【感想・ネタバレ】あめつちのうたのレビュー

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Posted by ブクログ

 野球を見る人も見ない人も、知らない人はいない夏の高校野球の大会が行われる『阪神甲子園球場』——通称甲子園を主戦場とする『阪神園芸』のグラウンドキーパーのお仕事を通して、雨と土に向き合いながら成長していく青年のお話です。

 読後一番に、羨ましいと思ってしまいました。
 私は、こんなに自分の仕事に誇りと自信を持って向き合ったことがあっただろうかと。

 運動神経ゼロ人間と自分で言ってしまうほど運動に自信のない主人公は、運動のできる父と弟との確執を抱えながら高校卒業と同時に『阪神園芸』に就職し、甲子園のグラウンドキーパーとしての一歩を踏み出します。
 このお話は、プロローグに主人公が入社二年目の春、本編が入社一年目の春、夏、秋、冬、次の春(そしてプロローグへ)という形で一年を追いかけていくように構成されています。
 彼らの一年は、とても濃密です。
 初めはおどおどと、うまくいかないことに焦る主人公でしたが、一つずつ、着実に仕事を覚えていくたびに、働いている最中の描写もどんどんと落ち着いていって、こうしてこの子は強くなってきたんだなと感じさせてくれます。
 どうにもならないと思いながら、諦めきれずにいたこと。固く蓋をして閉じ込めてしまっていたこと。自分も、自分の同級生も、職場で出会った心惹かれる女性も、職場の先輩も、みんながそれぞれに抱えるそれぞれの『運命』にお互いが触れて、少しずつ誰かが誰かに影響を与えていく様子。
 どれもが丁寧に、グラウンドの土と向き合っていく様とリンクするように描かれていきます。
 戦後、大量の焼夷弾が突き刺さり、GHQに接収されてトラックで踏み荒らされたグラウンドが、日本で最高の土と天然芝のグラウンドと言われる程になったように。これから先も、どれだけ雨が降っても、柔らかく受け止めてくれる強いグラウンドを育て続けていくお仕事。

 彼らの心を掘り起こす様を見ることで、私自身も内面を耕してもらったような心地になりました。
 不透水層を作らないように、時には思い切り心の中もひっくり返して、焦らずじっくり、心を強くしていきたい。そう思わせてくれる、爽やかな読後の一冊でした。
 春の選抜や、夏の甲子園で、高校野球を見る際に、また阪神園芸の方の働きにも注目したいと思います。

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2023年11月16日

Posted by ブクログ

野球は、あまり興味がないのですが、球場整備が、こんな風に行われることを初めて知りました。実在の会社が出てくるので、リアルに感じる事ができ、これから高校野球を見るときは、整備の仕事に携わる方々にも注目してみたいなと思いました。仕事の仲間、友達から色々なことを学び成長していく主人公。父親との関係も、親子なのだから、本音をぶつけ合うことは大切なことかなと思います。

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2023年09月28日

Posted by ブクログ

まず本屋で見つけて迷わず購入する、正解でした。吹部2以来かな、とにかく読みやすいです、出来事を細かく砕いて提供してくれるので、まさに甲子園の土の様に掘り起こして踏み固める場面がたくさん出ていた。夏美との恋愛ものかと思ったら、野球部の延長かと思ったらまるで違った。まるで知らない阪神園芸に触れてくれて非常に勉強になりました。よく鬼釡神工だと阪神園芸は聞きますがやってることは知らないんです。長谷と親父が同じに見えるのって、確かに感じる、自分の劣等感を口に出して叫んでたよ、よくやった。登場人物の劣等感がテーマかと

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2023年09月08日

購入済み

爽やかな読後感

高校野球は感動ポルノの趣きが強すぎて苦手です。ただこの作品は、高校野球の騒乱に巻き込まれた人たちに優しく寄り添ってくれます。読後、気持ちが柔らかくなって『自分も頑張ろう』と前向きになる元気をもらいました。お仕事小説としても面白く、甲子園球場からの中継に目を留めた折には、バックヤードの人々の動きに注目したくなります。

#カッコいい #アツい #エモい

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2023年07月26日

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阪神園芸さんという普段は描かれない裏方のお仕事の部分が描かれていて、面白いと感じました。
仕事の中で成長していく主人公やそれを支えてくれる周りの方も皆魅力的で、読み終わった後は仕事を頑張ろう!という気にさせてくれました。

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2023年04月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

素晴らしかった!
阪神ファンとして、高校野球ファンとして、なぜ今までこの本のことを知らなかったのか我ながら理解できない。最高だった。

主人公がいい。この子の心情が痛いほどわかるし、この子のこと構わずにはいられないことがすごくよくわかる。魅力的な子。きっと大人になったらモテるよ。

真夏ちゃんも良い子。男にとって都合のいいキャラじゃなく、ちゃんと物語を持ってるし意志がある。魅力的。

ナイトくんと一志くんは痛々しくて。
2人とも幸せになってほしい。

順番を間違えて、ナイトくんの話を先に読んじゃったから、最初からナイトのこと理解して読んでしまった。まあ、どっちにしろ良い子とわかっていたと思うけど。

主人公の母親もナイトの母親も良い人。

阪神ファン、高校野球ファンは絶対に読まなきゃ!

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2022年10月04日

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雨宮君も長谷さんも本当に19歳、20歳?
若さや見た目で内面はわからないし、未熟でもないと感じました。

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2022年07月10日

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阪神ファンの家族の影響で、野球中継を観る機会が多く、馴染みのある甲子園球場が舞台ということもあり、楽しく読ませてもらいました❁⃘*.゚
甲子園球場で阪神園芸さんがお仕事されている姿を実際に生で見てみたい!と思いました。

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2022年04月17日

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お仕事小説。
実在する阪神園芸に入った新人、天宮大地の親子関係、友情、仕事、自分を考える話。
友人が良い人。一志と長谷と大地の関係が良い。
長い本だが、すぐ読めます。

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2022年03月09日

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「雨が降るからこそ、地面が固まる」
「1年。また、1年。その積み重ねがこの場所を守っていく礎になる。」
何度も涙が出そうになりました。
とても温かい物語です。

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2021年10月22日

Posted by ブクログ

すごく爽やかでいい作品だった。
これから甲子園に観戦に行った時、プレーの合間の阪神園芸さんに注目して見てみようと思う。
登場人物の、ポンポンと飛びかう関西弁がまた耳に心地いい。
主人公の屈折した気持ちや家族への妬みが、グラウンド整備という仕事や同僚との関わりを通じて鮮やかに昇華されていく様に説得力があった。
高校野球好きにはたまらない、何度でも読み返したくなる作品です。

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2021年10月18日

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神整備で話題の #阪神園芸 が舞台の青春お仕事小説。
悩みながらも、仕事や仲間を通して悩みと向き合い夢へ向かって踏み出す登場人物が愛おしい!
爽快な読後感を味わった。
甲子園球場の舞台裏も興味深い。
野球ファン必読の一冊!

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2021年09月03日

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甲子園球場といえば…阪神タイガース、あるいは夏の高校野球、思い浮かぶのはこの2つ。目を閉じて、さらにそこから記憶の中の甲子園をイメージしてみる……応援団が鳴らすヒッティングマーチのなか選手たちが内野の土の深い茶色と外野の天然芝の緑の中で躍動している。
内野の茶色と外野の緑は甲子園のイメージそのもの。関西人(特にタイガースファン)には茶色と緑色を隣り合わせで塗った画用紙なんかを見せるとイメージするのはきっと甲子園に違いない(しらんけど 笑)。
そんな球場の茶色と緑のコントラスト、土と芝を丁寧に管理する阪神園芸さんという会社の存在をこれまで知ってはいたものの、正直、その存在の偉大さを全く認識していなかった。(ごめんなさい。)小説とはいえ、おそらく球場の管理については物語で語られることと似たようなことが起こっているのでしょう。選手が心おきなく、そして安全にプレーできるように、「俺たちがこのグランドを守るんや!」という矜持を持って、まさにプロ。グランドキーパーは裏方の仕事かと思いきや全然そんなことはない。裏方と思うのは決まった方向からしか観ていないから。誰かの仕事が誰かを支えている、球場を守り続ける彼らは裏方ではなく主役である。自らの仕事に誇りを持って、誰かの仕事に感謝して、そんなことを改めて感じさせてくれた。いくつになっても甲子園の外野の天然芝のように、溌剌としたエバーグリーンな気持ちを持って自らの仕事に向き合いたいと、この本を読んでそう思った。


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2024年04月19日

Posted by ブクログ

私も野球少年だったので、、、
甲子園球場を管理する阪神園芸で働く、コンプレックスを抱えた若者が成長していく話。
雨が降るから地面は固まる⇒困難があるから成長につながる。それぞれが夢を見て先に進むところ、いい話でした。

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2023年11月29日

Posted by ブクログ

いつも気にせず見ていたグランドキーパーの仕事の大変さが良くわかりました。次回から高校野球を見る時に見方が変わると思いました。
やり甲斐があるいろいろな仕事があるものだと思いました。

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2023年11月24日

Posted by ブクログ

人々に評価されやすい仕事がある一方、なかなか評価されずらい仕事もある。

自分はいわゆる裏方に近い仕事をしてるからか、共感できるし、裏方もかっこいいんだぞ!という気持ちになった。

感謝を求めることなく感謝される仕事をしていきたいと心から思った。

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2023年07月26日

Posted by ブクログ

阪神園芸を舞台とした小説です。

始めは主人公があまりに幼すぎて、仕事に対する意識の低さとかすぐ気が散っちゃうところとかコンプレックスに逃げ込むところとかにイライラしましたが、後半はどっぷり青春していて涙が出そうになりました。

夏の甲子園大会が始まる前に読み終えられて良かったです。

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2023年07月25日

Posted by ブクログ

神整備で知られる「阪神園芸」を舞台にした小説。

今年の高校野球は始まったばかりですが、今年の夏の甲子園では
選手だけでなく、裏方として働く「阪神園芸」の皆さんの姿も注目したいと思いました。

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2023年07月11日

Posted by ブクログ

主人公の家族や友達、仕事の同僚と自身の仕事についてうまく連動させて、成長していく物語。野球好きにはたまらない阪神園芸の話も多く含んでいるため面白かった。自分の進みたい道を選択して生きることへの決断がそれぞれの登場人物にあって自分と重ねるシーンもあった。

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2023年06月12日

Posted by ブクログ

グランドキーパーという裏方の物語ですね。
読んで暖かい気持ちになります。
ラストの親子の会話はこんな風に話せたら良いのになと思いました。

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2022年03月25日

Posted by ブクログ

高校卒業後、就職した大地。その会社は、甲子園のグラウンド整備などを行う「阪神園芸」。ベテラン社員や一つ上の先輩に言われながらも、仕事に追われる日々。
それぞれの同年代が抱える心の引っ掛かりと戦いながら、どう自分と向き合っていくのか。


甲子園の様々な一面が知れて面白かったです。「阪神園芸」という会社は実際にある会社で、会社の名前・事業内容など知らないことだらけでした。試合での選手だけでなく、色んな人たちによって、作り上げられていることに改めて感慨深いなと思いました。

お仕事小説ですが、青春小説で味わう爽やかさがあり、青春の延長のような雰囲気がありました。
高校時代は東京にある野球部のマネージャーだった大地。なぜこの会社に入ったのか。大地の成長物語だけでなく、様々な同年代の成長物語としても楽しめました。

内容としては、入社してからの1年間が描かれています。経験ゼロなので、失敗続き。しかし、最初から完璧な人なんていません。経験を積むことで、色んな感性などが成長していきます。1年間だけでしたが、段々と成長していく姿に読み応えがありました。

仕事だけでなく、登場人物にも魅力がありました。
音楽を目指すピール売り、野球を諦めた先輩社員、同性愛者の友達、甲子園を目指す大地の弟。それぞれが抱え込む苦悩と闘いながらも、お互いと励まし合っていく姿に「仲間」としての大切さを感じましたし、羨ましいなとも思いました。

時間が経つごとに段々と「大人」になっていく姿には応援をしたくなる気持ちになりました。それぞれの人物が、どんな答えを出していくのか。人生良いことばかりではありませんが、頑張って欲しいなと思いました。

自分自身も何か頑張って見ようかなと思いたくなる気持ちにさせられました。

まもなく始まる高校野球。選手だけでなく、裏方で働くスタッフにも注目したいと思いました。

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2021年07月23日

Posted by ブクログ

”神整備”として知られる高校野球の聖地・甲子園球場のグラウンド整備を請け負う職人集団「阪神園芸」に高校卒業後に入社した雨宮大地。
運動神経ゼロが故、かつて野球選手だった父とは上手くいかず、野球センス抜群の弟・傑にも引け目を感じて家族から浮いた存在だった。
高校野球部マネージャーとして、甲子園出場を果たしたが一回戦敗退。
父に認められたい一心でグラウンドキーパーになるため甲子園に戻ってきた。
失敗続きの大地にいつも辛く当たってくる一つ先輩の元甲子園優勝投手の長谷騎士。
甲子園出場時のピッチャーだった一志との再会やビールの売り子で歌手を目指している真夏との出会い。
グラウンド整備の奥の深さを感じるほど、不安、焦り、無力感に押しつぶされそうになる大地。
みんな不器用だった。
みんな必死にもがいていた。
でも、不器用でも必死に前に進めば自分の未来が見えてくる。
「雨が降るからこそ、地面は固まる」「何度でも、何度でもな」
グラウンドも人の心も同じだと知る、青春お仕事ストーリー。

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2021年07月22日

Posted by ブクログ

甲子園球場でグランドをまもる"阪神園芸"で働く主人公(高卒1年目)と先輩(野球部強豪校卒もとピッチャー2年目)、弟(野球部強豪校2年生ショート)、ビールの売り子の大学生女子たちの話

阪神園芸としての仕事が細かく描かれていて、芝生の育て方、土の返し方、試合中の整備や雨の時のシートでおおう様子などとても面白かった。

主人公は、よくTVで運動できない芸人のヒザ神のような形容をされてる全く運動ができず、緊張すると膝が曲がらずに走るから先輩にバカにされる。父も弟も野球が"超"できるスポーツ親子なのに、全くできずトラウマになっている主人公。
職場の人たちや友人、家族などと交わりながら少しずつ経験して成長していく話。

ラストに弟の試合が描かれていて、その経過を私は野球実況レベルで読んでたら…なんか省かれてて⁇となったまま終わってしまった。 野球好きが読むんやから、ここはちゃんと描いて欲しかったな。

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2023年02月21日

Posted by ブクログ

甲子園のグランドキーパーをしている阪神園芸の社員を描く小説で、阪神ファンとしては非常に興味をひかれ手に取った。

青春小説?若者のお仕事熱血小説?としては非常に良かったが、阪神園芸を持ち出すならばもっとその部分を書いて欲しかった。プロ野球選手との生々しいやりとりみたいな・・・
期待が高かっただけに少し消化不良だったかな。

まあ太平洋戦争時の空襲で5000発の焼夷弾がグランドに刺さっていたというすごいエピソードもあったけれどもね。

続編があればもっともっとえぐってほしい。


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2023年02月02日

Posted by ブクログ

青春は、学生時代にしか訪れないものだと思っていましたが、一生懸命に仕事に打ち込む大地達の姿は、まさに青春そのものでした。
登場人物達が皆、心にささくれがあって、でも、お互いが励まし合いながら、知らず知らずのうちに影響を与えている。一人一人が向上心に溢れて、生き生きとしている姿は、読んでいて清々しかったです。

阪神園芸の方々の仕事がメディアなどで、注目されるようになったのは、恐らく、ここ数年だと記憶しています。タイトな高校野球のスケジュールと、天候の影響により、雨でも試合を継続する機会が増えています。
高校野球という、一瞬しかない、試合を心置きなくプレーできるようにという、阪神園芸の方々の思いや、プロ野球において、怪我が選手生命の命取りにならないように、安全面への考慮がされていることに気づかされました。
緻密な計算と、長年の経験が、甲子園を作り上げている。「プロ」のプライドと技に触れることができました。

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2021年10月10日

Posted by ブクログ

高校卒業後、阪神甲子園球場の整備を担当する「阪神園芸」に入社した主人公の、仕事や人間関係をめぐる奮闘を描いた青春小説。

野球を観る者としては、阪神園芸の詳しい業務の様子がまず面白い。雨が降り大きな水たまりのようになったグラウンドでも、彼らの手にかかればまた野球のできる状態にまで戻してくれる。そのことから「神整備」と呼ばれる彼らの仕事っぷり。

普段は高校野球中継の試合と試合の間で彼らがホースで水を撒いている姿が印象的だけど、高校野球での校旗の掲揚の裏話、オフシーズンの準備、そんな知られざる仕事の様子が面白かった。野球好きならおそらく試合の見方がちょっと変わるはず。

そして彼らの仕事に掛ける思いも熱い。グラウンドの整備が悪ければ、選手のケガにもつながりかねない。それは選手生命、選手の人生にもかかわってくるかもしれない。
高校野球ならその一試合は、球児にとってかけがえのないもの。だからこそグラウンドキーパーは真剣にグラウンドに向き合う。その心意気の真っ直ぐさたるや。

物語の主人公である雨宮大地は、阪神園芸の新入社員。運動神経が悪く、社会人野球経験者の父親との不仲、父の才能を受け継ぎ甲子園出場を果たした弟への気おくれに悩みます。

そうした主人公の物語と並行して描かれるのは、故障のため野球を諦めた先輩グラウンドキーパーの物語や、同性愛者である主人公と親友の大学野球の選手の物語。

主人公の大地や、大地の友人の同性愛者の一志が、体育会系のノリや女性関係をネタにした男性のコミュニケーションに戸惑ったり苦悩する姿が、自分も文化系側の人間だったから、とても共感しました。だからこそ彼らがもがき、諦めたり倒れそうになる姿も、その壁を超える姿も自然と感情移入しながら読めました。

甲子園といえば高校野球の爽やかさが印象の第一に上がるけど、その爽やかさに引けを取らない読み心地の爽快な青春小説でした。

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2021年08月12日

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