Posted by ブクログ
2014年04月14日
子どもの頃、大好きだった柏葉幸子さん。久しぶりに読んだけれど、やはり大好きです。
夏、お盆のころに読めばよかった~とちょっと残念なのは自分の都合。お話にはとても満足。
主人公のカズは、ある夜中、家の仏間から出てくる女の子を目撃する。
ゆ、幽霊?!驚くカズにさらに驚くできごとが。次の日、学校にその女...続きを読むの子がいて、しかも周りの友だちは以前から彼女を知っていて「同じクラスのあかり」だという。
同じ日、古い地図で自分の家の辺りがかつて「帰命寺横丁」と呼ばれていたことを知るカズ。調べていくと、死者が生き返るという帰命寺さまの怖くて不思議な言い伝えにたどり着く。
がっつり和風のお話なのに、表紙には遠くお城と魔女・裏表紙には騎士の絵に「?」と思いながら読んでいたら、なんと贅沢に作中作!
この作中作が本編に劣らずとてもわくわくするファンタジーで、これだけでも一冊読みたいくらい。
謎の「作者」ミア・リーの正体と、この夏に書かれた続きの物語と新しい結末が、また素敵。
――人生は平等に一度きり。だから生き返ってやり直すのはずるい。不公平じゃない?
帰命寺さまの存在を否定する派の人たちの言い分は、もっともすぎるほどもっともなのだけれど。
帰命寺さまの力で甦ったあかり、彼女を守ろうとするカズ、帰命寺さまがあってはならないと思いながら揺れる水上さん。
それぞれの気持ちは、言葉にすれば否定・肯定と正反対のようだけど、どちらか「だけ」が正しいというものでもない。むしろ、どちら「も」正しいといえるもので、着地点をどうするのか、最後までどきどきしたけれど、そんな心配は柔らかく吹き飛ばされる。
道理も不思議もすべて包み込む、懐の深い優しい結末だった。