドを守り続けている。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
野球を見る人も見ない人も、知らない人はいない夏の高校野球の大会が行われる『阪神甲子園球場』——通称甲子園を主戦場とする『阪神園芸』のグラウンドキーパーのお仕事を通して、雨と土に向き合いながら成長していく青年のお話です。
読後一番に、羨ましいと思ってしまいました。
私は、こんなに自分の仕事に誇りと自信を持って向き合ったことがあっただろうかと。
運動神経ゼロ人間と自分で言ってしまうほど運動に自信のない主人公は、運動のできる父と弟との確執を抱えながら高校卒業と同時に『阪神園芸』に就職し、甲子園のグラウンドキーパーとしての一歩を踏み出します。
このお話は、プロローグに主人公が入社二年目の春、本編が入社一年目の春、夏、秋、冬、次の春(そしてプロローグへ)という形で一年を追いかけていくように構成されています。
彼らの一年は、とても濃密です。
初めはおどおどと、うまくいかないことに焦る主人公でしたが、一つずつ、着実に仕事を覚えていくたびに、働いている最中の描写もどんどんと落ち着いていって、こうしてこの子は強くなってきたんだなと感じさせてくれます。
どうにもならないと思いながら、諦めきれずにいたこと。固く蓋をして閉じ込めてしまっていたこと。自分も、自分の同級生も、職場で出会った心惹かれる女性も、職場の先輩も、みんながそれぞれに抱えるそれぞれの『運命』にお互いが触れて、少しずつ誰かが誰かに影響を与えていく様子。
どれもが丁寧に、グラウンドの土と向き合っていく様とリンクするように描かれていきます。
戦後、大量の焼夷弾が突き刺さり、GHQに接収されてトラックで踏み荒らされたグラウンドが、日本で最高の土と天然芝のグラウンドと言われる程になったように。これから先も、どれだけ雨が降っても、柔らかく受け止めてくれる強いグラウンドを育て続けていくお仕事。
彼らの心を掘り起こす様を見ることで、私自身も内面を耕してもらったような心地になりました。
不透水層を作らないように、時には思い切り心の中もひっくり返して、焦らずじっくり、心を強くしていきたい。そう思わせてくれる、爽やかな読後の一冊でした。
春の選抜や、夏の甲子園で、高校野球を見る際に、また阪神園芸の方の働きにも注目したいと思います。
爽やかな読後感
高校野球は感動ポルノの趣きが強すぎて苦手です。ただこの作品は、高校野球の騒乱に巻き込まれた人たちに優しく寄り添ってくれます。読後、気持ちが柔らかくなって『自分も頑張ろう』と前向きになる元気をもらいました。お仕事小説としても面白く、甲子園球場からの中継に目を留めた折には、バックヤードの人々の動きに注目したくなります。
Posted by ブクログ
丸善ジュンク堂書店札幌で開催していた、講談社文庫フェアから見つけた一冊。
「阪神園芸」という聞いたことがある職業がモデルになっているとのことで、面白そうと思い購入。
主人公の大地は、弟の運動神経の良さに嫉妬し、父親からも期待されていないことを感じていた。
父も弟も野球が上手く、自分(大地)も野球に携わって父に「すごい」と認めてもらおうと、阪神園芸に入社する。
それでも仕事は失敗の連続で、誰かのために仕事をするのは、自分のためにならないなと思った。
仕事は、自分のためになる目標があって、初めてやりがいを感じられるのかもしれない。
登場人物は皆、不器用だけど愛おしく感じる。
冒頭では、素直ではない部分が多くて互いに誤解してしまうけれど、次第に少しずつ素直になっていくところが良かった。
昨今、色んなことがロボットやAIに切り替わっていくけれど、阪神園芸という職業はいつまでも人間であって欲しいなと思う。
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