数学に魅せられて、科学を見失う――物理学と「美しさ」の罠

数学に魅せられて、科学を見失う――物理学と「美しさ」の罠

物理学の基盤的領域では30年以上も、既存の理論を超えようとして失敗し続けてきたと著者は言う。実験で検証されないまま理論が乱立する時代が、すでに長きに渡っている。それら理論の正当性の拠り所とされてきたのは、数学的な「美しさ」や「自然さ」だが、なぜ多くの物理学者がこうした基準を信奉するのか? 革新的な理論の美が、前世紀に成功をもたらした美の延長上にあると考える根拠はどこにあるのか? そして、超対称性、余剰次元の物理、暗黒物質の粒子、多宇宙……等々も、その信念がはらむ錯覚の産物だとしたら?研究者たち自身の語りを通じて浮かび上がるのは、究極のフロンティアに進撃を続けるイメージとは異なり、空振り続きの実験結果に戸惑い、理論の足場の不確かさと苦闘する物理学の姿である。「誰もバラ色の人生なんて約束しませんでしたよ。これはリスクのある仕事なのです」(ニマ・アルカニ=ハメド)、「気がかりになりはじめましたよ、確かに。たやすいことだろうなんて思ったことは一度もありませんが」(フランク・ウィルチェック)著者の提案する処方箋は、前提となっている部分を見つめ直すこと、あくまで観測事実に導かれること、それに、狭く閉じた産業の体になりつつあるこの分野の風通しをよくすることだ。しかし、争点はいまだその手前にある。物理学は「数学の美しさのなかで道を見失って」いるのだろうか? 本書が探針を投じる。

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数学に魅せられて、科学を見失う――物理学と「美しさ」の罠 のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ 2021年04月29日

    随分昔に「ストリング理論は科学か」という本を読みました。本書のテーマはこれと同じです。実験で検証できない物理学は科学ではないということです。一般相対性理論を構築したアインシュタイン、相対論的な量子力学を記述する方程式を考案したディラックは、物理学における数学的な美の重要性を強調しました。物理学は自然...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2022年08月27日

    【自由研究】超ひも理論シリーズ(第三弾)
    超ひも理論の最大の弱点は「検証できない」ことだそうです。(検証するには太陽系ほどの装置が必要なのだとか…)
    検証できないのに「美しく」「自然」だから認められる理論が多数ある異常さに著者は警鐘を鳴らします。
    反証もあります。
    楕円軌道のケプラーVS円運動のガリ...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2022年07月13日

    筆者が物理学の現状に疑義を感じ、いろんな人にインタビューしながら科学とはなんぞやと考えていく話。

    「本書は、美意識に頼った判断がいかに現代の物理学の研究を推し進めているかという物語だ」と序文にある通り、いろいろな人が理論の優劣を考えるとき美しいかどうかを気にしてて、けして客観的でない”美”意識に客...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2022年02月28日

    理論と実験は相互に進展していく。理論の高度化により,実験も高度化を余儀なくされたことで,理論を検証するためのデータが得られにくくなったのが現代物理学。データが得られない時に理論物理学者は理論の美を尤もらしさの基準とするようになってきたが,それは科学の方法としてどうなの?という問題提起をしているのがこ...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2021年11月07日

    美という基準の在り方について、懊悩している様子を読まされる。厳格さのイメージがあった物理学だけど、実情はそういうわけでもないみたい。

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